はい、そんな訳で始まりました~GAL Radio第5回。
最高に風情を感じる季節、秋が来たと喜んでいたのも束の間、
一気に気温が下がりすぎ、寒すぎる冬が訪れ、秋が過ぎさってしまいましたね。
残ったのはスギ花粉だけ。だんだんと厚着になっていく風情が…と日々秋を探しております。
前回のバンド特集、「とにかく楽しそう」という結論に至りましたが、
ナマモノだけにオチを「お早めにお召し上がり下さいませ。」にすれば良かったなと後から思いまして(※詳しくは第4回をご覧下さい)、その思いも乗せ、今回遂にこのテーマでお話します!!
初の試み、3ヶ月ぶち抜き企画に挑戦します!
テーマは国民的バンド、ミスチルこと〈Mr.Children〉についてです!
この記事を皆さんがお読みになる頃にはNew Album『重力と呼吸』がリリースされておりファンの耳は幸せを感じている最中でありますが、ファンクラブ会員でもありますわたくしが、ドン引きされるほど気持ち悪いくらいのミスチル愛を注ぎ、今までの、現在、そしてこれからの彼らをお伝え致します。
今月は「ミスチル=心の揺れ」
11月は「New Album『重力と呼吸』レビュー」
12月は「Tour『重力と呼吸 2018-19』横浜アリーナ ライブレポート」
の予定でございます。お楽しみに。
そもそも国民的ってどんな意味なのか考えてみるとよく分からない日本語で、国民誰しもに存在を認知されているほどの知名度的バンドという解釈でよろしいでしょうか? このくだりの着地点が見つからないのでこのままヒアウィーゴー。
まずは1曲お届けします。ダークな曲からスタートです(笑)。
Mr.Children「ニシエヒガシエ」/14th Single(1998年2月11日発売)
「ミスチル=心の揺れ」
1.切なさMAXメジャーセブンス
言わずと知れたミスチル、皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか?
明るく元気が出る爽やかな曲から極上のラブソング、ダークで激しい曲まで、
本当にバラエティーに富んだ楽曲で聴く人によって好みは様々です。
この幅にミスチルの表現してきたことが隠されているのですが、
個人的に一番好きなミスチルは「切ない曲」です。
それぞれ、アルバムの中盤に位置する楽曲の「渇いたkiss」(10th ALBUM『IT’S A WONDERFUL WORLD』収録)、「花言葉」(11th ALBUM『シフクノオト』収録)といった切ない恋愛の歌。その真骨頂「CANDY」(12th ALBUM『I ♥ U』収録)にエグいぐらい惹かれます(この曲だけでいつかお話したいくらいです)。秋から冬にかけてぴったりなナンバーですのでオススメ!
共通しているのはM7(メジャーセブンス)というコード(和音)が曲に使われていることです。これがなんとも言えぬ切なさを連れてくるんです。
短いサンプルを作ってみました。
CとC7
1回目に弾いているのがドミソのCメジャー(明るい印象)
2回目がドミソシでCメジャーセブンス(切ない印象)
このシが入ることで「何かが足りていない、心が揺れている感」を演出しているのです。
2.小林武史プロデューサーが操るシンセのセンス
長きに渡りミスチルをプロデュースしてきた通称コバタケ。彼はもう怪物です。
「イントロ大王」とも呼ばれるほど数々の名アレンジを残してきた音楽的才能に溢れた人物です。
彼の代表的編曲はサザンオールスターズの「真夏の果実」(28th single / 1990年7月25日)や「希望の轍」(11th Album・映画『稲村ジェーン』サウンドトラック『稲村ジェーン』収録 / 1990年9月1日発売)、ミスチルですと「Tomorrow never knows」(6th single / 1994年11月10日発売)、「Sign」(26th single / 2004年5月26日発売)なんかがブワブワ曲でしょう。
【※ブワブワ曲(造語):心が一気に高鳴る曲。一度聴いただけで、また何度か聴くうちに曲の意味や演奏に何かを発見した状態を指す。記憶が一気に蘇ったり心に風が吹く時の擬音ブワーッになぞらえて。】
