はい、そんな訳で始まりましたGAL Radio。今回でこの連載も丸2年。いつもありがとうございます。まだまだ書きたいテーマや皆さんと分かち合いたい音の魅力が沢山あるので是非今後ともよろしくお願い致します!


さて、今回は4月22日にリリースされたTRICERATOPS・ボーカルギター、和田唱さんの2ndソロアルバム『ALBUM.』についてお話します。大変な状況ですとどうしてもシリアスな気持ちにもなったり、楽しむこと、笑うことをついつい忘れがちだったりします。だからこそ今回のタイトル、笑顔でいることの大切さについて今作から紐解いていきたいと思います!


今年の一発目TRICERATOPSとリフについてご紹介した回も併せてご覧ください。
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」

 

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●心という名の宇宙を旅するアルバム



和田さんのメロディーメーカーとしての魅力を存分に味わえる実にバラエティに富んだ作品。アコースティックギターから始まり吉田宇宙ストリングスさんの壮大な旋律で一気に星空が広がるような1曲目「ココロ」、心とは何かを問いかけられるハッとする歌詞からアルバムの幕が上がりリスナーそれぞれが自分の心の中へと潜り込んでいきます。ベースリフとハンドクラップが冴え渡るダンスナンバー「シャンデリア」、横揺れのスローテンポとファルセットに実は今作で唯一のエレキギターソロがパッションを感じさせる「世界が変わったアフタヌーン」、ボイスエフェクトが効果的な「Game E」、大切な人との物理的なお別れからそれでも魂は死なないと教えてくれる名曲「さよならじゃなかった」、異国情緒溢れるマンドリンの音色が煌く「ドルフィン」、Daft Punk「Get Lucky」を彷彿とさせるシングルコイルのカッティングとエレピのサウンド、かなり攻めた歌詞(特に2A)がセクシーな「薔薇のつぼみ」、ディズニーに造詣の深い和田さんらしいタイトルの「Once Upon A Time」、サビのベースラインのスタッカートが絶妙な個人的アルバムリードキラーチューン「アイ」から「Heiki Heiki」でお母様の陽気さを歌い、ラストは藤井フミヤさんに提供した「ネオン」にも通じるアコギが美しい「笑顔でいるのが僕の役割り」へと向かう曲順にもドラマを感じます。

 
 
 
 
●アートワーク


今作のグッとくるポイントはアルバムジャケットにも。
 
写真1
 

幼少の唱少年と母平野レミさんの2ショット。父・和田誠さんが撮影された1枚。


過去の写真を振り返りルーツを辿るような、だけど昔を懐かしむだけではなく聴き終わった時にアルバムを閉じ、目の前にある景色を抱きしめたくなるようなメッセージも込められているマテリアルならではのアートワーク。


マネージャー大森洋さんのジャケットに関する素敵なレビュー(4月21日更新分参照)はこちら。
http://triceratops.net/news


アートディレクション、デザインはYouTube和田唱自由研究の映像も手掛ける福見敬太さん(KTAGRANTDESIGN)

 
 
 
 
●サウンド



①アレンジ
ストリングス以外の楽器を全て一人で演奏するマルチプレーヤーっぷりを堪能出来るのも今作の魅力。TRICERATOPSはギターリフやご機嫌なロックのイメージが強いですが(勿論ピアノがメインのバラードやアコースティックアレンジなどテクニックに裏付けされた曲調は実に幅広いのですが)アンチセオリーな精神でチャレンジし続けてきたバンドの歴史があるからこそ、王道なコード進行でもメロディーの芯の強さが真っ直ぐ届く威力を発揮しています。それでいて洋楽フリークな彼らしい音になっているバランス感覚は流石です。


リフって何? という方に、和田唱さんのinstagramでご本人が弾くギターリフまとめ映像をご覧ください。

 
 
 
 

②音質
ギターのタッチのニュアンス、ベースのスライド、楽器として一番いい鳴りという旨味がクリアに録音されています。サウンドの鍵を握るのが、つい先日ストリーミング配信も開始されたTRICERATOPS「SONGS FOR THE STARLIGHT」でもエンジニアとして参加している森川裕之さんが今作もサウンドプロデュース、プログラミングを担当。彼と共同作業された音像はお米の炊き具合、塩加減、水、形、大きさにこだわったいわば塩おむすびのよう。シンプルだからこそ音の粒立ちが気持ち良い絶品塩むすびに出会ってしまったような。。。伝わります(笑)?


