4月1日にファースト・アルバム『アンシャンテリーゼ』をリリースしたばかりのスリーピース・バンド、nicoten。今作は浅田信一によるプロデュースで、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)と共作した「真夜中特急ノスタル号」や、山口隆(サンボマスター)が詞・曲を提供した「涙をふきなよ」などを含む、バンドとしての挑戦と話題性満載の1枚。しかしその軸となるものは彼ら3人のポップ・ミュージックへの愛とこだわり。聴き手に優しく寄り添うようなチャーミングかつフレンドリーな聴き心地。そうしたnicoten本来の音楽性の素晴らしさが際立つ作品にもなっている。今回はメンバーの皆さんにお話を伺い、nicotenは何故ポップを鳴らすバンドなのか、そして今作への想いを語ってもらった。
 
(取材・文=上野三樹 撮影=田口沙織)
 

nicoten 左から広瀬成仁(B)、宮田航輔(Vo / G)、岡田一成(Dr)

nicoten
左から広瀬成仁(B)、宮田航輔(Vo / G)、岡田一成(Dr)


 
 

「これ何て読むの?」と思わせて曲を聴かせたら勝ちだなと。だからずっとバンド名は『・・』でした。(広瀬)


 
ーーもともと広瀬くんとは3年くらい前からの知り合いなんですけど。私がある時、ツイッターで面白い表記のバンド名を色々と書いて、『・・』これでニコテンって読むんだ!みたいなことをつぶやいたら「僕ニコテンの広瀬です!」みたいなリプライがあって。
 
広瀬成仁(B)「恥ずかしいですけど(笑)」
 
ーーそこからライヴハウスでお会いして何故か仲良くなり(笑)、結婚パーティの司会までやってもらったりと個人的にお世話になっています。
 
宮田航輔(Vo / G)「そうなんですね」
 
岡田一成(Dr)「よろしくお願いします」
 
ーーこうして皆さんにお会いするのは初めてなんですが、そもそもなんで『・・』という表記でバンドを始めたんですか?
 
広瀬「そのアイデアは僕からだったんですけど。もともとこの3人はみんな別のバンドでバンドマスターだったんです。その3バンドでスリーマンでライヴをしたりもしてたんですよ。リーダー同志だから打ち合わせだったりで集まることも多くて。でも音楽の話をする目的で集まってるんだけど、ご飯食べて全然違う話をしたり」
 
宮田「映画観に行ったりもしたよね(笑)」
 
広瀬「そう、仲良しで(笑)。そこである時、この3人でスタジオに入って音出してみようってことになって。それがきっかけでバンドが始まったんですけど。ライヴをするってことになって、当時の僕の謎のとんがり具合で(笑)、〈これ何て読むの?〉って思われるバンド名にしようと。そう思わせて曲を聴かせれば勝ちだなと思ってたんですよ。だから『・・』っていう表記だけでずっとやってたんです」
 
ーーそっか、じゃあ私はまんまと引っかかったんだ(笑)。
 
広瀬「まさに!(笑)。でも『・・』だけだとライヴハウスの人が文字化けだと思ってスケジュール欄に表記されなかったり、だから『・・』の後に(nicoten)って入れたら今度は(nicoten)だけが載ってたりして」
 
ーーメジャーデビューするにあたって、それじゃマズいってことになったの?
 
広瀬「そうです。事務所と契約する時に『・・』だと、グッズでTシャツ作ってもわかりづらいと色々説得されて。それでnicotenにしたんです」
 
ーーでもそれぞれのバンドのリーダーが集まって結成って、X JAPAN方式ですね(笑)。
 
広瀬「あはははは! 最初に俺がやってたバンドのボーカルが抜けるってなった時に、ちょうど宮田くんのバンドのベースが活動できなくなって俺がサポートで入ることになったりして」
 
宮田「その頃、大学に入ってちょっと経った頃だったので他のメンバーも大学生活が楽しかったり、勉強をもう少し集中してやりたいっていう気持ちもあったみたいで。俺は音楽をやりたかったので、じゃあ広瀬と一緒にバンドをやろう! と思ったんですよね」
 
