《枝折(しおり)とは、道しるべ、手引きという意味です。私の人生は、常に「本」が伴走してくれています。けっして、道に迷わぬよう。今回の連載より、自分の人生に影響を与えてくれた本の紹介と人生のエピソードをエッセイとして書いていきます。》
■岡村靖幸『結婚への道〜迷宮編〜』(文藝春秋)
永遠に続くと思ってた。続いて欲しいと思っていた連載が終わってしまった。マガジンハウスの雑誌GINZAで連載されていた岡村靖幸「結婚への道」。2012年から足かけ6年も続いた、あの岡村ちゃんが「結婚」をテーマにあらゆるジャンルの有名人の方たちにインタビューするというもの。この度、連載終了から月日が経ち、待望の単行本化となり発売された。
岡村ちゃん=「結婚」って、とても掛け離れているし、
「えっ? 岡村ちゃんって結婚願望あるの?」ロマンスの探求者じゃないの!? とギャップにやられ、毎回楽しみに熟読した。
今回の迷宮編はパート2。前作に続いて読み応えのある内容で、ページを捲る手が止まらずアッという間に読んでしまったのだが、全然書評が書けない!岡村ちゃんが好き過ぎて、思いが高まり過ぎて、おススメポイントをまとめきれないのだ。
岡村ちゃんは、優しい。この優しさに、もちろん爆発的な音楽の才能に、私は人生を救われた一人だ。そんなベイベ達は山ほどいるのだろうが、本当に辛くて、悲しくて、どん底な時、岡村ちゃんの音楽が私を救ってくれたと断言できる。今、生きていられるのは岡村ちゃんのおかげであると言っても過言ではない。
この本を読んで再確認したのは、岡村ちゃんは、真の「フェミニスト」であるということ。結婚をテーマにしたら、男と女は対立的になりがちだが、「男だから女の気持ちはわからない」とは言わないし、かと言って「女の気持ちがわかる! 俺は」なんていう強引さもない。女の気持ちに寄り添ってくれるのだ。この温度感が心地よいと対談相手の方も感じてるから、本音を話してくれるのだろう。あらゆる人に対してフェアだ。全ての対談者の下調べもかなりしていたそうだ。もはや、第2の阿川佐和子さんになれる気すらしてくる。どこかの週刊誌でやってくれないかなぁと期待している。
肝心の岡村ちゃんの結婚について、結婚を勧める人、否定派、子供は持った方がいい派、多数の意見があった。
連載当初、結婚にチャレンジしたい! と意気込んでいた岡村ちゃんも、『結婚したいという渇望はあるけれど、なにがなんでも、とは思っていない』という結論を導き出しつつある。
『どういうカタチであれ「幸せであればいい」と思うようになりました。結婚していても幸せじゃない人はいるし、カタチじゃなくても幸せな人もいる』と。
最後まで読んで、自分でもびっくりするのは、肝心のお相手が全く想像つかないということだ。岡村ちゃんは、全く自分の話をしていない。皆様、興味津々に聞いてくれているのだが、はぐらかしがうますぎて、全然プライベートがわからない謎のままで読み終えてしまった。
岡村ちゃんには、絶対に「幸福」になって欲しい。いまも幸せそうだけど。でも、愛に溢れた生活をしながらも心の葛藤や苦しみ、社会のひずみ、人間の陰の部分をこれからも表現して欲しい。欲張りですみません!
最後に私が今回、個人的に一番参考になった回を紹介したい。映画監督のマイク・ミルズさんとの対談で、
『結婚はロマンスじゃない。ロマンスが終わったあともいい友だちでいれるかどうか、それが夫婦なんだ』
というお話。自分が結婚してみて、ものすごく共感できるようになったけど、岡村ちゃんにはロマンスの連続で生きていて欲しいのだ! 恋ばかりして、破れて、悶々として欲しいと望んでしまう。そう思うとやっぱり結婚は難しいかなぁと、いちベイベとしてはどうしても感じてしまうのである。