はい、そんな訳で始まりました、GAL Radio。ここは友人とカフェで会話するように、音楽の魅力についてお話する場所です。どうぞごゆっくり。

先日、尊敬するシンガーソングライター・KANさんが天国へ旅立ちました。今回は、より僕らしい言葉で書きたくなったので、いつもよりフランクに書いていこうと思います。みなさんもリラックスして読んで頂けたら嬉しいです。それがきっとKANさんへの敬意を伝えることになる気がしています。今回のテーマは「やさしさ」です。まずはこちらをご覧下さい。

 
 
 

*     *     *

 
 

 
 

僕が歌う喜びを知った原体験はKANさんの歌でした。
小さい頃テレビから流れる「愛は勝つ」に合わせ、ピアノを弾きながら歌う姿をマネしては家族が喜んでくれたのを覚えています。出身大学の大先輩でもあり(KANさんは社会学部で僕は経済学部)この文章の一部を、出張で訪れたKANさんの出身地・福岡で書いていることもきっと何かのご縁かもしれません。

KANさんの曲には音楽を愛してることが手に取るように伝わってくるぬくもりがあります。お人柄がそのまま歌になったようなメロディ、オシャレな響きのコード進行、愛情のかたまりのようなメッセージをさらりと歌い上げる知的な佇まい。

それを台無しにするくらい(いい意味です)振り切ったユーモア。コスプレやギャグを交えたステージングでファンを楽しませてくれました。「お茶目」という言葉がこの世で最も似合うおひとりです。
TRICERATOPS「Shout!」のMVではKANさんが全部持っていきます。ズルい(いい意味でね)。

 
 

TRICERATOPS 「Shout!」MV
ぜひ最後までご覧ください

 
 

トライセラとKANさんは親交が深く、それぞれのライブや音源で何度も共演。KANさんのライブアレンジがまた素敵で「Happy Saddy Mountain」という曲のラスサビでは音源にはないボーカルの掛け合いをするところが凄くいいんです。確かKANさんのアイディアじゃなかったかな?
ふざけたKANさんが楽しめる公式動画が少なかったのでこちらもご紹介させて下さい。

 
 

KANさん「トランスフォーマー」コメント ”TRIBUTE TO TRICERATOPS”
この格好で話し続ける姿にじわじわきます

 
 
 

誰かの中で生き続ける歌


今回、僕の好きなKANさんの曲を集めたプレイリストを作りました。その中から印象的な曲をご紹介しながらお話していきたいと思います。

「まゆみ」
曲調やテーマは違えど、女性の名前で3文字という共通点で、Mr.Children「くるみ」は「まゆみ」から影響を受けているのではと睨んでいる。歌詞にある〈ひとはだれもみな それぞれの悲しみを抱きしめて いつも夢を見てるよ きっとだれかに 小さな叫びが届く日まで〉のように、誰でも分かる言葉で孤独を歌う。ポップな曲調のおかげで隠されているけど、ちゃんと孤独を歌ってくれる信頼感が軽やかに耳から心へと侵入していく名曲です。

「Here,There and Everywhere」
ビートルズフリークとしても有名なKANさん。ポールのこの曲は何度も転調していく展開と歌詞の内容がリンクした面白い曲なんだけど、KANさんらしさも感じる曲。KANさんの楽曲の中にポールのDNAが脈々と流れているんだろうし、音楽を研究して自分の中に落とし込むことに長けた方なんだと感じます。

「予定どおりに偶然に(with ASKA)」
ビートルズオマージュやASKAさんぽく歌うところ、チャゲアス的メロディー(ASKAさんとの共作曲)「はじまりはいつも雨」を思わせる歌詞etc…遊び心が詰まった一曲。ASKAさんいわく「SAY YES」は「愛は勝つ」みたいな曲を書きたいと思って作ったそう。 多くのミュージシャンから愛されるKANさん。KANさんのことを書こうと思うと、他のミュージシャンとのつながりの話になるところからも、そのお人柄と音楽にみんなが惚れていたことが分かります。

 
 
 

天才とはやさしさである


「何の変哲もないLove Song」
普通の旋律で ひねらない言葉で たぶん君が その奥のほうを読み取ってくれるだろうから〉という歌詞にKANさんの音楽へのスタンスがさりげなく込められています。そう、信頼してくれてるんだ、僕たちリスナーを。でもとてもひねくれた曲も作る天邪鬼なところに可愛げがあり、作家としての凄みを感じる。

