2024年もあと少し。そして今月でYUMECO RECORDSが終了とのことで、この連載も最終回となりました。最初は1読者だった憧れの場所で、2017年4月から連載をさせていただくようになって約7年半。ライブレポートを中心に、舞台、映画、時には馬の話題など、申し訳ないぐらい好きなテーマで自由に書かせていただきました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

連載第1回「偶然は必然?」から、久しぶりに読み返してみました。驚くほどに、私自身は好きなものや想いなどあまり変わっていない気がします。つい“うっかり”をやらかすところも(笑)。でも、仕事面では、“校正”は変わっていないものの、職場はいくつか変わり、今は在宅でのデジタル校正が中心になりました。これも時代なのでしょうか。未曾有のパンデミックにより混沌としていた時期が何とか終息して、元の生活に戻りつつあると感じる昨今。いろいろあったなぁと感慨に浸りつつ、特に印象に残っている記事を振り返ってみたいと思います。

●2020年6月・第39回「真心ブラザーズ・桜井秀俊さんのごきげんなギターと乾杯祭り! 楽しすぎるインスタライブ」
ライブや舞台などが完全に中止になってしまったこの時期、精力的にインスタライブを行い私たちを楽しませてくれた真心ブラザーズの桜井秀俊さん。こういう(無料)ライブだからこそ、あえて挑戦してみようと披露してくれたバイオリンの弾き語りに和みました。

●2020年8月・第41回「YO-KINGのはしゃぎっぷりがたまらない! 真心ブラザーズ生配信ライブ“Cheer up! 001”」
満を持して(?)YO-KINGさんも登場し、お二人揃って初の生配信ライブ。世間の閉塞感も吹き飛ばすほど、歌もトークも絶好調のKINGと桜井さんに救われました。先日もライブに参加し、真心ワールドを堪能。バンドメンバーに大橋哲さん(Ba.)、古市健太さん(Dr.)を迎え、エネルギッシュでカッコいいロックサウンドに会場は大熱狂でした。

 
 

 
 

●2020年12月・第45回「チバユウスケに、The Birthdayの揺るぎないバンド力に魅せられた夜 “GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR”」
実はこの時期、まったく言葉が出てこなかったんです。パソコンの前に座っていても時間だけが過ぎていくばかりで。“もう書けないかな”と思っていたとき、The Birthdayのライブで久しぶりに会った友だちが「いつもYUMECO RECORDSの連載を楽しみにしてるんですよ」と言ってくれました。私の心のなかが透けて見えているのかと思ったぐらい、そのあたたかい言葉が沁みてどれほど励まされたか…。そしてステージではいつにも増して神懸かっていたチバさんが気づかせてくれました。「そうだった、こういう場面を伝えたいんだ」と。この記事にはそんな決意が表れていて…今読んでもアツいです(笑)。The Birthdayのライブではいろいろなことがあり、開演直前、押し寄せる人波にのまれてフロアに尻もちをついてしまったことも! 近くの方が急いで引っ張り上げてくれて事なきを得ましたが、大事故を覚悟した恐ろしい体験でした。

 
 
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●2024年2月・第82回「ぶっきらぼうなロマンティスト 純粋にロックを貫いたチバユウスケの品格」
そんなチバさんの訃報は堪えました。「チバユウスケへ献花の会『Thanks!』」の日に見上げた空の色はきっとずっと忘れないと思います。

 
 

 
 

●2024年1月・第81回「3年の延期を乗り越えて…キャストの結束を感じたM&Oplaysプロデュース『リムジン』観劇レポート」
この作品は記事にしたいと思い意気込んで観劇したものの、とても難解でヒリヒリするような展開にしばらく頭を抱えました。向井理さん演じる主人公や登場人物たちの、表には出さない心の内の部分がさまざま交差していて、また作・演出の倉持裕さんが作品に潜ませた思いなどを読み解く作業にかなり時間を費やしました。でも自分なりに理解できたような気がしたとき、より愛着が湧いてきて…そんな思い入れたっぷりの記事だと思います。また、コロナ禍で延期になっていた作品だったため、千穐楽のカーテンコールでは倉持さんはじめ、演者のみなさんの泣き笑いにも似た安堵の表情が今も目に焼き付いています。

 
 
