始まりましたGAL Radio。ここは友人とカフェで過ごすように、音楽の魅力についてお話する場所です。ごゆっくりと。

2月1日にソロデビュー20周年を締め括るNEW ALBUM『パレードが続くなら』をリリースしたばかりのYUKIさん。今回はアルバムのレビュー…ではなく、その初回限定盤にライブ音源が収録されている『concert tour “SOUNDS OF TWENTY” 2022』についての考察をお話します。20周年を祝う“お祭り”をテーマに掲げた半年間に及ぶツアーがどんな輝きを放っていたのか、一緒に思いを馳せていきましょう。今回のキーワードは『呪い』です。

 
 
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魂の軌道を辿る旅



シンプルなバンド編成で楽曲の強さをストレートに響かせるホールから、ストリングス、ホーンも加えたダイナミックな編成で広がりを魅せるアリーナへと内容もスケールもビルドアップした今ツアーは、YUKIさんが奏でてきた極上のポップスを堪能できるキャリアの総括でありながら最新のYUKIさんが詰まった「これまで」と「今」と「これから」のストーリーを感じさせる素晴らしいライブでした。

 
 
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僕はホール編6月24・25日、千葉・市川市文化会館と、アリーナ編12月5・6日、東京・日本武道館の4公演を目撃、特に印象に残った千葉2日目、ステージから2列目の座席から観た感動を共有させて下さい。

YUKIさんは以前インタビューで「ライブを観ていてグッとくる瞬間は、バンドの誰かがいつもと違う演奏をして、それに反応して他のメンバーが目線を合わせて微笑んだりする瞬間(要約)」と話していましたが、この夜はまさにそんな光景が目の前に広がっていて、アドリブにアイコンタクトでニヤリとするバンドメンバーの様子や、多幸感溢れる音像の中で歌うYUKIさんという奇跡に終始圧倒された2時間でした。

唇の震えから眼差しの動きまで伝わる距離で感じたのは、YUKIさんは心を超えて、魂で歌っているということ。魂を投げるように、爆発させるように解放していて、歌う眼差しは深呼吸のような凛々しさを宿していました。

過去を吸い込んで未来を吐き出す歌声、表情、一挙手一投足がくれる情報が音の説得力を増幅させ、音源やライブで何度も聴いてきた曲も「あの曲、あんな表情で歌っていたんだ」と曲の世界観が心の奥まで瞬時に届き、深く理解する感覚。答え合わせのような新&再&大発見の数々は、YUKIさんの魂の軌道を辿る至高の音楽体験でした。

そんな訳で、個人的大発見から今回のテーマ「呪い」についてお話します。
何故お祝いのお祭りがこのヘビーな曲から始まったのか、潜っていきましょう。

 
 
 

愛しい「呪い」



ホールツアーの事件とも言えるトピックのひとつが一曲目に披露された『呪い』です。(※ここからは個人的見解を多分に含みます)

ソロ1枚目のアルバム『PRISMIC』のラストに収録、バンド解散直後の様々な感情が入り混じった剥き出しの思いを吐露する名曲で、1st tourの1曲目としても演奏されています。(今回のツアーは過去のツアーのハイライトを踏襲した演出も見所のひとつでした)

歌詞の「こののろいから とかれる日は来るの?」というフレーズからは、“JUDY AND MARYのYUKI”という巨大な存在が呪いとして重くのしかかる、到底計り知れない思いを感じます。解散前後のインタビュー映像やソロ活動開始当時の記事ではバンドでの活動にベストを出し尽くしこと、やりきったことが度々発言されていて、解散に対してどこかドライな印象もありました。しかしながら「さめないで 夢 ならば」という歌詞には、本音では大切な歌をなくしてしまったことへの憂いも孕んだ“心の二面性”を歌っていると僕は受け取っていました。未練ではなく憂い。

