大学一年生の8月、とあるきっかけで夏休みを使って初めて海外に行った事があります。
オーストリアのウィーンという都市に行きました。
スケッチブックとペンを買って、街にある教会とかをスケッチしたり、電車に乗ってみたり、ぶらぶらと歩いてみたり。
夏休みだし、学生だったし、当然な事かもしれませんが、思い返せばあの時流れてた時間はとても穏やかなものでした。
街ですれ違う人達にもどこかゆとりのある空気を感じていました。
夕方にはお店も閉まって、驚く程に人の気配は無くなり、静かな夜を迎えます。
今はどうなっているのかわかりませんが、日本の様に常に店が開いてて電気に溢れているわけでもなく、常に何かに追われてる様な殺伐とした空気も感じませんでした。
あの時の空気感が、とても好きでした。
自分のテンポと街に流れるテンポが、近かったのかもしれません。
その当時聴いていた音楽を聞き直すと、あの時の感触が蘇ります。
周りの皆はどうなのか知りませんが、今の時代の流れは僕にとってはあまりにも速過ぎます。
サイクルがあまりにも目まぐるしく、まるでついていけません。
まだまだ限界なんて言える程やってないと思いますが、ある意味ではもう限界を越えてしまっています。
僕以外にもそんな人はきっと沢山いるはずです。
もっとじっくりと音楽を作りたいのに。
そしてもっとじっくりと音楽を聴きたいのに。
もっとじっくりと絵を描きたいのに。
そしてもっとじっくりと絵を眺めてたいのに。
もっとじっくりとモノを作りたいのに。
もっとじっくりとモノが届くのを待っていたいのに。
『多作ですね。』と言われる中で、本当に多作な人は一体どれだけいるのか。
多く作らざるをえない程、ただ追い込まれてるだけの人が一体どれだけいるのか。
何か見失っている様な気がしています。
大きな悪循環に入ってしまっている気がします。
最早暑さの限界を越えてしまった暑さに身を焼かれながら、そんな事を思います。
藤本浩史●1980年11月15日生まれ。神戸出身。ロックバンド、the coopeezのボーカル。作詞、作曲の他、バンドに関わるアートワークを全て手掛ける。自称、スーパーコンプレックス持ちのスイッチON/OFF型。もしくは、肉食系の中途半端ボーイ。
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@coopeezfujimoto