■ジェーン・スー著『生きるとか死ぬとか父親とか』 新潮社


 
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まるで、自分のことのようだ。
そう思える本に出会えること、それこそ読書の最大の喜びである。
 
著者は、未婚のプロのコラムニスト、ラジオパーソナリティーで近年独身女性の気持ちを語らせたら日本一のジェーン・スーさん。私は、スーさんの文章のリズム感も好きだし、ラジオも毎日のように聴いている大ファンで、この本が発売されるのをずっとずっと待っていた。
 
『母は、私が二十四歳の時に六十四歳で亡くなった。明るく聡明でユーモアにあふれる素敵な人だった。(中略)私は母の口から、彼女の人生について聞けなかったことをとても悔やんでいる。父については、同じ思いをしたくない』
 
80歳の父、40代半ばの娘の二人の会話でこの本は構成されていく。二人が行くのは、大体、母の墓参り。帰り道のロイヤルホストで、父から人生をヒアリングしていく。
 
天真爛漫、自由で、モテる父のことで、沢山悔しい思いをしてきたスーさん。でも、事業が失敗してスッカラカンの父を決して見捨てない。家賃を払い、時に美味しい店に連れて尽くすスーさん。
 
私の父も、自営業で倒産してしまい、働かず、離婚して、家族から離れていって、ある日突然戻ってきて、でもみんなから恨まれず愛されていて、憎みたくても憎めないキャラな人。だから、娘のこの気持ち、母性本能をくすぐられるけど、「私は、娘だ!甘えるな」っていう感じの繰り返しが本当に理解できる。
 
父への愛憎と家族の裏表が描れていて、胸が苦しくなった。でも、親子なんだよなぁ。切れそうでも、切れない縁で二人は繋がってる。天国のお母さんは、この本が出版されて、きっと喜んでいるだろう。流産を何度も経験して、41歳の時に産んだ娘。スーさんが、二人から愛されて、大切に育てられてきたこともすごく伝わった。
 
家族のあり方は、多様化している。
未婚のプロのスーさんが、これから「結婚」「家族のカタチ」についてどう表現されていくのか、ずっと読んでいきたいな、聴いていきたいなと思っている。
 
 
 
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淡路島は、農繁期に突入。青空の下、収穫に皆さん忙しそうです。

 
 
 


 
uemura上村祐子●1979年東京都品川区生まれ。元書店員。2016年、結婚を機に兵庫県淡路島玉ねぎ畑の真ん中に移住。「やすらぎの郷」と「バチェラー・ジャパン」に夢中。はじめまして、風光る4月より連載を担当させて頂くことになりました。文章を書くのは久々でドキドキしています。淡路島の暮らしにも慣れてきて、何か始めたいと思っていた矢先に上野三樹さんよりお話を頂いて嬉しい限りです。私が、東京で書店員としてキラキラしていた時代、三樹さんに出会いました。お会いしていたのはほぼ夜中だったwと思いますが、今では、朝ドラの感想をツイッターで語り合う仲です。結婚し、中年になりましたがキラキラした書評を青臭い感じで書いていこうと思っています。