■『結婚』末井昭著 平凡社
私は、35歳を過ぎた辺りから、結婚ってなんだろうとずっと考えてきました。
身近に幸せすぎる! という既婚者の友人もさほど居なかったし、仲の良い友人はほぼ独身だったし。
自分は結婚には程遠いと思っていました。
けれど、結婚してないことは、他者を受け入れられない未熟な人間なのかと次第に考えるようになったのです。
そして、結婚にチャレンジして1年。とても素敵な本に出会いました。
今回、紹介する末井昭著「結婚」は結婚とは何か? はもちろんのこと、
人間の弱さ、脆さが描かれています。こんなに共感して胸が苦しくなるのは久しぶりです。
冒頭は末井さんの不遇だった子供時代から描かれます。
前作「自殺」でも書かれていた母親が恋人とダイナマイトを巻いて心中した話もあり、
父親のおぞましい性欲が書かれている章もあるのですが、それまた読み甲斐があり、壮絶でドラマチック!
借金3億の話や、ギャンブル、女性関係など、側にいたら大変だろうなぁと思うけど、
末井さんなら仕方ないかなぁって女の人は思っちゃうはず。
私は幼い頃から、親の結婚生活が自分に影響するという恐怖がありました。
両親が離婚して、男女のいざこざを見てきたから自分も同じ道を歩くのではないかと不安で不安で。
末井さんも、軽蔑していた父親や母親の血が流れていることを30代過ぎて感じています。
けれど、いまの奥様である美子さんと出会って変わっていくのです。とても印象的だった部分を抜粋します。
嘘がない相手には嘘がない付き合いをしないといけません。
僕は女の人に嘘ばかりついてきましたが、本当は嘘をつく自分が嫌でした。
嘘をつくたびにほ罪悪感が溜まっていき、自分がどんどん弱くなっていくようでした。
常に本音でいられると清々しいし、パワーも出ます。
全く、嘘がない美子さんと再婚して末井さんは人生を変える決意をしたんです。
結婚っていうのは、自分が人生を変えるチャンスである。男と女の嘘のない関係。本当に理想です。
また、二人の不妊治療も書かれていて「子供を持つ」ということについても
深く考えるきっかけになりました。
『読んだら絶対結婚したくなる本だったら書きたいと思うようになりました。』
と前書きにあります。
この本を読んだら、結婚してみたい! と思うのは勿論、
既婚者の方が仲良く夫婦を続けていくヒントが詰まっています。
この二人のように、常に相手は自分の鏡と意識して、
いつまでも魂をぶつけあえたらなぁと心から思います。
玉ねぎは、いよいよ収穫が終わりました!
上村祐子●1979年東京都品川区生まれ。元書店員。2016年、結婚を機に兵庫県淡路島玉ねぎ畑の真ん中に移住。「やすらぎの郷」と「バチェラー・ジャパン」に夢中。はじめまして、風光る4月より連載を担当させて頂くことになりました。文章を書くのは久々でドキドキしています。淡路島の暮らしにも慣れてきて、何か始めたいと思っていた矢先に上野三樹さんよりお話を頂いて嬉しい限りです。私が、東京で書店員としてキラキラしていた時代、三樹さんに出会いました。お会いしていたのはほぼ夜中だったwと思いますが、今では、朝ドラの感想をツイッターで語り合う仲です。結婚し、中年になりましたがキラキラした書評を青臭い感じで書いていこうと思っています。