始まりましたGAL Radio。ここは友人とカフェで過ごすように、音楽の魅力についてまったりお話する場所です。是非ゆっくりしていって下さい。

先日、僕が編曲・プロデュースを担当しました、YuzukanaのNew Single『POST』がリリースされました。今回は作品への思いや、レコーディング時のエピソードについてお話します。曲の解釈は聴く方の数だけ正解があります。あくまでも僕個人の感想ですので、それぞれのイメージで楽しんで頂ければ嬉しいです。では早速お聴き下さい!!

 
 

 
 

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まずは簡単に、おふたりのプロフィールをご紹介します。

 
 
GALRadio-追加画像2021-12

Yuzukana
奄美大島出身の深田譲(Gt.)と、宮城県仙台市出身のシンガーソングライターあわゆいかなこ(Vo.)によるユニット。ギターの島人(しまんちゅ)が紡ぎ出す優しい旋律に、泡を結うような柔らかい歌声が重なり合い生産される音楽は多くの人の心を虜にします。
現在は奄美大島を中心に、ライブやレギュラーラジオなど精力的に活動中。


譲くんはフィンガーピッキングという、ギター奏法の凄腕で、全国大会に出場するハイパースキルの持ち主(ギタリストとして尊敬を超えて拝むレベル)
かなこさんは翻訳家としても活動されており、詩の世界観はやさしく切ない、ぬくもりを感じさせてくれます。シルクのような歌声は多分、1/fゆらぎ出てます(※個人的感想)

▼Yuzukana Official Site

 
 

1.POSTとの出会い



Yuzukanaのおふたりとは以前から親交があり、昨年彼らの2nd mini Album『ZUSHIKI』のMIX・マスタリングを担当したことがきっかけで、再び連絡を取り合うように。

今年の1月に送って頂いた、2020年のクリスマスに行われた彼らのライブ映像の中で、この曲が新曲として披露されていました。最初に聴いた瞬間にフレーズが溢れ出し(いわゆる降りてくるってやつです)「この曲は絶対に俺が作りたい!」と、ひと聴き惚れ。その日の夜に5時間ほどで一気にデモ音源を制作。明け方に送りつけ「是非作らせて下さい」と逆オファーをしたのがきっかけでした。

歌とアコギ、というシンプルな編成で、繊細かつ緊張感のある彼らのスタイルとはまた違った一面を引き出したいとご提案、おふたりもそれを快諾して下さり「バンドアンサンブルの中で彼らの音がどう鳴るのか」を一緒に模索、チャレンジしていきました。それはは、とても素敵な音楽の旅でした。

データをオンラインでやりとりしていったのですが、鎌倉と奄美という約1,800kmの距離を超えてのやりとりは、まさに遠距離恋愛の文通さながら。途中、期間を空け寝かせつつ、何十回と細かく微調整やブラッシュアップを繰り返し、約1年間かけて制作(夏も冬気分で涼しかったです)皆さんの耳に、心に届く瞬間を想像しながらの日々は、まるでクリスマスを待ちながらアドベントカレンダーの窓を開けていくようなワクワク感と、早く聴いてもらいたいウズウズで、ソワソワしっ放しでした(←擬音祭り)

 
 
 

2.楽曲の魅力



歌詞
この曲が持つ力は、普遍的な美しさを持つテーマと、行間にあると感じています。
ボーカル・あわゆいかなこさんが紡ぐ幻想的な歌詞は、人間の心の揺れや、複雑な思いを、難しい言葉ではなく、日常で使う言葉で丁寧に表現されています。

クリスマスに一通のポストカードが届くところから物語は始まります。短い歌詞は、多くを語らず、溶けずに残った大切な思いだけを抱きしめるような儚さ。だけど、ここには描かれていない言葉や時間が行間から溢れてくるような、小説1冊分、映画1本分の情報量と愛がそこにはあります。情景が浮かぶけれど、リスナーそれぞれが大切な人を思い浮かべて描ける星座のような、抽象的かつ普遍性を持った素晴らしい歌詞です。

▼「POST」歌詞はこちらから


音楽に対して誠実で、真摯的なおふたりのスタンスに応えるべく、はじめに歌詞を読んだ際の感動と僕の解釈を、ひとつの物語にした短編小説を書いてお送りしイメージを共有したりも。そこから3人の脳内がシンクロしていった気がします。

 
 
 


一緒に動いてくださる方がいて、
聴いてくださる方がいて、
この曲はまさに「つながり」

POSTはつながりなのです。
私とあなたを、あなたと誰かを。

Vo.あわゆいかなこ

 
 
 

そんな言葉を頂いてから、改めてアートワークを見ると、まるでクリスマスを楽しむ街を、僕らを、立って眺めているポスト目線にも思えてきます。

 
 
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アートワーク

 
 

サウンド
この曲はイントロの譲くんのギターのリフから構想を膨らませていったそうです。一音一音に思いが込められたアコギの響きは、心音のように体内を静かに、激しく揺さぶり、主人公と大切な人との思い出を描いていきます。