「エキストラ」
KANさんのやさしさの真骨頂と言える名曲。好きな人の人生の中では、届かない想いを抱えた自分はエキストラでしかない。だけどね、同時にこの曲だけは「エキストラが主人公の歌」であるという救いになっているんです。誰かにとってはエキストラでも、誰もが自分の人生の主人公であると。KANさんの見つめる世界の切り取り方、視点、大好きという想いそのものの美しさ、本当の豊かさを物語ってくれている気がします。ストリングスとピアノが絡み合うパート、胸が熱くなります。

 
 

KAN 『エキストラ』 Lyrics Video

 
 

ポップなメロディーを考えること自体がもうやさしさだと僕は思っている。「このメロディを聴いたら喜ぶかな?」という時間は大切な人のためにプレゼントを選んぶ想像と似ている。そこにエゴがあろうがなかろうが、その時間そのものが愛おしい。だから音楽は上手い下手だけじゃない、理屈を超えて届くものがあるんだ。やさしさにはユーモアと知性とセンスが必要で(厳しさも含めて)やさしい人は誰よりも悲しみを知っている。だから人の気持ちに寄り添えるんだと思うし、そういったセンスが人を感動させる音を紡ぐのかもしれない。つまり、やさしさを持つ人をきっと天才と呼ぶんだと思う。そう考えると、KANさんの歌に感じるやさしさは聴く人のどこかにも存在していて、だから共鳴すると言える。
そして笑ってほぐれた心に、より楽曲を沁み込ませるためのコスプレであり、お茶目であることにも気付く。

 
 
 

愛は自分に勝つ


「愛は勝つ」
KANさんが天国に旅立ったと知った日にやっと自分の中で答えが出ました。この曲の勝つとは、くじけそうな自分に打ち勝つということで、誰かと比較した勝ち負けじゃないと。歌詞の意味もわからず歌っていたあの頃から30年経って、頭ではなく心でそう理解した気がしました。イントロから楽曲を形作る全ての要素が完璧な歴史的名曲。

「胸の谷間」
最後は「愛は勝つ」が綺麗かなと思ったけど、きっとKANさんなら照れ隠しで最後もなにか仕掛けるかなと思い、大好きなトライセラと演奏しているこの曲を選びました。
せっかくなので少し胸の話を…。
胸というものは男を惑わせ、勇気づけ、色んな意味で奮い立たせます。その全貌を見たいと常日頃思っている訳だけど(個人的な見解です)実は谷間こそが想像を掻き立てる絶頂なのかもしれない。そう思えた瞬間、ひとつの真理に辿り着く感覚を覚えました(もう少しお付き合い下さい)

全てを知ることより、その途中、片鱗、一部にこそ本当の魅力があるのかもしれない、と。旅はその道中が思い出になるように、見えてしまっては終わってしまう。その先に何があるのか、未知へと向かっていくことが美しいのだと…だとしたら僕らはとてつもなくありがたいものを拝ませて頂いているのではないか。。(この辺にしておきます)いつかKANさんの元へ行ったら作曲についてと、胸の谷間の魅力について聞いてみようと思う。

今回はこの辺で。迷ったり、悩んだり、くじけそうな時も信じることだと、KANさんのやさしい歌声は今も僕に歌いかけている。 もう一度夢見よう!

KANさん、素敵な音楽をたくさんありがとうございます。

 
 
2023年12月分画像 1
 
 
 

*     *     *

 
 
 

オススメしたい!のコーナー


KANさんのやさしさに満ち溢れる極上のポップソングの数々、ぜひご堪能下さい。


01.プロポーズ
02.愛は勝つ
03.まゆみ
04.言えずのI LOVE YOU
05.安息
06.世界でいちばん好きな人
07.予定どおりに偶然に (with ASKA)
08.トランスフォーマー (TRICERATOPS COVER)
09.回奏パズル (produced by KAN) / スキマスイッチ
10.雨にキッスの花束を / 今井美樹
11.Here,There and Everywhere
12.キリギリス
13.エキストラ
14.何の変哲もないLove Song
15.愛は勝つ
16.胸の谷間
▶︎Apple Musicプレイリスト

 
 