この曲が伝えたいことは、モンスターバンドの解散やそのボーカルとしての過去の自分自身という呪いがとかれるのかではなく、それをテーマに愛しい歌を“なくした”こと、音楽への愛を歌っているんじゃないかと。この世界でJUDY AND MARYの歌をもう二度と歌えないのは唯一、YUKIさんだけですから。でなければ「もう うたえないわ」の一言の説明がつきません。(天邪鬼ゆえの深読みでございます。すごく要約していることを汲み取って頂けると幸いです)あくまでも推測に過ぎませんが、どちらにせよYUKIさんがバンドの歌を失ったという事実は確かで、愛してきたがゆえにその呪いも持ち続けていくんだろうと、この曲を書いた当時は思われていたかもしれません。

でもあの夜の「呪い」はもうひとつの表情を映し出していました。それはこの曲には「YUKIとして、ソロとしての歌を歌い始めるんだ」という強い決意も同居しているということです。やわらかさを感じる歌い方によって180°聴こえ方が変わりました。過去の自分を許す呪いをかけるかのように、それこそ魂を救い、解放するように、噛み締めながら歌っている印象を受けたんです。(時の経過が音の鳴らし方、聴こえ方を変えてくれるのも音楽の魔法のひとつですね。)

YUKIさんのソロの歌は大切な魔法をなくしていなければこの世界に産まれてこなかった訳で、自分にとっては呪いでもあった過去に対しても感謝と敬意も持ち続けながらの20年だった、そんなニュアンスに聴こえたんです。だからこそ、時を経て鳴らされた呪いはより「愛しい」し、「うたえないわ」と改めて歌い始めたことがものすごく愛しい行為に思えたんです。失った人にしか歌えない歌、めちゃくちゃカッコよすぎませんか…?

浅はかな考察ですが、リリースから20年が経ち、呪いからとかれたから今回歌ったのかなと感じたりもしましたが、そこは曖昧なままでいいですね。しかし、せっかくなので僕の見解を述べさせて頂くと(どっちやねん)

「呪いはとけていないが形を変えた」

という見解です。そう思った根拠があります。先ほどこのツアーはYUKIさんの魂の軌道とお話しましたが、この軌道がそれを示している気がしています。

その謎を解く鍵が『JOY』です。

 
 
 

「呪文はJOY」



YUKIさんソロ活動の転機となった代表曲『JOY』。この曲が何故僕らの心にぶっ刺さったのか、個人的新大発見をお話します。それはこの曲も“呪い”について歌っているということです。

今更気づいたのですが、サビの一節の「ふたりをつなぐ呪文はJ・O・Y」
そうです、呪文って…呪いですよね!
魔法はとけ、自分にかけてしまった呪いから始まった旅の途中で「呪いは呪いでも歓びの呪いをかけてしまおう」という発想にたどり着いた歌だとすると…YUKIさんはやっぱり本物のSUPER POP STARですわ!!

この曲の最後は「死ぬまでドキドキしたいわ 死ぬまでワクワクしたいわ」と「死」が歌われています。魔法は必ずとけるし、呪いもいつかはとかれるし、音楽はいつか鳴り止む。それでも(だからこそ)その瞬間まで心が踊る、魂が求める方へと突き進みたい。その為に新たな呪いを自らと大切な君にかける。そんな「生」への軽やかな、でも確かな決意の歌でもあった訳です。(軽やかさは強さ)

呪いは“他人を不幸に陥れるもの”というマイナスなイメージが強い言葉ですが、“自分を災いから守るおまじない”という意味もあるそうです。文字が示すように口で唱えるのが呪いだとすると、歌はまさに呪いの一種ではないでしょうか。20年を祝う旅のはじまりに相反する2つの意味を持つ呪いを鳴らしたのは、ポジだけではなく、過ちや後悔といったネガも含めた、これまでの自分に起きた全てを肯定している今を響かせたかったのかなと想像しています。「呪い」と「祝い」と言う文字が似ているのも偶然でしょうか。(祝には神様を祀る祭壇の意味もあるそうです。ステージセットは祭壇のようでしたね。)