岡田「僕も自分のバンドと並行しながら最初はこのバンドを始めたんですけど。僕がやってたバンドが当時の流行りのUKロック指向が強くて。でもだんだんJ-POPを好きになってきて。偏屈さがなくなって素直に歌ものが良いなと思い始めてたんですね。そんなタイミングでこの2人と一緒にnicotenをやることになって」
 
ーー広瀬くんは高校で音楽を勉強されていたという話を聞いたんですけど。おふたりは?
 
岡田「僕も恥ずかしながら音大を出てまして」
 
広瀬「恥ずかしくないでしょ(笑)」
 
岡田「ジャズを4年ほどやっていました。僕はドラム以外は演奏できないので、パソコンや紙の上で曲が作れるように作曲を勉強したりしていました。今、僕が書いてる曲はギターもピアノも使わずパソコンだけで作っています」
 
宮田「僕は音楽を勉強したことは一度も無いですね。ポップスを好きになったのは、よく考えたら親が車で大滝詠一さんを流してた影響が大きくて。自分でメロディを作るときとかはイメージしたりしてます」
 
 

「一時期、山下達郎さんが大好きになりすぎて、歌に達郎さん節が出るようになってきて」(宮田)


 
miyata
ーーでもバンド内に2人も音楽理論がわかってる人がいたら安心ですよね。
 
宮田「すごく安心ですよ。弾き語りで作って渡したら、かなりいい感じのオケになって返ってくるので」
 
ーー歌に対してはどうですか?
 
宮田「もともと高校時代に入ってた軽音楽部で1年生が全員アコギでバンドを組まなきゃいけないしきたりみたいなのがあったんですね。4人いたら4人共アコギで、ベースやソロやバッキングを弾く。それをやってる時に…カリカリ梅っていうバンド名なんですけど(笑)、歌える人が誰もいなくて、歌ってくれって言われたのが始まりで」
 
ーーカリカリ梅のボーカルを経て(笑)、歌いたいなと?
 
宮田「はい(笑)。色んな人に〈いい声だね〉って言われて。一時期、山下達郎さんが大好きになりすぎて、達郎さん節が出すぎるようになってしまって。でも今回のアルバムはそれを封印して、自分の歌い方で歌いました」
 
広瀬「歌入れの時、浅田さんに言われてましたからね〈達郎さんが出てるから、戻して〉って(笑)」
 
ーーそうなんですね。ほんとに色んな挑戦のあったファースト・アルバム『アンシャンテリーゼ』の制作だったと思いますが。プロデューサーの浅田信一さんとの作業はどうでしたか?
 
宮田「このアルバムを作るにあたって、まず浅田さんと、自分達は今何が好きなのかということを話しました。こういう音楽が好きで、こういう映画が好きでっていう話をしていく中で、じゃあnicotenで何を表現するの?ってことをあらためて考えて。楽曲提供していただいたり、過去の曲を収録したり、その上でまた今の自分たちがどういう曲を書けるだろう?っていうのを考えながら作っていきました」
 
ーーそもそも浅田さんにプロデュースをお願いした経緯は?
 
宮田「もともとインディーズ盤を出したタイミングでマネージャーに浅田信一さんって素晴らしい方がいるって教えてもらって、浅田さんが当時サウンドプロデュースをしていた高橋優さんのライヴに行ったら高橋優さんもほんとに素晴らしくて。アルバムを聴いて、浅田さんといつか一緒にやれたらなと思っていたので今回は実現できて本当に嬉しいですね」
 
ーー浅田さんからどういう部分を学び取ろうと思っていましたか?
 