ここで1曲、コバタケブワブワイントロをお聴きください。
Mr.Children「Sign」/ 26th Single(2004年5月26日発売)
小林氏はキーボーディストでもあり、アナログシンセという鍵盤楽器を用いたアレンジが特徴的で、独特の揺れを表現するにはぴったりの音色です。
特に「対旋律」という主旋律の後ろで鳴っている別のメロディが、曲を構成しているコードの気持ちいい(ここでは切なさを助長する)部分を奏でていることで、より曲の展開に深みを与えているのです。先ほどお話した切ないメジャーセブンス3曲にもやはりアナログシンセの音が入っております。
短いサンプルを作ってみました。
コバタケ風シンセ
ピアノのコードの上を泳ぐような浮遊感が、揺れを上手く表現してくれそうですよね。
現在ミスチルはセルフプロデュースで楽曲制作からライブまで活動しており小林氏は離れていますが、今までのミスチルがあったのは紛れもなく彼の影響が大きく、5人目のメンバーと言われるほどでした。だからこそ今4人が奏でる音に新鮮さや今までにない力強さも産まれていたり、それでいて小林氏的アレンジもあり、確実に彼らの中にその存在を感じることが出来ます。
3.メンバーのスタンスとバランス
ミスチルといえばフロントマンである桜井和寿さんのボーカルが目立ちますよね。
しかし、メンバーの演奏に注目すると歌や歌詞を伝えるためのプレイであると気付きます。これを聴き逃してしまうのは、チョコクリスピーやチョコワを食べ終わる頃のチョコ部分が溶けた牛乳を飲まないくらい勿体ないです。
ジャッキーチェン主演映画のNGシーン満載エンドロールを観ないくらい勿体ない。
締めのおじやのない鍋パーティーくらい。。。
実は彼らがバンドという生き物である所以はメンバー全員によるバランスで成り立っています。ギターの田原さんはレコーディングを「みんなで家を建てているような、ペンキで色を塗っているような感覚」とインタビューで話されていて、
ベースの中川さん、ドラムの鈴木さんもとにかく歌に寄り添う演奏を心がけていると答えていました。
楽曲至上主義とでも言いましょうか、曲の為にバンドがあるようなスタンスはそれぞれの音楽を愛する心から産まれるのでしょう。
そこに気付くとミスチルをより楽しめるのです。歌の後ろで物凄くいい演奏をしていることに気付けたらミスチルの楽しさ倍増です。
Mr.Children「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~」 / 9th Single(1995年8月10日発売)
まとめ
まとめに入る前にミスチル史上個人的ベストテイクの演奏を誇るこの曲をお聴きください。
「NOT FOUND」 / 19th Single(2000年8月9日発売)
美しい旋律を歪んだ音で演奏するこの曲では「昨日はあると感じていた愛が今日は見つからない」人の心の多面性、恋愛する男女の「揺れ」が描かれています。
100%善人や悪人がいないように、好きの中に潜む憎しみや人の心の中の汚い部分も見せるからこそ、美しさが浮き立つのではないかと思うのです。
今回お話してきた切ないコードや楽器の音色、歌詞の世界観で人の心の「揺れ」を奏で続けてきたバンド。全シングル、アルバムがサブスクリプション配信もされております。
是非今までを振り返りつつ、ミスチル史上最もエモーショナルとも言われてる最新の彼らが詰まったアルバムも楽しんで頂けたらと思います。
最後は最新曲でお別れです。来月はNew Album『重力と呼吸』のレビューです!!
Mr.Children「Your Song」 / 19th Album『重力と呼吸』(2018年10月03日発売)収録
高橋 圭●1988年5月3日生まれ。2011年から作曲、ギターを務めるgood sleepsのALBUM『SIGNAL』はiTunes store、Apple MUSICにて配信中。Twitter:@zazamino
good sleeps
http://good-sleep.jimdo.com/