どんな未来を選んでもそれは別の素晴らしい今があるのかもしれないけれど、その時々の新しい挑戦や選択、全ての決断を愛せたなら、過去が襲いかかろうとも音楽と時間の魔法で呪いの姿さえも変えてしまえばいい。『「あの魔法はもうとけてしまった」けど、新しい魔法と出会いこんなに素敵な曲たちを歌ってきた20年、どうよ?』と誇らしげなしたり顔で僕らを煽るYUKIさんの笑顔が目に浮かんでいます。そんな魂の軌道を『呪い』から『JOY』への変化に感じた訳です。呪いはとけないまま愛すればいい。やっとそう解釈しました。

 
 
 

タイムカプセル 開ける時まで


 
 
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アリーナツアー開催のタイミングでリリースされたEP『Bump & Grind』からは『タイムカプセル』のみ披露されませんでした。僕はこの曲が歌われなかったことがまた会うための口実なんじゃないかなと思っています。

「タイムカプセル 開ける時まで」という歌詞は、カプセルを開ける時(曲が披露される次のライブ)までリスナーそれぞれの日々の中でこの曲が思いをいっぱい吸い込んで、少し先にある未来の再会を楽しみに心に“閉じ込めておく”仕掛けなんじゃないかとにらんでいます。演奏しないことでその存在をより感じさせるってニクいよね。ズルいよね!

 
 

フリル 幾重にも



最後の印象的な歌詞「フリル 幾重にも」のフリルはきっと心が動くもののメタファーで、音に合わせスウィングするYUKIさんの華やかなステージ衣装のようだったり、風を受けて揺れる心のヒダだったり、YUKIさんの歌の数々を表すかのごとく今をときめかせるキラーフレーズです。

音の響きで作詞するYUKIさんですから空耳で英語にも聴こえるなと思っていて、なにかメッセージが隠されている気がしています。

「フリル 幾重にも」=「who need, it’s you anymore.」
直訳すると「必要なのは、もうあなたです。」(かなり直訳)

ここで言う「もう」は「そりゃあもう」的な感嘆詞、感動詞の意味と、結論としての「つまりもうそういうことだよ」みたいなニュアンスで「大切なのは、もうあなたなんだよ」と共に生きてきたリスナーの今日までも讃えるようなYUKIさんからのプレゼントとして勝手に受け取っています(だとしたら忍ばせ方、オシャレすぎません?)

変わらない大切なもののために変化を受け入れ続け、新しい自分として表現されてきたYUKIさん。音楽を愛し、愛されてきた時間が放つ結晶の煌めきに音楽の神様が微笑んだような、歓びという幸福な呪いにかけられるご褒美みたいな史上最高のツアーだったと思います。

大変なことは沢山ありますが、健康で笑顔で暮らしていけたら、僕もあなたもYUKIさんも、音楽ともっと仲良くなれる気がします。そろそろカフェを出ましょう。最後までお読み頂きありがとうございました。

 
 
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オススメしたい!のコーナー



テーマに沿った楽曲を独断と偏見で選ぶコーナー。今回のテーマは「My Best 2022」2022年リリースの楽曲から特に心揺さぶられた曲を選曲、今回はK-POPからもチョイスしてみました。今年もそれぞれがステキな音楽と出会えますように。

1.Oh!ベンガル・ガール / YUKI
2.Subtitle / Official髭男dism
3.Ditto / NewJeans
4.TOKYO 君が everything feat. キタニタツヤ & クボタカイ / KERENMI
5.瞳惚れ / Vaundy
6.エジソン / 水曜日のカンパネラ
7.KICK BACK / 米津玄師
8.RAKUEN (Live) / ゆず
9.Howling / Mellow Youth
10.物語のように / 坂本慎太郎
11.Alive with you (feat.SFC.JGR) / Yel
12.ちゅ、多様性。 / ano
13.タイムカプセル / YUKI

