始まりましたGal Radio。気付けば夏ですね。例年より梅雨のトンネルが長〜〜〜かった分、通り抜けた瞬間の日差しの眩しさと嬉しさが比例していますが、同じように影も強く映し出すようで。まだライブの再開は遠かったり、日々の暮らしでも様々な問題がある中、夏の訪れに大手を振って喜べなかったりもしています。ただ毎日無理せず健康第一で過ごしましょうね!


夏を象徴する音楽と言えば、TUBEやサザン、「おっととっと夏だぜ!」。。。など色々とございますが今回は夏にぴったりなシティポップの魅力についてお話します。昨年取り上げました竹内まりやさんなんかも幼き頃のドライブで流れていた思い出と強く結びついていて夏から秋にかけては自然と聴く頻度が高くなります。


こちらも併せて是非。
▼第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」


夏フェスのない夏、オンラインでのライブ配信など新しい楽しみ方も産まれる中、新たな音と出会いいつもとは違う夏を楽しむきっかけの一つになるよう掘り下げていきたいと思います!

 
 
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同郷岩手県出身で僕の母の高校の先輩
大滝詠一さんの名盤『A LONG VACATION』(1981年発売)ジャケット

 
 
 
●シティポップ再注目の理由

シティポップと言っても定義や範囲の境界線が様々でそれこそが特徴とも言えますが、70~80’s J-POP、歌謡曲のなかでも「都会的な雰囲気」を歌詞やサウンド、アレンジで表現し多種多様な音楽的要素を取り入れている曲の総称を指します。日本のシティポップが海外のDJやミュージシャンにサンプリングされたことでマニアから火が付き逆輸入のような形で日本でも盛り上がるきっかけとなり、SuchmosやNulbarich、SIRUPといった現在活躍されているR&B、ブラックミュージック、ロックに影響を受けたミュージシャンの登場も相待って若年層や海外で人気を博していると言われ久しい、という経緯です。懐古主義ということではなく、再評価されたということはいまだに色褪せない普遍性を持っていると言えます。

 
 
 
●その熱を肌で体感した出来事

昨年末、代官山T-SITEにて行われたイベント「FUTURE ANTIQUE」の企画の一つで、DJ・Night Tempo氏(80年代のジャパニーズ・シティ・ポップ、昭和歌謡や和モノディスコチューンを再構築し、フューチャー・ファンクというジャンルを生んだプロデューサー・DJ)のライブを見る機会がありました。
▼【イベント】代官山夜韻カセットDJセット〜Night Tempo昭和グルーヴ・ツアー・アフターパーティー


彼のコレクションから選りすぐりの曲をカセットテープで流し披露していくとても興味深い内容(思えばこのライブがコロナ前最後に見たライブだったかも…ゾッ)。観客の多くが10代後半から30代前半でしたが、往年の名曲のイントロが流れる度に笑顔で喜ぶ姿や歌詞を口ずさんでいたことに驚きました。リアルタイムで聴いていない世代で共有出来ている感覚は大変喜ばしく、DJという存在は音の伝道師だなと改めて実感。ファッションと同じように音楽もリバイバルされていくのを目の当たりにした貴重な時間でした。

 
 
 
●夏らしさ=サウンド

音には色があると思っています。色が見える音があるというニュアンスの方が近いかもしれません。それは光に照らされ揺れる草木や夕暮れの海、真夜中の星空と行った時間や風景をイメージさせてくれます。


シティポップはギターのカッティングという小気味よくリズミカルに音を切るような奏法と音色によって味付けされた曲が多く、どこか湿度の低いカラッとした「夏の成分」を配合したイメージの空気感を醸し出しています。ビンテージのギターはよく「枯れた音」なんていう風に表現されますが、楽器が鳴らす色とスケール感が夏をモチーフにした曲と相性抜群なのです。


後に多くのシティポップ作品と携わっていくはっぴいえんどやティン・パン・アレー、シュガー・ベイブなどといった日本の音楽史上重要な位置付けとされるグループ。彼らのルーツにあるアメリカをはじめ海外のロック、ブルース、ソウルからジャズなどの様々なジャンル、高い演奏力とデジタルに移行しつつあった時代の新しい音がバランス良く融合されたのが日本のシティポップの楽曲が持つ音そのものの「瑞々しさ」ではないでしょうか。それは言語化出来ない高揚感と熱を帯びた彼らが音に感動した衝動を追体験するような不思議な感覚をもたらしてくれます。

