ザ・チャレンジ

ザ・チャレンジ


 
先人曰く、恋とはするものではなく落ちるものであり、時に罪悪だったり、水色をしていたり、炎であると同時に光でなければならないものらしい。
けれどもそれは、心の中で秘められた想いのことだけを指すのだと思う。
もしも真っ逆さまに落ちるなら、空中遊泳をしながら同じ夢を見たい。
悪いことや難しいことなんてすべて笑い飛ばして、カラフルに染め上げてしまいたい。
一人では出来ないことを、笑い転げるくらい楽しいことを、片っ端から叶えていきたい。
私はずっとそうやって、ザ・チャレンジと一緒に恋をしてきた。
 
 
2015年4月22日、Twitterで結成された“奇跡のイケメンバンド”ザ・チャレンジが、EMI Recordsよりメジャーデビューする。
メジャーデビューへの想いを込めた曲を作ってしまうくらい、メジャーというフィールドにこだわり続けてきた彼らの、愛と夢と希望が込められたミニアルバムのタイトルは、『スター誕生』。
インディーズを卒業するのがさみしいだとか、手の届かない場所へ行ってしまう、なんて気持ちはまったくなく、この先どこまで連れていってくれるのだろうという期待感が、楽しい想像を抱えきれないほど大きくふくらましてくれる。そして、それを軽々と飛び越えていってくれるだろうという確信も。
 
メンバー全員がかけている五色のサングラスや、不動のセンター・沢田チャレンジから繰り出される愛の名言などがフィーチャーされがちだけれど、バンド名に恥じず、常に全力で挑戦し続けている彼らには、そのインパクトを超える「まきこむ力」がある。
一度聴いたら思わず口ずさんでしまう歌詞とメロディー、突拍子のないアイデアを形に出来る実力はもちろん、有名イベントや大型フェスに呼ばれるようになった今でも、その場にいる全員でライブを作り上げるスタイルは変わらず、一度体験したら、何度でも足を運んでしまいたくなってしまう。
独り占めなんて勿体なさすぎて、もっともっとたくさんの人に愛されてほしいと、願わずにはいられない。
 
そんなザチャレが起こしたリアルタイムの奇跡を、これまで数え切れないほど見せてもらった。
特に今回の朗報が、恵比寿リキッドルームで行われたワンマンライブ中、それも『メジャーデビュー』の曲中に発表されたのは、彼らだからこそ出来たサプライズだと思う。
曲の途中で沢チャレがメインステージからくす玉の取りつけられた下手側のDJスペースへ移動する間、「まさか」と「もしや」が入り混じったざわめきが広がり、大きな期待の波となってサイドステージへ押し寄せていくのが、フロアに立っているだけではっきりと分かった。
緊張でゆっくりと静まっていく会場中から集まった視線と、それに耐えきれないように割れたくす玉、紅白のリボンと垂れ幕が、真っ白なライトに照らし出される。
『祝 ザ・チャレンジ メジャーデビュー』
スローモーションの世界に割れんばかりの拍手と歓声が一気に流れ込んできて、私はようやく、自分がずっと呼吸を止めていたことに気が付いた。
深く息を吸い込んだかわりに、込み上げてきた感情で歪んだ視界の向こう、光でぼやけたステージから聴こえてきた曲に思わず口元が緩む。
「マイガール ちょっと笑ってよ」
ここでその曲はずるいなあ、と息をついた瞬間に開けた景色は、一生忘れることが出来ないくらい、綺麗だった。
 
そうやってザチャレの起こした奇跡たちは、彼ら自身にも多くの転機をもたらしている。
チャレンジオノマックは、1人で守ってきた自らのバンド・butterfly inthe stomachにドラム・中江太郎を誘って2ピースバンドとして再始動し、タラコチャレンジは活動休止していたSPORTSの復活ライブの際に、音信不通となっていた初代ベーシストと運命の再会を果たした。HIGH FLUXのオーガナイザーでもあるヤンキーチャレンジが、ゲストボーカルにチャレマックを誘ったのも、同じバンドで一緒にやってきて互いに信頼しているからこその実現だし、脱退したLUNKHEADのイベントにゲストDJとして呼ばれたドラゴンチャレンジの、いつにも増して幸せそうな笑顔は、言葉にしなくともすべてを物語っていた。
なにより、ザ・チャレンジの1番のファンが、センターに立つ沢田チャレンジであり、それ以上に、メンバーとファンであるお客チャレンジがみんな、沢田チャレンジの大ファンであるということ。
互いへの愛と巻き起こる奇跡が螺旋のように絡み合い、彼らの行く先を、たくさんの笑顔と少しの涙で彩っていく。
 
業界関係者に向けてのコンベンションライブ後、招待した300人の客チャレの目の前で、彼らはメジャーデビューの契約書にサインをし、お揃いのユニフォームでガッツポーズをしてみせた。
「みんな一緒にメジャーデビューしようぜ!」
何度も繰り返していたその言葉を裏付けるように、期待を全身で受け止めて堂々と胸を張る5人の姿は頼もしく、慌てて閉じた瞼の裏がじんとしびれるくらい、胸が熱くなった。
ザ・チャレンジを信じてくれますか、という問いかけに「YES」とこたえたならば、彼らはいつでも、どこでだって、心強い味方になってくれる。
ステージの上から、ヘッドフォンの向こうから、はたまたTwitterのタイムラインから、スター・ウォーズのテーマにのって、何度だって恋をしに、一目散に飛んできてくれる。
『キラキラ』で「俺が星になるぜ」と歌っていた通り、メジャーという宇宙へ飛び出した彼らは、暗闇の中で行き先を示す力強い一番星にも、降り注ぐような優しい満天の星空にもなれるだろう。
 
メジャーへの航海が、これまで以上に、愛と笑顔と幸せに満ちたものになりますように。
まだ見ぬ新たな星に、私は心から願っている。
 
 
 
 
 
image1フジサワ マキ●埼玉県在住。幼少の頃から小説家を目指すも、恩師の「一度は社会に出てみなさい」という言葉で素直に就職したモラトリアム社会人。GOING UNDER GROUNDからロックに飛び込み、ライブハウスの魔法にかかったままここまで生きてきました。人間不信で人見知り。だけどやっぱり人が好き。下北沢GARAGEが心のホーム。