●お知らせ
①高橋圭 2nd Album『landmark』絶賛配信中!
▶︎DL & Streaming URL

 

②YouTubeにてlandmark tree 展開中!
ダウンロード、ストリーミングサービスを利用されていない方にも新曲たちを聴いて頂けたらという思いから、YouTubeにて楽曲を公開中です。改めてMIXもし直し、少しずつ育つツリーのようにアルバムCMと共にアップして参ります。
▶︎landrmark tree

 
 
 
 


 
2021.08~新プロフィール画像高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始、2016年活動休止。現在は演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けるスタイルでソロ活動中。楽曲はApple Music、Spotifyなどで配信中。レコーディングなどお仕事依頼はTwitter DMからお待ちしております。
Twitter:@zazamino

イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
第23回マイフェイバリットエモーショナルソング 10選」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第25回「『ねぇ、できちゃった』のコーナー夏の特別編! 新曲「ひまわり」セルフライナーノーツ」
第26回「ニッポンの偉大なギター名盤10選」
第27回「夏とシティポップ」
第28回「初秋にこそ聴いて欲しい、サザンオールスターズ『真夏の果実』の魅力」
第29回「温かみ、手触りを感じる名作 Yuzukana 『ZUSHIKI』制作秘話!」
第30回「Mr.Children『Brand new planet』レビュー」
第31回「Mr.Children NEW ALBUM『SOUNDTRACKS』レビュー 〜人との出会いと音楽の化学反応〜」
第32回「TRICERATOPS トリビュート盤レビュー&ライブレポート!」
第33回「写真家・薮田修身 展覧会『THERE WILL BE NO MIRACLES HERE』レポート」
第34回「新企画!『YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう』始動!!」
第35回「YUKI『Baby it’s you』が示す、君と私の世界が愛と音楽に満ちている理由」
第36回「YUKI NEW ALBUM 『Terminal』レビュー」
第37回「ホタルライトヒルズバンドNEW ALBUM『SING A LONG』レビュー」
第38回「東京スカパラダイスオーケストラ 『TOUR2021 Togeter Again!』ツアーファイナルライブレポート」
第39回「新しいギターを買ったよ!」
第40回「音楽と食」
第41回「NEW SINGLE『花束』が出来るまで」
第42回「和田誠展で感じた普遍的な愛」
第43回「クリスマスソングの新たな名曲! Yuzukana『POST』ライナーノーツ」
第44回「YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう! デモ音源フル尺完成!!」
第45回「Official髭男dism「Pretender」から学ぶロマンス論」
第46回「YUMECO RECORDS テーマソング企画 Season 2 スタート!」
第47回「音楽プロデューサー・蔦谷好位置の魅力 & 蔦谷さんクイズ優勝報告!」
第48回「TRICERATOPS NEW ALBUM『Unite / Divide』レビュー」
第49回「アートディレクター・森本千絵さんとMr.Children」
第50回「YUKI ソロデビュー20周年記念企画第1弾 私が『ビスケット』を好きな理由」
第51回「スタジオデスクをDIY!!」
第52回「妄想! 脳内夏フェス2022!」
第53回 YUKI ソロデビュー20周年特別企画第2弾 「描き続けてきた『歓びの輪』」
第54回「ドラマ『silent』と主題歌 Official髭男dism『Subtitle』が丁寧に紡ぐ音と言葉」
第55回「YUKIソロデビュー20周年記念特別企画第3弾『Oh!ベンガル・ガール』レビュー」
第56回『「YUMECO RECORDSのテーマ」リリース!』
第57回「YUKI 『concert tour “SOUNDS OF TWENTY”』ライブレポート」
第58回「YUKI NEW ALBUM『パレードが続くなら』レビュー」
第59回「音楽と共に生きていく」
第60回「Mr.Children 30th Anniversary Tour『半世紀へのエントランス』 ツアーレポート&ディスクレビュー」
第61回「5年ぶりのステージで感じたこと」
第62回「高橋圭 NEW ALBUM『landmark』セルフライナーノーツ」
第63回「YUKI 「トロイメライ」から知る『ゆるし合う』ということ」
第64回「『YUKI LIVE “little night music”』ライブレポート」
第65回「ゆず Kアリーナ横浜 こけら落とし公演初日ライブレポート」
第66回「Mr.Children NEW ALBUM『miss you』レビュー」