「Better Together」のこころ
It’s not always easy and
いつだって簡単じゃない
Sometimes life can be deceiving
時には人生に裏切られることもある
I’ll tell you one thing
でも1つだけ言えることがあるよ
It’s always better when we’re together
僕らはいつだって一緒にいるほうが良いってこと
2018年のフジロックフェスティバル。
お目当のアーティストを観に行く途中、グリーンステージでジャックジョンソンというアーティストがこの歌を歌っていた。
タイトルは「Better Together」ジャックは世界的に有名でもちろん名前を知っているシンガーだったし、アルバムも数枚所持していたけど、個人的には当時音楽的に流行していた風通しの良いサーフ系ミュージックの一つとして“お勉強”に購入したものだった。
もう15年くらい前に出会った作品たちだったし、その後彼の音楽に自ら耳を傾けることはなかったけどたまたま立ち寄ったこのステージで、しかも「ラストソング」と言って歌い始めたメロディが僕の心に吹き抜けた。
一緒に観ていた妻も帰り道に今日どのステージが一番印象に残った? という話をしていて、たった一曲のジャックジョンソンの歌をあげた。
近くで踊っていた外国人の女の子たちが楽しそうに大合唱しているのもすごく良かったし、樹々に囲まれたステージのバックスクリーンに大海原が映し出されてゆらゆら揺れているロケーションも素晴らしかったし、何よりTシャツ・短パン・サンダルで歌う飾らない彼の姿に色んな気持ちが許されていた。
彼の音楽と出会い直せたことは、今の僕にとってすごく大きな出来事だった。
ジャックは僕が追いかけていなかったこの数十年でアルバムをリリースし世界中をツアーする他にも、自身の活動の一環としてエコロジーや海洋プラスチック問題にも積極的に取り組み、地元ハワイでは奥さんのキムさんと2003年に学校とコミュニティの環境教育を支援する機関「コクア・ハワイ・ファンデーション」を立ち上げている。
「コクア」という言葉はハワイ語で協力・助け合いという意味を持つ。冒頭に挙げた彼の代表曲「Better Together」にも込められた「いつだって一緒にいる方がいい」というメッセージはジャックのライフメッセージそのものであるし、同時にそれはまさに今僕や僕の周りの音楽に関わる仲間たちが立たされている状況にも響いてくる表現だ。
音楽は一人きりだって生まれる。
一人きりだって歌は歌えるし、第一僕も暮らしの中のほとんどの瞬間一人で音楽を聴いている。
でも、そこには必ずその先の物語が付いてくる。
この歌を誰かに届けてみたい。この素敵な音楽を誰かと分かち合いたい。こんな素晴らしい音楽を生み出すあの人と同じ空間に行ってみたい。
音楽は人をひとり(パーソナル)にしてくれるけど、ひとりぼっち(ロンリー)にはしない。
世界中の人と繋がれる状況になった現代だからこそ、世界中の声が聞こえていた日々は今、苦しみや悲しみを多く抱くものに傾きつつある。
音楽や芸術文化にとっても難しい環境が周囲を取り囲んでいる。
まずは私に出来ることから。少しずつはじめていくことしか出来ないと思う。世界の最小単位である「家族」がちゃんと守られてこそ、そこから問題は一つずつ解決していけると思う。
僕はジャックジョンソンのお陰様で、「Better Together」という気持ちと出会い直せた。
ずっと前から生きてきて学んできたことだったけど、いつもいつも大切に出来てきたかというと胸を張れない…当たり前のことが人生では時に困難だ。
音楽はいつだってそんな“当たり前の大切な気持ち”を色とりどりの方法で僕たち私たちに気づかせてくれた。
今はきっとそんな音楽を守るべく、我々が音楽によって育てていただいた豊かな心で、想いやりを持って生き抜く時だろう。
ジャックジョンソンはどんな時でもその瞳を輝かせながら世界にアクションしている。
4月25日には自身の主催する『コクアフェスティバル 2020』のライブ配信バージョンを企画し、Stay Homeを呼びかける。
仲間のミュージシャンたちに実際に電話してブッキングしている様子がInstagramで更新されていたり、音楽だけでなくハワイの郷土料理を紹介するコーナーも設けるというからとにかく微笑ましく愛があって彼らしい。
コクアフェスティバルのオフィシャルホームページ
https://www.kokuafestival.com
Love is the answer
愛だけが答え
At least for most of the questions in my heart
少なくとも、僕の心に浮かぶ疑問のほとんどへの答えなんだ
さて、僕も日本という島国の中の小さな街に住むひとりのミュージシャンとして今出来ることは何かと考えてぽろぽろギターを爪弾いている。
ごめんなさい、ライブハウスというテーマとは少しずれてしまった。
しかし、僕が愛を持って思いっきり歌を歌える場所はいつだってそういう「Live」な環境だ。
いつだって一緒がいい。音楽と僕たちは一緒がいい。
だからこそ、ひとり × ひとりを支え合おう。
必ず僕たちの好きなあの空間は戻ってくる。
音楽はどこへも行かない。
藤田リュウジ●1985年大阪生まれ千葉育ち、ホタルライトヒルズバンドのボーカル。浄土真宗僧侶。