 
 
 
●ビジュアルとCMによる効果
 
 
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写真は1982年リリースの山下達郎のアルバム『FOR YOU』に収録されていて、2002年にリカットされた「LOVELAND,ISLAND」のシングルジャケットです。当時僕は中学1年生で地元の新星堂にチャリで買いに行きました。鈴木英人氏の色彩鮮やかなビジュアルからはそこに吹いている風の匂いまで浮かんでくるようです。


この曲は1981年『サントリー ビール純生』のCMソングとして書き下ろし、2013年には『サントリー のんある気分』のCMにも起用されています。


その他、大滝詠一「君は天然色」が2004年に『キリン 生茶』(他2社の飲料CM)、松田聖子「渚のバルコニー」は奇妙礼太郎カバーで2015年に『サントリー オールフリー』に起用と、爽やかさをアピールし夏に合うイメージのお酒や飲料モノとリンクさせて来たこともシティポップの視覚的な夏らしさの要因と言えます。

 
 
 
●まとめ

湿気の膜を全身に纏わされるような梅雨。夏の火照りを冷ますやがて訪れる哀愁漂う秋。
その間にある夏の明るく開放的な面と非常に短い季節故の切なさを心の何処かで感じているからこそシティポップはリンクするのでしょう。
この夏はシティポップからルーツを辿る心の旅を! 今回はこの辺で。


夏の名盤に絞りシティポップをご紹介している記事がありましたのでこちらも是非。
▼真夏のシティ・ポップ名盤定番10枚 – 栗本 斉氏ブログ『…旅とリズム…旅の日記 by 栗本斉…』より

 
 
 
 
 
新コーナー「僭越ながら」のコーナー!


 

このコーナーでは過去の名曲を僭越ながらアレンジ、カバー致します。今回のテーマ「夏とシティポップ」で真っ先に浮かんだ曲でした。普遍的かつ発明ともいえるメロディーとコードに日本語の美しさを感じる心の機微が描かれた歌詞。松本隆、呉田軽穂のコンビ曲は今更僕が語るのも野暮なほどの作品ばかりです。


なるべく音数少なく余白が残るアレンジと原曲にはないリフやフレーズ、ギターソロなんかも入れちゃいました。聖子ちゃんを、僕が歌います(笑)。ちょっと暑苦しいかもしれませんが夏を感じて頂けたら嬉しいです。

 
 
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松田聖子「渚のバルコニー」(9th Single / 1982年4月21日発売)
作詞:松本隆
作曲:呉田軽穂
編曲:松任谷正隆
高橋 圭:Vocal,Chorus,Guitar,Keyboard,All Other Instruments, Programing, Mix,
Mastering,Music Video Direction
Recording & Mix,Mastering Studio:laugh(rough) return studio

 
 
 
 
 
お知らせ



その1:高橋 圭 新曲「ひまわり」絶賛配信中! ダウンロード、サブスク配信楽曲に歌詞が付きました!(一部サービスを除く)
▼「ひまわり」配信サイト一覧


その2:Serendipity「潮騒」YouTubeにてMV公開!
2020年発売予定、彼らのアルバム「HOME」収録曲「潮騒」にLeft E.Guitar、E.Bow、Organ、Co-Arrangerとしてレコーディング参加しました。

▼Serendipity/ 潮騒[Music Video] YouTube

 
 
 
 
 


 
今回用プロフィール
高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始。2枚のシングル、1枚アルバムをリリース。2016年活動休止。演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けた意欲作。アルバム『RADIO WAVES』、シングル『ひまわり』共にApple Music、Spotifyなどで配信中。
お仕事依頼はTwitterからお待ちしております。Twitter:@zazamino

イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
第23回マイフェイバリットエモー ショナルソング 10選」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第25回「『ねぇ、できちゃった』のコーナー夏の特別編! 新曲「ひまわり」セルフライナーノーツ」
第26回「ニッポンの偉大なギター名盤10選」