4度目のはじめましてのご挨拶を。
皆ごきげんよう、イシハラマイと申します。
 
音楽についてあれやこれやと文章を書く物書きでございます。執筆活動とほぼ同時に始めたこの連載も、今回で4年目。つまり物書としても4年生になりました。小学校で言えば中学年ですが、大学生で喩えるならば最終学年。いずれにせよ、もう駆け出しという言い訳は通じないと感じる今日この頃でございます。
 
タイトルは今年度も変わらず「やめられないなら愛してしまえ」。
4年前につけたこのタイトルはたぶん、自分で自分にかけた呪いなんだと思います。良くも悪くも、書くことや好きな音楽から逃げないように私を縛る呪い。こんな風に書くと、何やら悪いことのようですが、優柔不断かつ決定力不足のにとっては、これくらいじゃないと効き目がないのです。あとはやっぱり言霊というか……、想いを言葉にすることで生まれる力もあるんじゃないかと思う次第。
 
そしてこの4年間で出会った人たちもまた“逃れられない愛しい何か”に囚われていることが多々あって。作詞、作曲、デザイン、写真、演奏、歌、絵、服飾……。表現は異なれど、各人が宿命みたいにそれを全うしようと日々奮闘している。そんな彼らの存在が、私の“やめられない”日々の支えでもありました。
 
と、いうことで今年度の連載はロックとカルチャーの交差点で出会った、ひとりの女の子のお話から。また1年、よろしくどうぞお願いします。
 
 
■創作系乙女奇譚~遠井リナ之巻~
 
 
rt①

RINA TOI Solo Exhibition”ONE-WAY TICKET TO THE MOON”より

 
 
黒の万年筆で描くモダン・ガールが象徴的なグラフィックデザイナー・イラストレーターの遠井リナ。
7月に発売されるシンガーソングライターの山﨑彩音のメジャーデビューアルバムのアートワークを担当し、俄然注目を集めている19歳の新進気鋭の芸術家である。先日、中野 mee Gallery Tokyoにて開催された彼女の個展に行ってきた。60’のワンピースを纏ったモダン・ガールたちは皆、強調された下睫毛の重みに引っ張られるように気怠い眼差しをこちらに向け、男たちは皆、世にも奇妙な風体をしている。シルハットの怪しげな紳士に、月に縄をかけ風船のようにして歩く男。星新一のショートショートにでも登場しそうな人物たちの絵が、モダン・ガールたちに紛れこむように潜んでいた。レトロで奇妙でロマンチックでデカダン。カフェというよりは煙草の煙が充満した純喫茶が似合う空気感が、私が彼女の作品に惚れた一番の理由かもしれない。
 
 
rt②

RINA TOI Solo Exhibition”ONE-WAY TICKET TO THE MOON”より

 
 
遠井嬢との出会いは、GLIM SPANKYとファッション誌の『装苑』がコラボレートして開催したイベントだった。お互いイベントでカルチャーなアドレナリンが大量放出されていた所為か、初対面にも関わらず音楽とカルチャーについて熱く語り合って意気投合したのを覚えている。そして私にとって音楽が書くことへの原動力だったように、彼女の創作と音楽もまた、密接な関係にあったのです。「音楽があれば絵がみえるし、絵があれば音が聴こえて風がふく」と彼女は言う。影響を受けたミュージシャンとして挙げたのは、N’夙川ボーイズ、ザ50回転ズ、GLIM SPANKY。「そこから広げて、いろんな時代のファッション・生活・芸術・音楽・すべてのカルチャーから良いとこどりをしている」とのことだ。
 
 

 
 
個展を終えた彼女に「アーティストとしての野望は?」と聞いてみたところ「若者が熱ある時代をつくりたいし、それを引っ張っていくポップガールでいます。街で踊れるような」との返答が返ってきた。彼女との出会いをもたらしてくれたGLIM SPANKYがそうであるように、音楽家や芸術家が自ら他のカルチャーと手を組むことで生まれる爆発は、まだまだあるハズだ。そして願わくば彼女にその起爆剤の役割を託したいと思う。
 
 
rt③

RINA TOI Solo Exhibition”ONE-WAY TICKET TO THE MOON”より

 
 
▼遠井リナ
イラストレーター / グラフィックデザイナー
website http://rinatoi.com
 
2018.07.25 山﨑彩音メジャーデビューファーストフルアルバム METROPOLIS
アートワーク

2018.06.09-10 Solo Exhibition “ONE-WAY TICKET TO THE MOON”
2017.08 Web Magazine Fragments 連載ギャラリー劃桜堂 掲載
2017.08 第2回 オーガニックライフスタイルEXPO 株式会社Will Be There Web Magazine Fragmentsブース壁面イラスト
2017.08 Parts Performing Arts パーツ・イシバ独演会「夢見る魚」 ポスターイラスト・デザイン
2017.02 文京区民参加オペラ CITTADINO歌劇団 第17期生公演ポスターイラスト
2016.12 劇団東京人形夜(現:Parts Performing Arts) リリオdeパントポスターイラスト
2016.10 劇団東京人形夜(現:Parts Performing Arts) ふしたのぱん♪ポスターイラスト
2016.09 おおしま手作り絵本コンクール2016金賞・富山県知事賞受賞
 
 
 
■monthly Rock ‘n’ Roll vol.1 ― GLIM SPANKY「美しい棘」


 

 
今年度も引き続き、最後はコラム内容に沿った曲を1曲紹介して終わりたいと思います。まずは動画を再生して、残りの文章を読んでいただけたら幸いです。今回はやはり私と遠井嬢をつないでくれたGLIM SPANKYを。先述のイベントで流れたのがこのミュージック・ビデオでした。これは実体験も含めて……なのですが、何かひとつ信念を持って生きる道を選んだ人は、そうでない人よりも多くの孤独を経験すると思うのです。だけど、そうまでしても愛したいものがある。この曲は、そんな棘の道をゆく乙女たちの誇りの歌。新たな1年を始めるにあたって、確かな道標となる曲を選びました。
 
 
 
 
 
 


 
プロフィール用 イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。2016年11月号より『音楽と人』レビュー陣に加わる。4年目の「やめられないなら愛してしまえ」始まりました。また1年、よろしくどうぞお願いします!