森川さんのソロプロジェクト、organic stereo “Let Go”。


森川さんとの2ショットや、その他和田さんのInstagramではアルバムレコーディングの風景が多数楽しめます。

 
 
 
 
●ツアー映像作品から見た今作の魅力


 
写真2
 

CDと同時発売された初のLIVE Blu-ray『一人宇宙旅行〜ライブ・イン・ブリッツ〜』からも今作の魅力に迫ることが出来ます。ギター、ピアノ、ループペダルを駆使して歌うソロ曲やトライセラナンバー、提供曲のセルフカバーなど、四方をオーディエンスに囲まれた特設ステージでたった一人で行ったライブの模様が収録されています。タイトルがいいですよね。音楽は心の旅で、想像することで宇宙へも行ける手段のひとつなんだと。その旅の道中から帰ってくるまでの軌跡がこのアルバムでもあるように思えます。


個人的ハイライトはギタリスト和田唱さんとしての一面が味わえる往年のスタンダードナンバーをカバーするコーナー。「Mr.Sandman」「Where Is Love」を弾く笑顔が楽しそうで、弾いている様はまさにギター少年・和田唱くんと言ったところ。年上の大先輩ですが本当笑顔が可愛いんです(笑)。


bonus映像ではスタジオでのリハーサル風景を収録。本編より先にbonusから見るタイプのファンの一人ですが、バンドではMartinやFenderなどの煌びやかな音色のギターが多く使用されていましたが、近年はGibsonのアコギやGRETCHのtennesseanなど割と太くて無骨な音を出すギターがセレクトされていてバンドと弾き語りのサウンドの聴き比べも楽しみ方の一つです。


「Pure Imagination」ギターカバーはこちら(和田唱さんinstagram)

 
 
●まとめ



日々を前向きにしなやかに生きていく知恵や捉え方、心の持ちようを提示してくれるのが和田さんの歌詞。今作では11曲中6曲で「笑顔」や「笑う」というフレーズが出てくるのも今の彼の想いが詰まっている気がします。


特に印象に残った曲がアルバムの最後に収録されている「笑顔でいるのが僕の役割り」は物凄くパーソナルな歌だからこそそこに宿る思いの普遍性を共有出来ます。


良し悪しではなく、人が作っている以上音楽にはその人の人間性が出る部分があると思っています。勿論人間性を超えた作品も沢山あるけれど、和田さんの音楽はとにかく愛なんです。先ほどおむすびの話をしましたが、一番美味しいおむすびはお袋が握ってくれたのだったり、大切な人の愛情が込められているものだったりします。


音楽が楽しくて仕方ない!そんな愛が込められた彼の音は何度でも心をほっこりさせてくれるし、彼の作品を聴き、ライブに行きたくなる理由はそこにあります。


自分が笑顔でいること、素直に楽しむ心をそれぞれが持つことでそれぞれの世界は少しずつ良くなっていくのだとさりげなく唱えてくれていると僕は思います。またライブでお会いできる日を楽しみに、僕も役割りを全うしていきたい。


最後に僕の幼少期の写真でお別れです(笑)。お体ご自愛下さいませ。

 
 
写真3
左は兄、右が僕です。

 
 
 
 
 
 
 


 
今回用プロフィール高橋 圭●1988年5月3日生まれ。2011年から作曲、ギターを務めるgood sleepsのALBUM『SIGNAL』はiTunes store、Apple MUSICにて配信中。Twitter:@zazamino
 
good sleeps
http://good-sleep.jimdo.com/
イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
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第23回マイフェイバリットエモー ショナルソング 10選」