始まりましたGAL Radio。ここは友人とカフェで会話するように、音楽の魅力についてお話する場所です。ごゆっくりどうぞ。
今回はKアリーナ横浜にて行われたゆずのライブについてお話します。何を隠そうわたくし、大のゆずっこ(ゆずファンの呼称)でございまして、ギターを始めたきっかけも彼らの影響、僕の音楽の原点であります。ゆずについて初めて書くということもあり、Kアリーナのご紹介、ライブの感想と合わせておふたりの音楽の魅力についてもお届けします。今回のテーマは「ふるさと」です。
YUZU SPECIAL LIVE 2023 HIBIKI in K-Arena Yokohama
【DAY1 BLUE × FUTARI】
2023.09.29
ゆずの地元、神奈川県・横浜に新たに誕生した「Kアリーナ横浜」の記念すべきこけら落とし公演として3日間に渡り開催されました。僕は初日の9月29日を鑑賞。初めて施設内に潜入ということで、お写真と共に会場の一部をご紹介します。(※今回の公演は開演中以外の会場内写真撮影OK)
Kアリーナ横浜の魅力
Kアリーナ横浜は、JR横浜駅から徒歩9分という好立地に位置し、収容人数2万33名を誇る世界最大級の音楽専用アリーナです。大きなシアター型ホールのようなラグジュアリーなデザインと、ステージを囲むような扇形の客席が広さと近さの両方を感じさせる臨場感溢れる設計となっています。
この会場の魅力で特にお伝えしたいのが抜群の音響設備です。音楽専用として作られたこともあり、200台のスピーカーを常設するなど音響にもかなりこだわっています。当日の座席は最上階のほぼ最後方でしたが、天井付近に設置されたスピーカーのおかげか、最前列で浴びるような驚きの音像でした。場内の壁も無駄な反響を抑えるよう材質にこだわられていたり、まるで映画館のようなクリアでバランスの良いサウンド。
弾き語り以外にも一部バンドサウンドとの同期(生演奏と録音された音源を同時に流す)もあったのですが、大きい会場だと篭りがちなドラムやベースなど低音の音像もとても鮮明で心地よかったので、色々なバンドやオーケストラの演奏をここで聴いてみたいと感じる音でした。好きなアーティストのライブが開催される際は足を運んで頂きたいオススメの会場です!
路上から始まった歌
さて、本題のライブについて。僕が最も感動したのが一曲目に歌われた初期の名曲「シュビドゥバー」でした。花道の先に設けられたセンターステージでサビをワンフレーズを歌いライブが始まったのですが、マイクを通さずに地声と生音のギターで放たれたんです!(興奮)もうこれだけでね、伝わる訳ですよ!これが何を意味しているか。一旦落ち着いて説明しますね。
ここからは僕の想像です。
あの会場でアーティストとお客さんが初めて共有した生演奏の音はマイクやスピーカーを通さない、ただただ喉を震わせた声と肉体から放たれたギターのストロークが空気を揺らした音だった。つまり、路上と同じシチュエーションからKアリーナの歴史は始まったんです。(オープニングSEが流れてからおふたりの登場なので、厳密に言えば違うんですが、生演奏のはじめの音ということでご容赦下さい)
路上で歌っていた曲を、自分たちが育ち、音を奏でてきた街に出来た世界最大規模の音楽専用アリーナのこけら落としの一曲目に歌う。ふたりにとって歌うという行為は、路上の時のままであるということを証明するかのような瞬間でした。
ふるさとを想う歌
この日のもう一つのハイライトが【響語り(ひびきがたり)】と題されたメドレーです。
今回のライブのタイトルにもある“HIBIKI”。響きは郷の音と書きます。ゆずの歌やアルバムのモチーフには『ふるさと』をモチーフにしたものが多く、最も大切にしてきたテーマの一つと言っても過言ではありません。その中でも代表的な「はるか」「虹」「SEIMEI」などが、まるで遺伝子レベルで繋がっていたんじゃないかと思わされる壮大な映像と、大きな1曲として描かれた圧巻のアレンジで鳴らされました。
