「明日、照らす」というバンドが好きでとても好きで
今年1月にリリースした最新アルバム『あなた』のレコ発ライブを下北沢で観たのに我慢できず
ついうっかり名古屋でおこなわれたツアーファイナルワンマンを観に行ってしまいました。
ういろうを買って帰ってきました。ういろうはさくら味が一番好きです。邪道!
明日、照らすのVo./G.村上友哉さんとBa.伴佳典さんは私と同い年で、
同い年のバンドってだんだん貴重な存在になってくるんですけど、
今年、2年半ぶりに新しいアルバムがリリースされて、とってもとっても嬉しかったです。
明日、照らすに出会ったのは2010年の夏で、彼らが2nd Album『それから』をリリースした頃です。
村上さんはいつも、困ったような顔をして「この想いは伝わらなくていいよ、伝わらなくてもいい」と
自分自身を閉ざしながら歌っているような印象があって、
でも、言葉を吟味しながら歌う中に
「伝わったらいいなあ」という気持ちを捨てていない人なんだなとも思っていました。
たぶん言葉を慎重に選びすぎて伝えるのに時間がかかるか、もしくは本当に言いたいことは最後まで言わず、
すこし経ってから「やっぱり言えばよかったかな」と一瞬だけ思うんだけど、
おそらく、生まれ変わっても結局は言わないことを選ぶタイプなんじゃないかなあ。
焦って言葉を発したら、それが無垢すぎて、誤解を生みやすそうだなあ…とかとか、
これが、バンドに出会ったころに私が抱いていた村上さんの印象です(笑)
(※勝手なこと言ってすみません。←平謝り)
でも、とっても惹かれてしまっていました。
男と女って基本的に考えていることや重きを置いてるポイントがずれているから、
たとえば女目線の歌詞があっても、それは「男が考える女目線」という感じで
必ずしも内容のすべてに共感するわけじゃないんですが、ちょっとした切なさや、純粋な愛情や、
恥ずかしくて口にできない本当の気持ちを語るのがとっても上手で、大好きです。
たとえば今作に収録されている「君の不安は僕の憂鬱」や、
どちらも1st Albumの『素晴らしい日々』に収録されている「マリッジブルー」や「643」は
とっても素敵なラブソングで、結婚していく友人たちにいちいちCDをプレゼントしたくなるほどです。
明日、照らすの楽曲の中でも特に大好きな
「ダウンタウンヒーローアンドヒロイン」(2nd Album『それから』収録)を聴くと、
自分の両親や祖父母を思い出し、生きているうちに1回でも多く一緒にご飯食べて、
できるだけ多くの時間を優しい気持ちで向き合えたらいいなあという気持ちを素直に持ってしまいます。
村上さんが歌う、大切に想うあなたのこと、大切にしている気持ちのこと。
それを「大切だ」と、迷いなく言い切ること。
不器用で暑苦しくて時に相手を傷つけてしまうくらいまっすぐなことや、
ないがしろにしてしまったときにちょっと大げさなくらい後悔すること。
わかっていながら欲に負けてしまうこと。
そしていつしか離れても、そっとあなたの幸せを心のすみっこでずっと祈っていること。
楽曲たちの端々から感じられるそんなことが、私の心にじわじわとしみこんできて、
落ちないシミがついてしまいました。
時々、夜中につらつらと綴り読み返さないまま送ってしまった手紙みたいな曲もあったり、
焦燥感を抱えながら全力疾走しているようだったり、不器用でかっこ悪いところもたくさんある。
ありきたりな表現になってしまうけど、自分たちを等身大で歌にしているところが持ち味で、
それが私が惹かれている理由だと思っています。
前作からすこし間があいて今年1月に届けられた最新アルバム『あなた』では、
おもに(作詞作曲をしている)村上さんが変わったなと思いました。
閉ざしていた(と私が勝手に思っていた)ドアが開いて、
「入ってきていいよ」と言われている気はまったくしないのですが(笑)、
彼ら自身が一歩外に出てきて、目の前にいる人たちときちんと向き合っている気がしました。
『あなた』に収録されている「泡の日々」という曲は、
ライブのMCで「初めて応援歌を作りました」と言っていましたし、
自分たちの音楽を届けることで誰かの力になっているっていうことを
確かに実感したんだなということがアルバムを締めくくる「xoxo」でも伝わってきました。
それが、この変化なんだなと、はっきり感じました。
「伝わらなくてもいいよ」っていう投げやりな逃げ腰は、もうどこにも見えませんでした。
タイトルにある、「あなた」という存在、それはライブを観に来るお客さんや、
バンド仲間や、日常生活で触れ合う身近な人々や、
そして、自分自身でもあるんじゃないかなと思いますが、
たくさんの「あなた」たちにこの曲たちを届けようという、
聴いている人たちに伝えたいっていう意識っていうのがこんなにある彼らを初めてみました。
また鷲掴まれちゃったなあ。
いつか名古屋で明日、照らすを観たいという気持ちを長いこと秘めていたのですが、
今回はついに我慢できず行っちゃったんですよね……。
なかなかほかの地域では見られない感じの、お客さんからバンドへの愛がすごくあるのが
疑いようもないんだけどちょっとそっけないっていうかシャイ同士で向き合っているような感じが、
すごくこの場所特有の最大の愛情表現に感じました。
とてもすてきな交感がある空間だったと思います。
いとう・さわこ●都内で働くOLです。先月、海外旅行に行ってきました。メトロがあまりに混雑していたので一本見送ろうしていたのですが、発車ベルが鳴った時にすっと前があいたので、連れ(かっこよく言ってみたけど血縁者)が飛び乗ってしまいました。わたしはびっくりして、ドアが閉まりゆくのを呆然と眺めながら立ちすくんでしまいました。結局次の駅で合流できたのですが、このときに、「わたしは土壇場で手放してしまうタイプなんだなあ」と痛感しました。ってそんな大げさなはなしじゃないか!てってれー!