宮田「高橋優さんの「誰がために鐘は鳴る」っていう曲があるんですけど、最後の大サビで心臓を掴まれる部分があって、自分たちの楽曲でもそういう部分が出たらなっていう想いはありました」
 
ーー自分たちが好きなポップ・ミュージックと、でも心臓をギュッと掴まれるようなもの、というのはバランスが難しいですよね。
 
宮田「そうですね。心地良く聴けることとギュッと掴まれる音楽って違う部分もたくさんあると思うんですけど。そのバランスはすごく浅田さんが取ってくれて。〈俺に任せれば大丈夫だから〉って言ってくれてましたね」
 
ーー本来のnicotenの良さもわかってくれている上でのそういう言葉だったんでしょうね。
 
宮田「そうですね。俺らが〈これは大丈夫かな?やりすぎじゃないかな?〉って思うようなアレンジでも〈いや大丈夫だから、任せて〉って。そういうことも多かったよね」
 
広瀬「そうですね。僕たちの曲をすごく褒めてくださって、同世代だったら飛び抜けて良い曲書いてると思うけど、曲が良いとか当たり前だし、曲が良いからこそnicotenのオリジナルなものが出来るよね?って。アレンジに関しても〈やっぱそうきたよね〉じゃなくて、その予想の上に行かないとnicotenのオリジナルにはならないから〈やりすぎ〉とかない。それはnicotenが決めることじゃなく、やりすぎても〈nicotenだよね〉って言われたらもうそれがnicotenなんだとも言われて。そこで俺は浅田さんのことを更に信用できたというか。変な枠の中で考えすぎてたなと思いましたね。もっと色んなことが出来るのに何でこんな頭でっかちに考えてたんだろうって」
 
 

「どうせ自分たちで曲を書けるんだったら、いっそ自分たちでは出来ない曲を最初に出してみたいという、そういう欲が生まれたんです」(岡田)


 
okada
ーーそこで結構思い切れたところもあったんですかね。だってファースト・アルバムでサンボマスターの山口さんに詞も曲もお願いして、それを歌うっていうのは結構大胆ですよね。
 
広瀬「確かに(笑)」
 
岡田「でも制作の序盤でもう、詞と曲を山口さんにお願いできたらなっていうのはありました」
 
宮田「うん。nicotenでやるイメージがない人にお願いできたらなっていうところで最初に山口さんの名前が挙がって。それを宮田が歌うのか!という」
 
ーー曲を提供してもらうことに抵抗はなかったですか。みなさん全員曲が書けるわけですし。
 
広瀬「最初は抵抗ありました。そう、みんな曲が書けるのに、どうなんだろう?って。でも岡田くんが〈俺たちみんな書けるからこそ、書いてもらおうよ〉みたいなこと言ってて」
 
岡田「前作が出てから1年半というブランクがあって、いざファースト・アルバムを作ろうってなった時に、先行シングルとしてまず1枚を出すという話もあったんですけど。これまで1年半作ってきた曲と今まで出してきた曲の中からどれを一番として矢面に立たせるのかってなった時に、どれが一番なのかなんてわからなくなってしまったというか。それぞれが自信のある曲を作ってきて、世に出してきたわけだし。そうなった時に、どうせ自分たちで曲を書けるんだったら、いっそ自分たちでは出来ない曲を最初に出してみたいという、そういう欲が生まれて。そこで山口さんにお願いして、まずは山口さんの曲に矢面に立ってもらおうと(笑)」
 
ーーなるほど(笑)。
 
岡田「まずは山口さんに書いていただきましたけど我々が書いた曲も実はいっぱいあるんですよという形でアルバムが出ればnicotenのポップさが際立つかなと思ったりして」
 
ーー負けない強度のあるポップ・ソングを自分たちで作れるし、と。
 
岡田「それと、山口さんに書いていただいた曲を自分たちなりに表現することも出来るだろうという気持ちもあったんです。去年からnicolaboという自主企画のアコースティック・イベントでカバー曲をずっとやってきてて。どの曲でも自分たちらしさが出せてるなっていうのはあったので」
 