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●2024年6月・第85回「凛とした笑顔とタフな歌声で魅了した初ホールワンマン 石崎ひゅーい LIVE 2024“宇宙百景”」
ホールでの初ワンマンライブ。終始嬉しそうに喜びを爆発させるひゅーいくんの底知れぬパワーに圧倒された感動のライブでした。そうそう、実はこの記事のなかにひゅーいくんが“UFOにさらわれたことがある”というくだりがあり、私はずっと冗談だと思っていたのですが、実は本当の話だったんです(「月刊ムー」の編集長がひゅーいくんから詳細を聞き“間違いない”とおっしゃっていました)。大ウソなんて書いてごめんなさい! 最後にここで訂正できてよかったです。

●2023年2月・第71回「万事休すからのスペシャルギグ! 斉藤和義さん弾き語りツアー『十二月~2022』」
これまで一番多く記事を書いたのは、YUMECO RECORDSに寄稿させていただいた“はじまり”でもある斉藤和義さんでした。いつも、弾き語りツアーではやることがいっぱいあって大変なんだと、だからみんなに構っていられないと私たちを笑わせて、弾き語りの概念をガラリと変えるライブをさらりと魅せてくれていました。でも、それは途轍もない鍛錬のうえで成り立っていたということを目の当たりにして、あらためて和義さんのすごさを噛み締めたツアーでした。“あの日”ライブを続けることができなくなった和義さんの心中を思うと今でも苦しくなるけれど、超多忙なギタリスト・信頼する真壁陽平さんの参加が叶ったのはもしかしたら必然だったのかもしれないな、なんて思いました。楽しそうにジャカジャカとかき鳴らす、二人のギターヒーローは最高にカッコよかった! 先日は、隅倉弘至さん(Ba.)、玉田豊夢さん(Dr.)とのトリオ編成でツアーを終えた和義さん。今年は、岡村靖幸さんとのユニット“岡村和義”、そしてスリーピースツアーと楽しませていただき、ファンにとってご褒美のような1年になりました。

 
 

 
 

こうして振り返ってみると、記事を通して、忘れていたことや当時の空気までもがふわりとよみがえってきて、書くことで、そのときその瞬間を留めてきたんだなと実感しました。執筆の際は、一つひとつの言葉の意味や使い方が間違っていないか、またテーマに付随することなどいろいろな調べものに時間を費やし裏を取り(探偵みたい?笑)、全然進まない、言葉が浮かばないと毎回泣きそうになっていましたが、だからこそ、ここにある記事たちは自分の“分身”であり“宝物”のような存在だと言えるかもしれません。また、多くの方に「連載、読んだよ」と声をかけていただきました。この7年半は“偶然は必然”を体感する日々で、本当に、YUMECO RECORDSはかけがえのない場所でした。

いつもライブを観たら、この感動をどんな風にみなさんにお伝えしようかなというところまでがワンセットだったので、真心ブラザーズや和義さんのライブを終えもうすでに宙ぶらりんの状態ですが、まずは放置しているブログの再開が第一目標。そして、真心や和義さんのライブレポなども追って掲載していきたいと思っています。ふだんはほぼインスタグラム(@shino546)にいます。まったく統一感はないですがちょこちょことライブのことなども載せていますので、もしお時間がありましたらのぞいていただけると嬉しいです。

主宰の上野三樹さん、編集のいとうさわこさん、長い間お世話になりました。いつも私の記事を“アツい”と言っていただき、ちょっと照れくさかったけどうれしかったです。たくさんご迷惑をおかけしてしまいましたが、見守っていただき本当にありがとうございました! そして、いつも読んでくださっていたみなさまにも大感謝です。ありがとうございました。名残惜しいですが、またいつかどこかでお会いできますように。お身体に気をつけて、どうぞよいお年をお迎えください。

 
 

 
 
☆岡村和義の「サメと人魚」。Amazon Musicによると、今年、私が一番よく聴いた曲だそうです。
 
 
 
 
 


 
プロフィール用写真shino muramoto●現在は校閲をしたり文章を書いたり。先日は大阪城ホールで行われた“20/25グランドチャウデーション”に行ってきました。トップバッターはまさかのThe Birthday。登場曲「Sixteen Candles」が流れるなか、歓声と涙の観客に喝を入れるようにフジイケンジさんが破壊力のあるギターを放ち「I SAW THE LIGHT」へ。彼らにしか鳴らせないこの音をずっと待っていたんだと涙が止まらない。ボーカルを務めてくださった中野ミホさん、PUFFYのお二人、そして吉井和哉さんには感謝しかなくて…会場にはチバさんへの愛が溢れていました。
 
 

