ごきげんよう、イシハラです。
各地で花火大会やお祭りが繰り広げられる今日この頃。浴衣姿の老若男女が街を賑わす場面もちらほら見かけます。今年も花火大会に行き遅れた私ですが、人生で初めて浴衣でライヴを観てきました。そんな粋な体験をさせてくれたのは、7月に日比谷野音で開催されたライヴイベント『SHIKABANE』。
それはTHE BACK HORN、Nothing’s Carved In Stone 、9mm Parabellum Bullet、a flood of circleのフロントマンによる弾き語りの祭典。浴衣姿の出演者たちにならい、浴衣着用の来場者には特典が用意されるとあって、私もおいそれと浴衣を着て行った次第です。弾き語りというと静かで穏やかなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。けれどSHIKABANE然り、アコースティックギターと歌だけで挑む弾き語りにこそ、剥き出しの気迫を感じるのです。
だけどやっぱりバンド好きとしてはリズム隊が恋しい気持ちも捨てきれない。そこで注目したいのが、アコースティックライヴ。今、ロックバンドが相次いでアコースティック活動を始めているのです。フェス常連のバンドから、ベテランライヴハウスバンド、東京インディーズシーンまで。イチオシのアコースティックロックンロールをご紹介します。
■ロックンローラーよ、プラグを抜け
【NICO Touches the Walls】
「手をたたけ」「ホログラム」など、ポップなメロディーと小気味リズムを武器に数々のヒット曲をリリースし、夏フェスの常連でもあるNICO Touches the Walls。彼らは2011年発売のオリジナルアルバム『HUMANIA』の特典としてアコースティックセッションの模様を収録したDVDを作成。それを期にバンドも、ファンもすっかりアコースティックの魅力の虜になってしまったのだろう。その後、みずからをACO Touches the Wallsと称し、アコースティックアルバム『Howdy!! We are ACO Touches the Walls』を発売。その後、『OYSTER -EP-』(2017)と『TWISTER -EP-』(2018)では収録曲全曲をアコースティックアレンジしたボーナスディスクを封入するなど、今やNICOとACOは表裏一体の存在になっている。第一線を守りながら、音楽家としての探求心に従い続ける彼ら。これからもぜひ、アコースティックロックシーンを牽引してもらいたい。
公式HP:https://nico-m.com/
【フラワーカンパニーズ】
続いて紹介したいのは、各地のライヴハウスに貼られた「ハイエース」の歌詞のポスターでお馴染みのフラワーカンパニーズ。〈メンバーチェンジなし!活動休止なし!ヒット曲なし!〉という自虐的なキャッチフレーズを掲げながらも、結成26周年にあたる2015年に武道館ライヴを敢行するなど、泥臭くも実直な活動が支持を集めている。そんなライヴハウスバンドを代表する彼らが今月発売したのが『フォークの爆発第1集 〜29〜』というアコースティックセルフカバーアルバムだ。バンドのライヴでは演奏する機会が少ない楽曲をセレクトし、タイトルの通りキャンプファイヤーと共に聴きたくなるようなフォークアレンジを施した。今年のARABAKI ROCK FEST.18では井乃頭蓄音団とのフォークセッションステージも披露している。スイカに麦茶でも冷やして、懐かしい匂いのフォークサウンドで夏休み気分を味わうのもオススメ。
公式HP:http://flowercompanyz.com/
【platoon shepherds by The Doggy Paddle】
私といえばライヴハウスの現場から、ということで最後は東京インディーズシーンから新たなアコースティック旋風を巻き起こすべく誕生したばかりのユニットをひとつ。恵守佑太(Vo.Acoustic gt)と中村虎太朗(Cajon)による攻撃型アコースティック小隊・platoon shepherds。彼らは普段はThe Doggy Paddleというガレージを基調としたロックンロールバンドの一員として活動している。昨年よりヴォーカルの恵守が弾き語りでのライヴ活動を活発化させたことに端を発し、今年3月にはバンドセットによるアコースティックライヴを開催。その一幕で披露した2人編成での演奏をきっかけに〈小隊〉としてのユニット活動が始まった。結成お披露目公演ではThe Doggy Paddleの楽曲の他、先述のNICO Touches the Wallsのカバーや、早くもユニットオリジナル曲も披露。ロックの硬質さと、アコースティックならではのアンニュイなムードを併せ持つ彼らの魅力は、ぜひライヴハウスで。
公式ツイッター:https://twitter.com/PShepherds
■monthly Rock ‘n’ Roll vol.3 ― Billy Joel「Piano Man」
今月のエンディングテーマは、かの名曲ビリージョエルの「Piano Man」。ちょっと意外でしょうか。この曲の魅力はなんといっても、物語を紡ぐ力だと思う。ピアノとハープと、口数の少ない歌。たったそれだけなのに、情景が手に取るように浮かび上がる。古びたバーの扉の軋む音から、壁に染みついた煙草の匂いに、常連客達のおしゃべり。そこは多分、夢と現実の狭間なのだ。アルコールとピアノの音色のせいにして、酔ったふりができる束の間のモラトリアム。私がアコースティックライヴを聴き行くときの感覚も、ピアノマンの歌うバーに集う人と同じなのかも知れない。
イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。2016年11月号より『音楽と人』レビュー陣に加わる。野島伸司脚本のドラマ愛好家なので、ミネタ出演の「高嶺の花」が毎週の楽しみ。野島作品特有のあの抉られる感覚、久しぶりです。個人的には「リップスティック」「美しい人」が好き。野島作品は主題歌の選曲もとてもツボ。あ、これどこかで書きたいな。