ーー「涙をふきなよ」ってサンボマスターで山口さんが歌われても全く違和感のない曲なんですけど、nicotenで宮田くんが歌うとそれもすごくいいんですよね。
 
広瀬「デモを聴いた時は完全にサンボマスターの曲でした」
 
宮田「それをちょっとシュガーベイブ寄りのアレンジにして(笑)。でも最初にもらったデモの最後の台詞が〈笑ってくんねーか〉だったんですよ。それが福島弁で山口さんが言うからカッコよくて。どうしよう? ってまずは浅田さんとその話になって。僕は福島出身でもないからな……と色んなワードに書き直してみて、最終的に〈笑ってくれよ〉になったんです」
 
ーーそうだったんですね。そして「真夜中特急ノスタル号」では田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)と共作されています。
 
岡田「この曲は最初に広瀬が作ったデモをもとに仮の歌詞を僕が何となく書いて、それを田淵さんに聴いてもらって、最終的には歌詞は宮田くんか田淵さんが書くことになるかなと思ってたんですけど。意外と田淵さんが〈この歌詞をベースに一緒に書きませんか?〉って提案してくれて。 〈じゃあ書きます!〉 という流れだったんですけど。ちょっと直してもらったら、ほんとにいきなり田淵節炸裂で、言葉のスピード感やエッジの効かせ方もさすがで、僕もイメージがすぐに膨らんだので、2回くらいのやり取りで歌詞は完成しました」
 
 

「ここはもう完全にユニゾンに寄せて書こうと。田淵さんの魔法がかかってる度合いが高ければ高いほど良いだろうなと思ったから」(広瀬)


 
hirose
ーー前から広瀬くんは田淵さんと一緒にやりたいと言ってましたよね。
 
広瀬「そうですね。ベーシストで曲を書く人しばりの飲み会をやったことがあって」
 
ーーそれどんなメンバーなの?
 
広瀬「藍坊主の藤森さんと、KEYTALKの義勝くんと、元ラブ人間のえみそん。海北さん(LOST IN TIME)はその時、来れなかったんですけど。みんなで話してる時に歌詞や歌の話になって、田淵さんの言ってることがすごく面白かったからずっと前からいつか一緒にやりたいなと思ってて。田淵さんって自分が曲を書いてそれを歌ってもらってることへの感謝の気持ちが強い人で。、すごいこだわりがある人に見えて〈俺のこだわりは80%までにしておいた、後はお前が100%にしろ〉みたいな感じがすごく好きで。歌のディレクションとかも見せてもらって〈ああ、こういうところに魔法をしかけてるんだな〉っていうのがわかって勉強になりましたね」
 
ーー広瀬さんはどういうイメージでまず曲を書いたんですか?
 
広瀬「ここはもう完全にユニゾンに寄せて書こうと思って。田淵さんの魔法がかかってる度合いが高ければ高いほど良いだろうなと思ったから。だからピアノも入れたし。でも田淵さんは〈みんなやりたいことやっていいよ〉って僕らに言ってくれて」
 
ーーボーカルディレクションはどうでしたか?
 
宮田「まずは今回の課題として達郎さん節みたいなのが出ちゃうから直したい! と田淵さんとも話して。そしたら、〈いやでもそのクセがいいと思うよ、宮田くんが持ってるクセが多ければ多いほど宮田くんだけのものになっていくと思うから〉って言われて歌ったんですけど。でもそこまで達郎節も出ず、フレーズひとつひとつに対しても歌い方が独特で〈歌詞はこう書いてあるけど、このまま歌わなくてもいい〉とか〈ここはどもった感じで歌って欲しい〉とか色んなチョイスがあって。それをひとつひとつやりながら最終的にはレコーディングしたんですけど。だから他の曲とは歌い方がちょっと違いますね」
 
ーー世代的にもちょっとだけ上のバンドマンとのコラボってなかなかないですよね。
 
広瀬「でも今回やってみて、こういうコラボってどんどん増えたらいいんじゃないかなと思いました。誰かが書いた曲を歌うってバンドとしては嫌厭しがちだと思うんですけど。全然あっていいんじゃないかなと」
 
