■「ようやく楽しいことが質も量も上回った」ドラマチックアラスカ、地元ワンマンで最高到達点


 

神戸出身の4ピースギターロックバンド・ドラマチックアラスカ。2010年にVo. / Gt.ヒジカタナオトとDr.ニシバタアツシを中心に結成し、2013年にCDデビューした彼らは2016年に現体制となった。ハイトーンで少年っぽい声色とキャッチーなフレーズの多さは、一聴するとポップな印象を受ける。だが歌詞には作詞を手掛けるヒジカタの抱える劣等感やジレンマ、怒りといった感情が多く含まれ、〈あんたの戯言もう聞き飽きた〉とか〈ロックでなしでなにが悪いか〉とか、歯に絹着せぬありのままの物言いが聴く人の心を揺さぶっている。2018年より地元神戸にて「アラスカナイズロックフェス」というイベントを主催しており、今年は来たる6月1日に開催を控えている。今回は、その主催イベントの告知という目的で全国10箇所で開催された「アラスカナイズカウントダウンパーティー2019」のフィナーレとなった神戸ワンマンライブの模様をお届けする。

 
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「2019年5月19日、神戸太陽と虎!帰ってきましたドラマチックアラスカです!」とヒジカタの威勢の良い挨拶から、切なくも力強い歌詞のストーリー性とメロディックなギターリフが特徴のアンセムチューン「東京ワンダー」で口火を切ると、たちまちOiコールがわきおこった。更にGt.サワヤナギマサタカとBa.タケムラカズキがお立ち台に飛び乗りスピード感のあるセッションを見せつけた「和心」、イントロが始まると同時に歓声が上がり、身を乗り出すヒジカタを後押しするように手拍子がわいた「マヤカシドリームランド」と序盤からアップチューンを連投。容赦なくフロアを煽っていった。オーディエンスも待ってましたとばかりに応え、「ニホンノカブキ」では「ヨッ!」、「ハッ!」という歌舞伎風の合いの手が、気持ち良いくらいにしっかり揃う。ワンマンならではの一体感は、全国で酸いも甘いも味わってきたツアーバンドのご褒美のようにも感じる。

 
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「ドラマチックアラスカのライブは本当に自由なんで、どうぞ好きに楽しんでください」と、ヒジカタはいつもの調子でオーディエンスに促しつつも、「でも、手拍子したほうが1.3倍楽しめるとも言われています!」と茶目っ気を覗かせ「人間ロック」へ。この曲は、己を突き通すドラマチックアラスカ流ロックンロールナンバー。〈不器用でも僕は自由だ〉のフレーズに続けて「すなわち!?」とヒジカタが投げ掛けると、「人間ロック!」の声がフロアから力強く飛び交った。中盤に「みんなで歌える曲を」と披露された「星になる」では〈キラキラ光る星になる〉というフレーズをオーディエンスらが合唱。この日ライブ全体を通して、ヒジカタは語り口調で歌詞を口にすることが多く、パフォーマンスというより、音楽を通して対話をしようというスタンスが終始見てとれた。そして、突き上げられた拳や弾む人波、響き渡るシンガロングは、彼らの気概に応える何よりのリアクションだっただろう。

 
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「バンドを始める前からずっと、周りと比べて自分なんて…って、劣等感やコンプレックスを抱えてました」と、ヒジカタが今日までの活動を振り返りながら口を開く。ドラマチックアラスカとは、なかなか試練の多いバンドだ。メンバーがまだ大学在学中にCDデビューし、年上のバンドの中に身一つで飛び込んだ。生きてきた時間、積んできた経験が少なければ、当然及ばないこともあるし、敵わないライブをする相手もいるだろう。でも彼らは「まだ若いからこのくらいで良い」とか「時間がないから出来なくても仕方ない」とか、若いことを言い訳にはしたくないと敢えて年齢は公表はせず、いつだって甘えなしで戦ってきた。そして、メンバーが突然の怪我により療養・脱退を余儀なくされた時も、悔しさをエネルギーに変えてたくましいライブを続けてきた姿を知っている。「丸8年続けてきてようやく、バンドをやっていて嫌なことより楽しいことが質も量も上回った。俺らじゃないとダメだって集まってくれるみなさん、バンド仲間、メンバー、支えてくれるスタッフと、みんなでバンドをやれているなと思います。喉がちぎれない限り、続けていくつもりです」。

 
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そんな決意表明に続けて演奏した「クソッタレセカイ」では、〈もしも僕1人いなくなったとして / 何も変わらずに廻るセカイなら〉と鬱屈としていた過去の自分に、今の自分を見せつけるようでもあった。そして、昂ぶる勢いそのままに「いつだって今が一番かっこいいと思ってやってきた! 5月19日、今日が俺たちの最高到達地点です!」と「TEPPEN」を披露。明日、来月、来年はもっともっと上のステージを目指して彼らは行く。〈TEPPEN 超えてやんよ〉というフレーズが、そのすべての気合いがぶちこまれているかのように轟いた。

 
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いつまで経っても丸くならないなあと思った。そんな姿を人は不器用だというかもしれないし、彼ら自身そう歌っている。でも不器用だっていいじゃないか。ネガティブでときに攻撃的な感情も、音楽になれば一つの武器だ。歯の浮いちゃうような甘いセリフより、使い古した正論より、今をがむしゃらに生きる人間の血の通った言葉だからこそ、指先一つのダウンロードではなく、こうして顔と顔を突き合わせて分かち合いたいと人々が集う。彼らは最後に「悩んだり困ったりしたら俺たちのこと頼ってください。疲れたところ、全部補充してライブハウスから出してあげる。だから、またここに帰ってきてください!」と言った。営業向けの台詞なんて持ち合わせていない彼らだから、ひたすらに頼もしいじゃないか。どうかそのまま、突き進んでいってほしい。

 
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写真=竹本みずき instagramTwitter
 
 
 
▼セットリスト

01. 東京ワンダー
02. 和心
03. マヤカシドリームランド
04. ニホンノカブキ
05. チャイニーズパッション
06. アイリッシュパブ
07. 人間ロック
08. 無理無理無理
09. 暴れだす
10. 怠惰故
11. みかんせい
12. 星になる
13. スノーメルト
14. どろどろり
15. 地獄片
16. 河原町駅
17. アレシボ・メッセージ


18. クソッタレセカイ
19. TEPPEN
20. ファイナルフラッシュ
EN1. for you!!
EN2. リダイヤル

 
 

▼ライブ情報
「アラスカナイズロックフェス2019」
2019年6月1日(土) 神戸Harbor Studio
出演:ドラマチックアラスカ、パノラマパナマタウン、魔法少女になり隊、Bentham、Half time
Old、Halo at 四畳半、ircle
チケット: http://www.ldandk.com/dramaticalaska/alaskanize/


▼オフィシャルサイト
https://dramaticalaska.com

 
 
 
 
 
 


 
プロフィール画像岡部 瑞希●1992年生まれ、愛知県在住の会社員兼音楽ライター。名古屋の音楽情報サイト「しゃちほこロック」も運営。“自分の好きな自分でいる”をモットーと口実に、今宵もライブハウスへ。昂ぶる夜にピアノを叩き、3日に1回カレーを食べることで健やかな日々を送っています。Twitter:@momry1023