2010年に群馬県にて結成したロックバンド、Ivy to Fraudulent Game(アイヴィー・トゥ・フロウジュレント・ゲーム)。結成初期から作詞作曲を担当し、バンドの研ぎ澄まされた世界観を構築するDr.福島由也と、フロントマンとしての圧倒的な存在感と確かな歌唱力を兼ね備えたVo./Gt.寺口宣明という2人のカリスマを擁する4人組だ。2017年12月に1stアルバム『回転する』でメジャーデビューを果たし、翌年には若手バンドの登竜門である「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2018」にも出演。今年7月には自身最大規模であるZepp DiverCity TOKYOでのワンマンライブを開催するなど、着実に支持を獲得している。

 
 
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Vo. / Gt.寺口宣明

 
 

そんな彼らが9月4日にリリースした2ndアルバム『完全が無い』は、元来のバンドの強みである緻密な楽曲構成やサウンドメイクの面で音楽作品として高いクオリティを誇るとともに、衝動と理性が表裏一体となったような人間らしさも共存することで、楽曲の持てる求心力を最大値にまで高めた名盤だ。ところが福島が付けたタイトルは、作品の仕上がりとは裏腹に『完全がない』。概念的に名付けられたというこのタイトルについて、寺口はこう解釈している。


「素晴らしいアルバムができたと思っているんです。でも、“理想のものを作ったとしても、それが完全だと思えるのは一瞬なんですね。確かに完全だと思っても、その瞬間を越えてしまえば新たな理想や完全な形が見えてきて、振り返ってみれば完全ではなかったと思うことの連続である気がするんです、バンドって。思い描いていた景色にたどり着いたとしても、またさらに見えていない新たな景色の方を求めてしまうーーそういうことを表したタイトルだと思っています」

 
 
 
20190917_Ivy_2今作では福島作の楽曲に加え、寺口が作詞作曲を手掛けた「無色の声帯」(M6)、「Oh, MyGraph」(M7)、「模様」(M10)の3曲も収録されている。哲学的な歌詞世界を持つ福島の楽曲に対し、寺口の楽曲は福島が確立した世界観の流れを汲みながらも、〈師走の点線が降り出して / 指先の感覚がない〉「Oh, My Graph」、〈鱗の傷は / 光を受けて / 模様みたいに綺麗だった〉「模様」のように、脳裏に情景が浮かぶようなタッチの歌詞や、メロディアスな旋律など彼ならではの魅力も光る。2人のソングライターがそれぞれの個性を活かした楽曲制作をすることについて、バンドとしての可能性を見出すとともに、それが自分の担うべき役割だとも感じていると寺口は言う。
 
「世界観的に近くない言葉やメロディーが共存することがマイナスになってしまうこともあるけど、僕らにとっては可能性が広がると思っています。僕と福島で、タイプの違う曲が出来てくることで、バンドの音楽的な間口が広がって、今までIvy to Fraudulent Gameを聴かなかった人や、聴いてもあまり響かなかった人にも届くきっかけになるんじゃないかと思います」
 
 
 
ライブではオーディエンスを圧倒させるストイックなステージングが印象的な彼らだが、最近では少しくだけた表情を見せるようにもなった。というのも、これまで馴れ合いを懸念し、音楽以外の話をほとんどしなかったメンバー同士が、昨年のワンマンツアー頃から色んな会話を交わすようになり、お互いに肩の力が抜けたのだという。そうした関係性の変化も、ライブでの空気や温度に表れているようだ。
 
「今まで別にくだけるのが嫌だったわけではないんですけど、世界観を崩さないようにっていうのは頭のどこかにはあって、わりとクールに終わることもありました。でも今はもっと、全部見せていいというか、どこかをセーブする事の方が良くなくて、セーブしたまま終わるのは逆に不誠実な気がしています。その時、自分が思ったようにやるほうが真っ直ぐだし、楽しいっていうことをそのまま出した方が伝わるものもあるかなと思います」
 
 
 
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Dr.福島 由也、Vo. / Gt.寺口 宣明、Ba.カワイリョウタロウ、Gt.大島 知起

 
 
11月から2月にかけて今作を引っ提げたワンマンツアー「Ivy to Fraudulent Game One ManTour“One Complete”」が行われる。「とても素晴らしいアルバムができた」と胸を張れるからこそ、ワンマンという自分たちだけのたっぷりの時間の中で、より深い表現を届けようと意気込む。
 
「楽曲の中にある喜怒哀楽みたいなものを全部見せたいし、聴く人をいろんな感情にさせたいなと思います。音楽の“楽しい”って、“楽しい=楽しい”ではなくて、悲しい気持ちになったりズンと深く心に落ちるような感情になるようなことも含めて“楽しい”って言うんだと僕は思うので。そして、人の心の奥深くまで、最初に届くものってやっぱり歌だと思うので、僕個人としても何歌ってもちゃんと聴いてくれる人の心に入っていく、届く、そんな歌を歌っていきたいと思います」
 
 
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(取材・文:岡部瑞希 写真〈1,2,4枚目〉:郡元菜摘)
 
 
▼リリース情報

72667405_404889496842097_444521165151535104_n2nd Album『完全が無い』(2019年9月4日発売)

01.Carpe Diem
02.Memento Mori
03.blue blue blue
04.無常と日
05.真理の火
06.無色の声帯
07.Only Our Oath
08.Parallel
09.Oh,My Graph
10.模様
11.賀歌


【完全生産限定盤】CD+DVD ¥4,600(税別)VIZL-1620
【通常盤】¥3,000(税別)VICL-65228

 

▼ライブ情報
Ivy to Fraudulent Game One Man Tour “One Complete”
2019年
11月24日(日) 北海道 / 札幌 BESSIE HALL
11月29日(金) 石川 / 金沢 vanvan V4
11月30日(土) 新潟 / 新潟 CLUB RIVERST
12月8日(日)  宮城 / 仙台 darwin
12月15日(日) 香川 / 高松 DIME
2020年
1月11日(土) 広島 / 広島 SECOND CRUTCH
1月13日(月) 福岡 / INSA FUKUOKA
1月18日(土) 大阪 / 大阪 BIGCAT
1月26日(日) 愛知 / 名古屋 CLUB QUATTRO
2月1日(土)  東京 / Zepp Tokyo

▼オフィシャルサイト
http://www.ivytofraudulentgame.com
 
 
 
 
 
 


 
プロフィール画像岡部 瑞希●1992年生まれ、愛知県在住の会社員兼音楽ライター。名古屋の音楽情報サイト「しゃちほこロック」も運営。“自分の好きな自分でいる”をモットーと口実に、今宵もライブハウスへ。昂ぶる夜にピアノを叩き、3日に1回カレーを食べることで健やかな日々を送っています。Twitter:@momry1023