ーーでもnicotenだからやれたところはあると思いますよ。例えば故郷を背負って出てきた俺たちのバンドストーリーとか、個人的なメッセージだとか、まだ自分たちらしさを探しながら音楽と向き合ってるとか、色々あるとなかなかそういうところに飛び込めなかったりするじゃないですか。だけどnicotenのポップをやりたいという気持ちや3人の音楽へのスタンスが今回のコラボを成功させてると思うんです。
 
広瀬「もともとみんな音楽が楽しくて始めたからっていうのはあるんでしょうね」
 
ーーだから曲が暗くならないよね。
 
広瀬「そう、自分たちで言うのもあれなんですけど、シティボーイなんで余裕があるんですよ。俺たちのギターの音で世界変えてやるとか、そういうのないんですよ。それがあるバンドはかっこいいなと思うんですけど、それがなくちゃいけないとも思わない。そういう世界もかっこいいなとは思うんですけど。そうじゃないところで僕らは戦ってるという。でも悔しくなる時はありますよ。一緒にライヴしてても、そういう即効性のある音を鳴らすバンドじゃないと反応されないのかなとか思うことも多々ありますし。でも今回のアルバム制作の過程でかなり割り切れたところはありました。田淵さんの〈いいバンドは、いい曲順でいいライヴをやればいいんだから〉っていう言葉にも影響を受けました」
 
ーー田淵さんよくそういう発言されますね。
 
広瀬「だから僕らのアルバムも今回、頭3曲は曲間なしで作りました」
 
ーーそれユニゾン方式なんだ(笑)。
 
広瀬「そうなんですよ。めっちゃ影響受けてますよ。僕らはロックバンド然としてないですけど奥底ではフツフツしてまっせ! ってことですよ」
 
 

「大きな夢を語るのもリスナーを応援するのも違うし、愛を語るのも違う。小さなケーキを買ってきてふたりで分け合うような幸せを描くべきなんだよって」(岡田)


 
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ーーライヴハウスで対バンした時なんかに、バンドでありながらポップな音楽性であることにコンプレックスを感じたこともある?
 
3人「めちゃめちゃありますよ!」
 
宮田「僕らが楽しそうにやってることが他の人から見ると〈何こいつら楽しそうにやってんだ?〉って思われることもあるし〈こっちは命かけてやってんだ〉みたいなことを実際に言われたこともあります。でも楽しいって大変なんですよね。もちろん苦しみながらやってるわけではないんですけど」
 
広瀬「たぶん俺らも〈でも楽しいのが音楽でしょ〉って言っちゃいけないと思うし、結局は鳴らしてる音や音楽で表現していけばいいこと。だからスタンスやスタイルっていうところに行きがちだけど、やっぱりやってる音楽で戦ったほうがかっこいいのになって俺は思うんですけどね」
 
ーーライヴハウスで悔しい想いをしても、やっぱり楽しいポップ・ミュージックを作るという姿勢は変えずに、そこに熱量を注いでるわけですよね。
 
岡田「たぶんこれからも変わらないですね」
 
広瀬「でも、バンドマンではあるんですよ」
 
ーーそうだよね。そこが聞きたいですね。何故ポップなのか、何故バンドなのか。
 
広瀬「みんなそれぞれで音楽できるんですけど、やっぱり3人じゃないと出来ないものがあるんですよ、完全に。それは今回のアルバムもそうだし、ライヴもそう。この3人でやるnicotenに俺は絶対的な美学があると思うし、だからバンドをやってるっていうところが一番大きいんですよね。もちろんジャンル的なこととか細かいことを考えてたら色々あるんですけど、今そこを考え過ぎちゃうと、また自分で言いますけどシティボーイだから飽きちゃうんですよ。だからもう何も考えずに3人で音鳴らしてればいいじゃんって最近は思い始めてるんです」
 