【shino muramoto「虹のカケラがつながるとき」】
第89回「問いかけ続ける“殺意のない手は人殺しではない”のかと。NODA・MAP第27回公演『正三角関係』を観劇して」
第88回「長澤まさみさんをめぐるユーモラスな小競り合い。三谷幸喜監督の映画『スオミの話をしよう』を鑑賞して」
第87回「愛され続けるホラー演劇 “ウーマン・イン・ブラック〜黒い服の女〜”を観劇して」
第86回「二人の天才(岡村靖幸×斉藤和義)が魅せたモンスター級のパフォーマンス! 岡村和義 LIVE TOUR 2024 “OKAZ TIME(オカズタイム)”」
第85回「凛とした笑顔とタフな歌声で魅了した初ホールワンマン 石崎ひゅーい LIVE 2024“宇宙百景”」
第84回「20年ぶりの再会と予測不能な最強ユニット“岡村和義”始動に向けて」
第83回「見えなくなってもずっとそばにある。祈りのような映画『i ai(アイアイ)』を鑑賞して」
第82回「ぶっきらぼうなロマンティスト 純粋にロックを貫いたチバユウスケの品格」
第81回「3年の延期を乗り越えて…キャストの結束を感じたM&Oplaysプロデュース『リムジン』観劇レポート」
第80回「アニキが喋った! 歓喜に沸いた岡山の夜 “GRAPEVINE TOUR 2023”」
第79回「斉藤和義さんライブツアー“30th Anniversary Live 1993-2023 30<31〜これからもヨロチクビーム〜”」
第78回「今、関西がアツい! 2023夏はまだまだ終わらない」
第77回「涙のシンガロングで終幕した10周年アニバーサリーイヤー・石崎ひゅーい “『キミがいるLIVE』-Piano Quintet-”」
第76回「“今、ここにいる” 江口洋介さんがデビュー35周年のスペシャルライブで語った大人へのエール。『BE HERE NOW~35th Anniversary~』」
第75回「神々しい佇まいは露伴そのもの。高橋一生さん主演『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』を鑑賞して」
第74回「2023年4月・想いのカケラたち」
第73回「介護の厳しい現実を考える、松山ケンイチさん×長澤まさみさん主演『ロストケア』を鑑賞して」
第72回「歌に託した想いと“最愛”のGRAPEVINEリビジットツアー『in a lifetime present another sky』」
第71回「万事休すからのスペシャルギグ! 斉藤和義さん弾き語りツアー『十二月~2022』」
第70回「“いつか星空の下で” 石崎ひゅーい『ナイトミルクLIVE 10th Anniversary〜」
第69回「名実ともに兼ね備えた純白のアイドルホース・ソダシの底力」
第68回「「水墨画は心を映し出す。横浜流星さん主演『線は、僕を描く』を鑑賞して」
第67回「迫力ある魔法に驚きと興奮の連続! 『ハリー・ポッターと呪いの子』観劇レポート」
第66回「自らを追い込んで飄々と一人芝居に挑む! 高橋一生さん『2020(ニーゼロ ニーゼロ)』観劇レポート」
第65回「渾身の力で“天”に届けられたメロディー。石崎ひゅーい “10th Anniversary LIVE 『、』(てん)”」
第64回「能楽の舞台に舞い降りたポップスター! アニメーション映画『犬王』を鑑賞して」
第63回「MANNISH BOYS-Anniversary LIVE TOUR 2022 GO! GO! MANNISH BOYS! 叫び足りないロクデナシ- 」
第62回「10年分の想いを花束にして。石崎ひゅーい Tour 2022“ダイヤモンド”」
第61回「すべてを愛せるツアーに。中村 中さん『15TH ANNIVERSARY TOUR-新世界-』」
第60回「戻らないからこそ愛おしい。映画『ちょっと思い出しただけ』を鑑賞して」
第59回「ジギー誕生50年!今なお瑞々しさと異彩を放ち続けるデヴィッド・ボウイのドキュメンタリー映画『ジギー・スターダスト』」
第58回「2年ぶりの想いが溢れたバンド編成ライブ! 石崎ひゅーい 「Tour 2021『from the BLACKSTAR-Band Set-』」
第57回「中村倫也さんと向井理さんの華麗なる競演! 劇団☆新感線『狐晴明九尾狩』」
第56回「斉藤和義が最強のバンドメンバーと魅せた“202020&55 STONES”ツアーファイナル」
第55回「飄々と颯爽と我が道をゆく。GRAPEVINE “tour 2021 Extra Show”」
第54回「こういうときだからこそ豊かな未来を歌う。吉井和哉さん “UTANOVA Billboard”」
第53回「高橋一生さんの覚悟と揺るぎない力を放つ真の言葉。NODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』観劇レポート」
第52回「観るものに問いかける『未練の幽霊と怪物 ー「挫波」「敦賀」ー』」
第51回「明日の原動力になる『パリでメシを食う。』ブックレビュー」
第50回「こんな時代だからこそのサプライズ。優しさに包まれる藤井フミヤさんコンサートツアー“ACTION”」