 
 
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Apple Musicプレイリスト:My Best 2022

 
 
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YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう!Season 2
当サイト、YUMECO RECORDSの10周年をお祝いし、夢を追いかける人への応援ソングとして制作、1月5日に配信リリースされた「YUMECO RECORDSのテーマ」今回は1番のベースを弾いて下さった作詞家・ベーシストのノマアキコさん、そして2番のエレキピアノを弾いてくださったシンガーソングライターの秦千香子さんからメッセージを頂きました!
 
 
【vol.13 作詞家・ベーシスト ノマアキコさん】

 
 
【vol.14 シンガーソングライター 秦千香子さん】

 
 
 
 


 
2021.08~新プロフィール画像高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始、2016年活動休止。現在は演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けるスタイルでソロ活動中。楽曲はApple Music、Spotifyなどで配信中。レコーディングなどお仕事依頼はTwitter DMからお待ちしております。
Twitter:@zazamino

イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
第23回マイフェイバリットエモーショナルソング 10選」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第25回「『ねぇ、できちゃった』のコーナー夏の特別編! 新曲「ひまわり」セルフライナーノーツ」
第26回「ニッポンの偉大なギター名盤10選」
第27回「夏とシティポップ」
第28回「初秋にこそ聴いて欲しい、サザンオールスターズ『真夏の果実』の魅力」
第29回「温かみ、手触りを感じる名作 Yuzukana 『ZUSHIKI』制作秘話!」
第30回「Mr.Children『Brand new planet』レビュー」
第31回「Mr.Children NEW ALBUM『SOUNDTRACKS』レビュー 〜人との出会いと音楽の化学反応〜」
第32回「TRICERATOPS トリビュート盤レビュー&ライブレポート!」
第33回「写真家・薮田修身 展覧会『THERE WILL BE NO MIRACLES HERE』レポート」
第34回「新企画!『YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう』始動!!」
第35回「YUKI『Baby it’s you』が示す、君と私の世界が愛と音楽に満ちている理由」
第36回「YUKI NEW ALBUM 『Terminal』レビュー」
第37回「ホタルライトヒルズバンドNEW ALBUM『SING A LONG』レビュー」
第38回「東京スカパラダイスオーケストラ 『TOUR2021 Togeter Again!』ツアーファイナルライブレポート」
第39回「新しいギターを買ったよ!」
第40回「音楽と食」
第41回「NEW SINGLE『花束』が出来るまで」
第42回「和田誠展で感じた普遍的な愛」
第43回「クリスマスソングの新たな名曲! Yuzukana『POST』ライナーノーツ」
第44回「YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう! デモ音源フル尺完成!!」
第45回「Official髭男dism「Pretender」から学ぶロマンス論」
第46回「YUMECO RECORDS テーマソング企画 Season 2 スタート!」
第47回「音楽プロデューサー・蔦谷好位置の魅力 & 蔦谷さんクイズ優勝報告!」
第48回「TRICERATOPS NEW ALBUM『Unite / Divide』レビュー」
第49回「アートディレクター・森本千絵さんとMr.Children」
第50回「YUKI ソロデビュー20周年記念企画第1弾 私が『ビスケット』を好きな理由」
第51回「スタジオデスクをDIY!!」
第52回「妄想! 脳内夏フェス2022!」
第53回 YUKI ソロデビュー20周年特別企画第2弾 「描き続けてきた『歓びの輪』」
第54回「ドラマ『silent』と主題歌 Official髭男dism『Subtitle』が丁寧に紡ぐ音と言葉」
第55回「YUKIソロデビュー20周年記念特別企画第3弾『Oh!ベンガル・ガール』レビュー」
第56回『「YUMECO RECORDSのテーマ」リリース!』