演奏後のMCで北川さんが「こけら落としだから楽しいライブにしたいと思ったけど、この混沌とした時代に何かメッセージを伝えたいと思って1年ほどかけてこのメドレーを作りました」と語られていました。音が鳴り止んだ時のこの日一番の歓声と拍手が、リスナーの心にその想いが届いたことを物語っているようでした。
自分の暮らす街を愛する、そこに住む人、身近な人を想う行為が世界にいい影響を広げるんじゃないかということを歌い続けてきた証のようなメドレー。それはふたりが岡村町という小さな町出身で、自分たちのルーツを大事に、その心根を残し続けながら進化してきた積み重ねがこの日まで繋がっていることの象徴のようでしたし、その感謝と誇りのような姿勢が1曲目とメドレーに込められていた気がします。
原点にして頂点
ゆずの魅力はふたりの陰と陽のバランスを反映した高い音楽性を持つ楽曲とその変化にあると思っています。初期ゆずのサウンドメイクの立役者、寺岡呼人プロデューサーとタッグを組んだデビュー当時から既にふたり以外の音を取り入れる姿勢は始まっていました。
松任谷由実さんらニューミュージックと言われる邦楽に影響を受けた寺岡呼人さんの極上のポップスアレンジと、日本音楽界を代表する素晴らしいスタジオミュージシャンの起用で色褪せない普遍的な美しい楽曲を共に作り上げました。それは弾き語りというふたりにしかできない確固たる表現があるからこその実験精神を持った挑戦の旅の始まりだったと思います。
初期が彼らの音楽の根っこだとすると、デビュー10周年以降の蔦谷好位置氏、亀田誠治氏、ヒャダイン氏ら日本を代表する音楽プロデューサーとの制作で得た新たな化学反応が幹や葉となり、20年目から顕著になる新進気鋭のクリエイターとの打ち込みやEDMアレンジにも果敢に挑む変化が、今の彼らの音楽の花を咲かせている気がします。その大きなゆずの木になる実の鮮やかな黄色が人を元気にする色であるというのもまさに名は体を表しています。
ファンとしてはサウンドが変わる度、抵抗を感じる部分もないといっては嘘になりますが、それでも聴いていくとゆずの曲になっている妙があります。それはきっと、路上で足を止めて聴いてくれた人を励ますように全力で歌うふたりの「歌を届ける」という原点、ふるさとがあるからではないでしょうか。アコースティックギター、タンバリン、ハーモニカ、ピアニカといった、ストレートに曲の骨格を伝える機動力と親しみやすさに溢れる弾き語りというスタイルで、老若男女誰一人置いていかず、剥き出しの音楽を共に楽しませてくれる彼らのパフォーマンスそのものに、目の前の人を笑顔にするスタンスが顕著に表れていて、ふるさとから遠く離れるほど愛おしさも強く感じるように、ゆずはフォークデュオという肩書きでありながら、もうとうにそのジャンルを、過去の自分たちも超え続けて来られたんだと思います。弾き語りという原点が頂点だった訳です。これからも彼らの心に最も近いルーツを大切にするため、遠く、新しい一歩を踏み出していってくれるはず。そんなワクワクを、新たな会場で感じさせてくれた至福の音楽体験でした。
1st mini album『ゆずの素』1曲目に収録されているのが「てっぺん」というのも偶然か、必然でしょうか。
そろそろカフェを出ましょう。最後までお読み頂きありがとうございました。最後までお付き合い頂いたお礼にKアリーナ横浜のトイレの壁紙をどうぞ。
オススメしたい!のコーナー
ゆずのバラエティ豊かな楽曲の中から、僕の青春時代を共に歩んでくれた大好きな歌を選曲。曲順にもこだわりました。ゆずっこの皆さんはもちろん、聴いたことがない方も、1曲目から順番に聴いてみて下さい。
1.3カウント
2.スミレ
3.夕暮れどき
4.始めの一歩
5.月影
6.呼吸
7.奇々怪界-KIKIKAIKAI-
8.仮面ライター
9.ねぇ
10.代官山リフレイン
11.いちご
12.人間狂詩曲
13.蛍光灯の先
14.飛べない鳥
15.虹
▼Apple Music プレイリスト
●お知らせ
①高橋圭 2nd Album『landmark』絶賛配信中!
