早いもので、今年も半分が過ぎようとしています。そんな6月に、今年結成10周年のMANNISH BOYS〈斉藤和義(Vo. / G.)×中村達也(Vo. / Dr.)〉のツアーが始まりました。今回は、ツアー初日・名古屋(6月1日@Zepp Nagoya)と2日目・大阪(6月2日@Zepp Namba)のようすをネタバレにならないようお届けしたいと思います。
約3年ぶりの斉藤和義さんと中村達也さんによるユニット・MANNISH BOYSのツアー。全国6公演のチケットがほぼソールドアウトになったことからも、ファンがどれほど心待ちにしていたかがうかがえるのではないだろうか。フロアの大きな拍手に迎えられて、カーキ色のジャンプスーツで登場の二人。長身細身の和義さんはラフに着こなし、達也さんは上半分を腰で結んだスタイルで、ため息が出るほどのかっこよさだ。和義さんは少しはにかむような笑顔を見せてゆるやかにスタートした。今回は二人だけの2ピース編成。軽快なリズムで鳴らされるギターのリフに、達也さんのドラムと雄叫びが加勢して徐々に加速していく。向かい合って笑顔を見せながらゴキゲンなセッションで盛り上がる二人に、フロアも腕を振り上げ応える。
ブルーやバイオレットのムーディーなステージで、伏し目がちにつま先立ちでリズムを刻む。その佇まいはとてもセクシーだ。しなやかな指さばきやエフェクターを駆使した低音の表現、ソリッドなカッティングにギタリスト “斉藤和義” を堪能した。達也さんのドラムは圧倒的な存在感。ほかに類を見ない野性的でパワフルな音は、まるで心臓目がけて撃ち込まれる銃弾のよう。また、ある曲の情熱的なドラミングに涙が出そうになった。和義さんの切ない歌声と並走するように、ドラムがメロディーを歌っているように感じたからだ。シンプルながら重厚なサウンド、MANNISH BOYSの真髄を見るようだった。
いつもよりもステージ上の二人の距離が近いような気がしたのは気のせいだろうか。お互いニコニコ、顔を見合って確かめ合う。気持ちよくわいわいと盛り上がったあとで「この曲はここでよかった?」なんて振り返ってみたり、「次は、ドラムから始まる曲かギターから始まる曲かどっちから演る?」なんて相談したり。もしかしたら、ツアー初日のレアな光景なのかもしれない。また、達也さんの「ちょっとタイムー!」の声に「望むところだ~」と答える和義さんにも和んだ。休憩中に飛び出す楽屋の延長のような会話に、二人の関係性が垣間見れて面白い。達也さんは、20分の間に2回も職質を受けたのだそう。勘弁してくれよといった感じで話すと、和義さんは「警察も見る目があるよね~(笑)」とあいかわらずの毒を吐き、みんなを笑わせる。
大阪では、この日購入したばかりだという年代物のドラムセットのお披露目があった。和義さんは、名古屋から大阪へ向かう新感線の喫煙ルームで乗り合わせた大阪の男性の関西弁を再現し(軽くディスってる?笑)「あぁ、これから大阪に行くんだな」と実感したのだそう。まだまだ話そうとする和義さんだったが、達也さんに「今日はトークライブですか?」とつっこまれるシーンも。ぐふふと我に返ってギターを鳴らし始めたものの「一音ズレてる!」と、また話し出そうとしたところを達也さんがたしなめて大爆笑。話し足りない和義さんがおかしかったし、達也さんにはすべてを委ねている感じが微笑ましかった。達也さんも和義さんの前ではおどけてみたりシンバルを頭に乗せてみたりする、チャーミングな一面も。今回も私たちはまだ声が出せない状況だが、いつもフロアからの声を拾って応えてくれる。この日もフロアのようすを見ていた達也さん。もしかしたら私たちのいろいろな想いもお見通しなのかもしれない。鋭くも愛に満ちた眼差しに底知れぬ懐の深さを感じたのだ。
大阪のアンコールでは、ライブ前に達也さんが「この曲が演りたいー!」と言った曲が急遽エントリー。「リハやってないけど大丈夫かな~」と心配しつつも、自然にセッションが始まっていくのはさすが。その自由度の高さこそがMANNISH BOYSの醍醐味なのだと思う。ハンドクラップで盛り上がるフロアには多幸感しかない。本当は私たちも歌いたい! そんな私たちの想いを汲むように、手をひらひらしてフロアを煽りながら「ココロで歌って」と和義さんは胸をたたきジェスチャーをする。少し顔をしかめて苦しそうに歌いながら、ステージの前まで出てきてくれる和義さんに胸が熱くなった。二人を観ていると、年齢を重ねることでしか得られない楽しみや豊かさを実感する。“たっつぁん”“和ちゃん”と呼び合う二人の、気負いのない、あるがままのロックンロール。かっこいい二人なのに、ちょっとくすっと笑ってしまうのもMANNISH BOYSの魅力だ。16日にはツアーファイナルを迎えるが、本音を言えば、もっと大勢の人に観てもらいたいと思っている。LOSALIOSとして夏フェスに出演する達也さんと一緒に、MANNISH BOYSも追加出演なんてことにならないかなと秘かに期待している。
shino muramoto●京都市在住。現在は校閲をしたり文章を書いたり。先日、東京競馬場で行われた日本ダービーは、武豊騎手騎乗のドウデュースが優勝しました。武騎手の53歳は史上最年長で、歴代最多の6度目の優勝はすごい! 2着に入ったのは、以前こちらの連載でも紹介させていただいた”キタサンブラック”産駒のイクイノックス。集まった6万人の観客を唸らせた圧巻のレースでした。
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第5回「紡がれる想い『いつまた、君と~何日君再来』」
第4回「雨に歌えば(斉藤和義 Live Report)」
第3回「やわらかな日(GRAPEVINE Live Report)」
第2回「あこがれ(永い言い訳 / The Birthday)」
第1回「偶然は必然?」
[Live Report]
2017年1月27日@Zepp Tokyo MANNISH BOYS “麗しのフラスカ” TOUR 2016-2017
斉藤和義 Live Report 2016年6月5日@山口・防府公会堂 KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016 “風の果てまで”
GRAPEVINE/Suchmos Live Report 2016年2月27日@梅田クラブクアトロ“SOMETHING SPECIAL Double Release Party”
斉藤和義 Live Report 2016年1月13日@びわ湖ホール KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016 “風の果てまで”