第49回「いよいよ開催へ! 斉藤和義さんライブツアー“202020&55 STONES”」
第48回「全身全霊で想いを届ける。石崎ひゅーい“世界中が敵だらけの今夜に −リターンマッチ−”」
第47回「西川美和監督の新作『すばらしき世界』公開によせて」
第46回「森山未來が魅せる、男たちの死闘『アンダードッグ』」
第45回「チバユウスケに、The Birthdayの揺るぎないバンド力に魅せられた夜 “GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR”」
第44回「ありがとうを伝えたくなる映画『461個のおべんとう』」
第43回「京都の空を彩る極上のハーモニー。パーマネンツ(田中和将&高野勲 from GRAPEVINE)with 光村龍哉さん『聴志動感』~奏の森の音雫~」
第42回「清原果耶さんの聡明さに包まれる映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』」
第41回「YO-KINGのはしゃぎっぷりがたまらない! 真心ブラザーズ生配信ライブ“Cheer up! 001”」
第40回「ギターで感情を表す本能のギタリスト~アベフトシさんを偲んで」
第39回「真心ブラザーズ・桜井秀俊さんのごきげんなギターと乾杯祭り! 楽しすぎるインスタライブ」
第38回「斉藤和義さんとツアー『202020』に想いを馳せて」
第37回「奇跡の歌声・Uru『オリオンブルー』が与えてくれるもの」
第36回「名手・四位洋文騎手引退によせて。」
第35回「2020年1月・想いのカケラたち」
第34回「藤井フミヤ “LIVE HOUSE TOUR 2019 KOOL HEAT BEAT”」
第33回「ドラマティックな世界観! King Gnuライブレポート」
第32回「自分らしくいられる場所」
第31回「吉岡里帆主演映画『見えない目撃者』。ノンストップ・スリラーを上回る面白さを体感!」
第30回「舞台『美しく青く』から見た役者、向井理の佇まい」
第29回「家入レオ “ 7th Live Tour 2019 ~Duo~ ”」
第28回「長いお別れ」
第27回「The Birthday “VIVIAN KILLERS TOUR 2019”」
第26回「石崎ひゅーいバンドワンマンTOUR 2019 “ゴールデンエイジ”」
第25回「中村 中 LIVE2019 箱庭 – NEW GAME -」
第24回「MANNISH BOYS TOUR 2019“Naked~裸の逃亡者~” 」
第23回「控えめに慎ましく」
第22回「藤井フミヤ “35 Years of Love” 35th ANNIVERSARY TOUR 2018」
第21回「かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-」
第20回「真心ブラザーズ『INNER VOICE』。幸せは自分のなかにある」
第19回「KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26~これからもヨロチクビーチク~」
第18回「君の膵臓をたべたい」
第17回「Toys Blood Music(斉藤和義 Live Report)」
第16回「恩返しと恩送り」
第15回「家族の風景」
第14回「三面鏡の女(中村 中 Live Report)」
第13回「それぞれの遠郷タワー(真心ブラザーズ/MOROHA Live Report)」
第12回「幸せのカタチ」
第11回「脈々と継承されるもの」
第10回「笑顔を見せて」
第9回「スターの品格(F-BLOOD Live Report)」
第8回「ありがとうを伝えるために(GRAPEVINE Live Report)」
第7回「想いを伝えるということ(中村 中 Store Live/髑髏上の七人)」
第6回「ひまわりのそよぐ場所~アベフトシさんを偲んで」
第5回「紡がれる想い『いつまた、君と~何日君再来』」
第4回「雨に歌えば(斉藤和義 Live Report)」
第3回「やわらかな日(GRAPEVINE Live Report)」
第2回「あこがれ(永い言い訳 / The Birthday)」
第1回「偶然は必然?」

[Live Report]
2017年1月27日@Zepp Tokyo MANNISH BOYS “麗しのフラスカ” TOUR 2016-2017
斉藤和義 Live Report 2016年6月5日@山口・防府公会堂 KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016 “風の果てまで”
GRAPEVINE/Suchmos Live Report 2016年2月27日@梅田クラブクアトロ“SOMETHING SPECIAL Double Release Party”
斉藤和義 Live Report 2016年1月13日@びわ湖ホール KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016 “風の果てまで”