ーーまたシティボーイ(笑)。
 
広瀬「みんな考えすぎると変なループに入っていって〈俺ってダメじゃん、才能無いじゃん、やめちゃおう〉ってなっちゃうんですよ。そうなるんだったらもう考えないで壁にぶつかった時に考えればいいかなって」
 
宮田「自分もすごい欠けてる人間だなと思うんですよ、色んな分野に対して。なのでそこをこの2人が補ってくれたりして、それぞれ欠けてる部分を補ってこの3人だからまとまるところがあるんですよね。僕はこの2人がドラムとベースをやってるところで歌いたいなと思います」
 
ーー今回のアルバムの最後に「愛する人」という曲が収録されているんですけど。この歌詞の中の〈あなたの右手ぎゅっと握って並んで歩く帰り道〉という歌詞にnicotenとリスナーの関係性を感じました。面と向かって何かを言われてる感じでもなく、同じ方向を向いて並んで歩いてる感じが、nicotenの音楽を聴いている心地良さに似てるんですよね。
 
岡田「リスナーの後ろから背中を押すバンドと、手を引っ張ってこっち来いよっていうバンドがいて、でもnicotenは隣にいるイメージがすごくあるんですよね。だからそんな風に聴いてくれて嬉しいなと思いますね」
 
広瀬「最初に浅田さんともそういう話ししたよね」
 
岡田「そう〈みんな渾身の1曲を書いてきて〉みたいな話になって」
 
宮田「1ヶ月あげるから、自分たちがこの先も歌って行きたいと思う曲をそれぞれ1曲書いてきてって」
 
岡田「それで広瀬の〈愛する人〉が採用されたんですけど。nicotenの曲として大きな夢を語るのもリスナーを応援するのも違うし、愛を語るのも違う。小さなケーキを買ってきてふたりで分け合うような幸せをみんなが描くべきサウンドなんだよっていう話を浅田さんにされたんだよね。それをテーマに歌詞を書いてみてよって言われて、僕の歌詞がこの曲についたんです」
 
ーーnicotenの今とこれからのスタンスを示すような曲になったっていうことですね。
 
岡田「ほんとにそうですね。僕ら3人も役割分担しながら横並びで同じ方向を向いてる感じです」
 
ーー今回のアルバムをたくさんの人に聴いてもらって、nicotenの良さが伝わるといいなと思います。
 
広瀬「はい、上野さんにはいつも相談に乗ってもらってて……ありがとうございます(笑)!」
 
 
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nicoten●全員1990年生まれの宮田航輔(Vo / G)、広瀬成仁(B)、岡田一成(Dr)により、2010年に結成されたスリーピースバンド。2013年7月に『アルドレアe.p.』でソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズからメジャーデビュー。
 
 
名称未設定-1のコピー『アンシャンテリーゼ』
 
1.ハロー彗星      7.風天、空ヲ翔ケル
2.真夜中特急ノスタル号 8.聲のカタチ(nico labo ver.)
3.涙をふきなよ     9.Exit
4.Spectrum       10.ふわふわ
5.アルドレア・・    11.さよならは云わない
6.きゅるり       12.愛する人
AICL-2857 / ¥3,024 / In store now
 
 
【ライブインフォメーション】
nicotenアコースティックイベント『nicolabo Special』
日時:2015年4月28日(火) open18:30 / start19:00
会場:渋谷duo MUSIC EXCHANGE
出演:nicoten / 堂島孝平 / YO-KING
前売料金:1F自由¥3,500(tax in)、2F指定¥3,500(tax in)
※いずれもドリンク代別途必要
※チケット好評発売中!
問:HOT STUFF PROMOTION(03-5720-9999)
 
nicoten OFFICIAL WEBSITE http://www.nicoten.jp/
 
 
 
 
 
 
 
 


 
FullSizeRender-300x225上野三樹●YUMECO RECORDS主宰 / 音楽ライター / 福岡県出身。「ROCKIN’ON JAPAN」「音楽と人」「MARQUEE」「月刊ピアノ」「EMTG music」などで原稿を執筆中。娘は1才になりましたー!