イントロ、Aメロ、サビと、各セクション毎に主役となる楽器がいたり、時間を行き来するようにシーンが変わっていく様は、とても映像的な作品だなと感じます。アイディアを出し合い、作り上げたサウンドに、僕ら三人もレコーディング中、何度も感動しました。

個人的な聴きどころは、主旋律意外のメロディーが鳴っている対旋律(カウンターメロディー)を様々な箇所に散りばめている点です。日常の中でも、今までもそれはそこに存在していたけれど、あると気付いた時の幸福感、みたいなことってありますよね? 聴こえるか聴こえないか分からないくらいのボリュームの音も、きっと心を揺さぶるエッセンスになると密かに忍ばせています。徐々にビルドアップしていく演奏のダイナミクスや、クリスマスのおもちゃ箱をひっくり返したような賑やかさも、醍醐味のひとつとして楽しんで頂けたら。

 
 
 

3.音楽は祈り



冬の澄んだ空気が、空やイルミネーションをより美しく魅せ、冬の寒さが人の暖かさ、温もりを恋しくさせる12月。クリスマス特有の幸福感には、切なさも含まれていて、クリスマスソングも、明るく響いてしまうから、切なくて、だからこそ自分だけに輝く光があります。

音楽は目には見えない波です。それを信じている時点で、ある種の宗教的な信仰に通じる物があるのですが、祈りが魂の叫びであるように、音楽もまた、祈りだと思っています。綺麗事に聞こえるかもしれませんが、そういうものだと思うよ。何故なら、僕らの気持ちもまた揺れ動くもので、その揺れと、音の波の揺れが合う時、心が音楽を感じるんだと思思う。

例えば、愛する人がいても、相手も自分と同じくらい好きかなんて分からない。
全く同じ気持ちになれているかなんて、形では測れない。

けどさ、人はふとした瞬間に同じ気持ちになれるし、やさしい瞬間と出会うんですね。
音と心の揺れが合うように、心と心の揺れが合うんだ。そういう瞬間が音楽に、そしてこの曲にも詰まっているんじゃないかと思うんです。
音楽は孤独や悲しみ、喜びを共有できると信じています。僕はこの曲でそれを可視化したかった。この曲を聴いたリスナーの中で、何かが共鳴してくれたら嬉しいです。

大切な人との思い出や、今を感じながら、沢山の想像力を持って聴いてください。
この曲の宛先はあなたの心です。どうか、届きますように。

最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。素敵な年末年始をお過ごし下さい。
メリークリスマス!

 
 
 

Yuzukana New Single『POST』2021.11.24 Release!!

▼Streaming & DL

 
 
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オススメしたい! のコーナー



テーマ「クリスマスソング」
ド定番ばかりですが…定番はやはり良い!と言うことで、洋楽・邦楽から5曲ずつセレクトしました。

「My Best Christmas Songs 2021」

1.Wonderful Christmastime / Paul McCartney
2.Driving Home for Christmas / Chris Rea
3.Merry Christmas / BUMP OF CHICKEN
4.白い恋人達 / 桑田佳祐
5.All I Want for Christmas Is You / Mariah Carey
6.Last Christmas / Wham!
7.angel song -イヴの鐘- / the brilliant green
8.Noël(Single Version) / 高橋 圭
9.Christmas Lights / Coldplay
10.POST / Yuzukana

▼Apple Musicプレイリスト
▼YouTubeプレイリスト

 
 
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2021.08~新プロフィール画像高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始、2016年活動休止。現在は演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けるスタイルでソロ活動中。楽曲はApple Music、Spotifyなどで配信中。レコーディングなどお仕事依頼はTwitter DMからお待ちしております。
Twitter:@zazamino

イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
第23回マイフェイバリットエモーショナルソング 10選」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第25回「『ねぇ、できちゃった』のコーナー夏の特別編! 新曲「ひまわり」セルフライナーノーツ」
第26回「ニッポンの偉大なギター名盤10選」
第27回「夏とシティポップ」
第28回「初秋にこそ聴いて欲しい、サザンオールスターズ『真夏の果実』の魅力」
第29回「温かみ、手触りを感じる名作 Yuzukana 『ZUSHIKI』制作秘話!」
第30回「Mr.Children『Brand new planet』レビュー」
第31回「Mr.Children NEW ALBUM『SOUNDTRACKS』レビュー 〜人との出会いと音楽の化学反応〜」
第32回「TRICERATOPS トリビュート盤レビュー&ライブレポート!」
第33回「写真家・薮田修身 展覧会『THERE WILL BE NO MIRACLES HERE』レポート」
第34回「新企画!『YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう』始動!!」
第35回「YUKI『Baby it’s you』が示す、君と私の世界が愛と音楽に満ちている理由」
第36回「YUKI NEW ALBUM 『Terminal』レビュー」
第37回「ホタルライトヒルズバンドNEW ALBUM『SING A LONG』レビュー」
第38回「東京スカパラダイスオーケストラ 『TOUR2021 Togeter Again!』ツアーファイナルライブレポート」
第39回「新しいギターを買ったよ!」
第40回「音楽と食」
第41回「NEW SINGLE『花束』が出来るまで」
第42回「和田誠展で感じた普遍的な愛」