▶︎DL & Streaming URL
②YouTubeにてlandmark tree 展開中!
ダウンロード、ストリーミングサービスを利用されていない方にも新曲たちを聴いて頂けたらという思いから、YouTubeにて楽曲を公開中です。改めてMIXもし直し、少しずつ育つツリーのようにアルバムCMと共にアップして参ります。
▶︎landrmark tree
高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始、2016年活動休止。現在は演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けるスタイルでソロ活動中。楽曲はApple Music、Spotifyなどで配信中。レコーディングなどお仕事依頼はTwitter DMからお待ちしております。
Twitter:@zazamino
イラスト:matsun
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
第23回マイフェイバリットエモーショナルソング 10選」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第25回「『ねぇ、できちゃった』のコーナー夏の特別編! 新曲「ひまわり」セルフライナーノーツ」
第26回「ニッポンの偉大なギター名盤10選」
第27回「夏とシティポップ」
第28回「初秋にこそ聴いて欲しい、サザンオールスターズ『真夏の果実』の魅力」
第29回「温かみ、手触りを感じる名作 Yuzukana 『ZUSHIKI』制作秘話!」
第30回「Mr.Children『Brand new planet』レビュー」
第31回「Mr.Children NEW ALBUM『SOUNDTRACKS』レビュー 〜人との出会いと音楽の化学反応〜」
第32回「TRICERATOPS トリビュート盤レビュー&ライブレポート!」
第33回「写真家・薮田修身 展覧会『THERE WILL BE NO MIRACLES HERE』レポート」
第34回「新企画!『YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう』始動!!」
第35回「YUKI『Baby it’s you』が示す、君と私の世界が愛と音楽に満ちている理由」
第36回「YUKI NEW ALBUM 『Terminal』レビュー」
第37回「ホタルライトヒルズバンドNEW ALBUM『SING A LONG』レビュー」
第38回「東京スカパラダイスオーケストラ 『TOUR2021 Togeter Again!』ツアーファイナルライブレポート」
第39回「新しいギターを買ったよ!」
第40回「音楽と食」
第41回「NEW SINGLE『花束』が出来るまで」
第42回「和田誠展で感じた普遍的な愛」
第43回「クリスマスソングの新たな名曲! Yuzukana『POST』ライナーノーツ」
第44回「YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう! デモ音源フル尺完成!!」
第45回「Official髭男dism「Pretender」から学ぶロマンス論」
第46回「YUMECO RECORDS テーマソング企画 Season 2 スタート!」
第47回「音楽プロデューサー・蔦谷好位置の魅力 & 蔦谷さんクイズ優勝報告!」
第48回「TRICERATOPS NEW ALBUM『Unite / Divide』レビュー」
第49回「アートディレクター・森本千絵さんとMr.Children」
第50回「YUKI ソロデビュー20周年記念企画第1弾 私が『ビスケット』を好きな理由」
第51回「スタジオデスクをDIY!!」
第52回「妄想! 脳内夏フェス2022!」
第53回 YUKI ソロデビュー20周年特別企画第2弾 「描き続けてきた『歓びの輪』」
第54回「ドラマ『silent』と主題歌 Official髭男dism『Subtitle』が丁寧に紡ぐ音と言葉」
第55回「YUKIソロデビュー20周年記念特別企画第3弾『Oh!ベンガル・ガール』レビュー」
第56回『「YUMECO RECORDSのテーマ」リリース!』
第57回「YUKI 『concert tour “SOUNDS OF TWENTY”』ライブレポート」
第58回「YUKI NEW ALBUM『パレードが続くなら』レビュー」
第59回「音楽と共に生きていく」
第60回「Mr.Children 30th Anniversary Tour『半世紀へのエントランス』 ツアーレポート&ディスクレビュー」
第61回「5年ぶりのステージで感じたこと」
第62回「高橋圭 NEW ALBUM『landmark』セルフライナーノーツ」
第63回「YUKI 「トロイメライ」から知る『ゆるし合う』ということ」
第64回「『YUKI LIVE “little night music”』ライブレポート」