はじまりました、GAL Radio。ここは友人とカフェで会話するように、音楽の魅力についてお話する場所です。ごゆっくりどうぞ。

今回はTOMOOさんのメジャー1st Albumにして名盤『TWO MOON』収録の「ベーコンエピ」についてお話します。物凄い名曲なんです。今回のテーマは「季節」です。

 
 
2024年4月分画像1_エピ
 
 

『自分が好きなものを君も好きである』という共通点から膨らんでいく愛おしい想いを、ベーコンエピをテーマに歌っていると思うんですが、彼女のものすごいソングライティングのセンスが随所に詰まっています。すごいです(2回目)。歌詞と音楽の観点を織り交ぜながらお話していきますね。

似てるから めぐりあえたのか 違うからさ 惚れちゃうのかな
人が恋に落ちてしまう不思議さを、この上ないほど見事に端的に表現した冒頭の一節。このあと歌われる共通点と共有点へと繋がる重要な起承転結の起でもあります。

たとえば きみが好きだったベーコンエピ
たとえばで出てくるモチーフとして絶妙なオリジナリティと、響きも可愛いナイスチョイスな食べ物ですが、多分それだけじゃないんですね…続けます。

大人になるのも 子供になるのも きみとがいいよ きみとがいいよ
大人(経験や年齢、身体を重ねる)と子供(無邪気な童心に戻る)という対比で、理性と感情の両方を使って時間を一緒に重ねていきたい思いが描かれていると思われます。

2番も裸になるのも 着飾りあうのもと肉体的な愛と心を裸にすること、美しい衣装で身を飾ることと、心を誤魔化し、装うことのふたつの意味で揺れを共に感じたいと表現した素晴らしいワンフレーズです。

2回目の「きみとがいいよ」にマイナーコードという悲しい響きを当てているんですが、きみとがいいと思うことで切なくなって、気持ちが強くなって深まっている瞬間を音と言葉で表現しているんだと思います。

先のことなんて わからないけど たしかなのは、たしかなのは
ここも同じく2回目の「たしかなのは」にマイナーコードが来ていて、同じ言葉の反復と和音の響きで高まる思いを演出していると感じさせます。
「先のことなんて わからないけど」と思うのも、2回目の「きみとがいいよ」で不安を感じた先でそう思っていると捉えると、サビのコード進行と歌詞で心情の変化を上手く表現したさりげなく凄い技術とセンスです。

そして繋いだ右手が笑えるほど パズルみたいだったこと
ここなんです。『繋いだきみの手がパズルのピースくらいぴったりフィットする感覚で、笑ってしまうほどに運命を感じている』と、これだけでもとても素敵な表現ですが、それだけじゃない気がして。。ここが本当にすごいので(3回目)…最後までもったいぶりますね。

分かり合えるほど愛しくて それでもわかりきれなくて ゆっくり大事にできるんでしょ 共有点を噛み締めてる
恋愛とはきっと、相手の一部に惚れることで『全てが分かり合えないからこそ共有できる瞬間が愛おしい』と歌われている気がします。TOMOOさん、人生何周目なんでしょうか…

北風まで好きになっちゃうほど
寒さすら君を想うためのエッセンスと思えるほど、人を想う気持ちが価値観を変えてくれること、ありますよね。この辺りで気付いたんですが、TOMOOさんは歌詞がちゃんと聴こえてくる歌い方で、歌詞カードを見なくても音に乗せた言葉がどんな感情なのかまで想像したくなるように染み込んできます。

 
 

 
 

こちらはLive Version。曲の芯を最大限伝えるピアノ2台のシンプルな演奏も、必見です。

 
 

 
 

パズルみたいな曲


先のことなんて わからないけど 信じてるのは 信じてるのは
1番、2番は「たしかなのは」と歌っていたのに、最後は「信じてるのは」に変わります。『たしかなことなんてないのかもしれない。けど信じたいのはこの思いなんだ』と「先のことなんてわからない」ふたしかさに対し、たしかであると思うことを経て、信じてるという捉え方は、より誠実に向き合い、意志を宿している印象を与えます。ここから更に駆け上がっていきます。

よれそうになっても 右左つらねてゆけること
「よれそうになっても」の直前、ドラムのスネアが6発タタタタタタと入るんですが、これがなんだかよろけておっとっと、って転びそうになってる音な気がして、それでも右左と前(未来)へ進むことで、きみへの想いがよれないことを表現している(気がする)名アレンジです。

この道しか見えない
この曲は道や歩く、右左といった道になぞらえた表現が並んでいます。ここで、タイトルに戻ります。なぜベーコンエピなのか?考えたんです。さっきのよろけているように聴こえるドラムの音から連想したんです。好きなものが一緒というだけの意味ではないと思って聴き続けたら、パズルのピースが揃って一枚の大きな絵になるような感覚になったんです。

 
 

曲そのものがベーコンエピを歌っている


ベーコンエピの形って、小さいピースが交互に連なっていて、右左と歩く足跡のようだなぁって。子供が手と手を繋いでるようにも見えるし、なんだかパズルみたいにも思える。。だとするとですよ、右左つらねてゆけること、繋いだ手の居心地の良さがパズルみたくフィットしたことともかかってるとすると、ただ好きなものの共通点というモチーフとして選ばれただけではなく、この曲自体がベーコンエピを表現しているパズルみたいになっているんだと!!(大興奮)ここにTOMOOさんの音楽と文学の才能を感じまくってしまった訳です。

 
 

音楽は季節


ベーコンエピはフランス語で「麦の穂」という意味だそうです。風に揺れ、実るほどこうべを垂れる稲穂のように、『この思いが切実に実っていって欲しい』とも込められているタイトルなのかもしれません。

TOMOOさんの歌には素直な心が蘇るような懐かしくも初々しい気持ちをもたらしてくれる力があります。透き通る瞬間に感じる瑞々しい『純粋さ』や、人を愛することや生きることへの『喜び』が楽曲の根底に流れているからだと思います。

それはなんだか、季節を感じる瞬間と似ている気がします。

人生のある時期のことを季節と例えたりしますが、この曲はそんな恋する季節にだけ感じられる喜びがベーコンエピくらい固く強く込められていると思いました。だけに。
この曲が、音楽と言葉、心を揺らす瞬間と季節が似ていると感じさせるパズルみたいだったことに、笑えるほど圧倒されてしまいました。だけに!お後がよろしいようで。

「Present」「あわいに」と、目の前の季節を目一杯吸い込みたくなるような新曲を立て続けにリリースしているTOMOOさん。次の季節へと突入していくソングライティングを楽しみに、今という季節を感じたいと思います。

そろそろカフェを出ましょうか。
最後までお読み頂きありがとうございます。

 
 
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●お知らせ

island echoのDigital New Single「春なのに」
E.Guitar,A.Guitar,Chorus,Mix,Masteringで参加しています。
昨年ライブでご一緒したメンバーで収録された、暖かい日だまりのような今の季節にピッタリな楽曲です。ぜひお聴きください。

 
2024年4月分画像-3_island_echo_春なのに
 
▼DL & Streaming URL
 
 
 
 


 
2021.08~新プロフィール画像高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始、2016年活動休止。現在は演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けるスタイルでソロ活動中。楽曲はApple Music、Spotifyなどで配信中。レコーディングなどお仕事依頼はTwitter DMからお待ちしております。
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イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
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