秋ですね。ロックンローラーの皆様におかれましては、革ジャンを着て快適に過ごせる貴重な季節をお過ごしかと思います。
 
突然ですが皆様、古い物はお好きですか?
 
アンティーク、ビンテージ、レトロ、洋館、ハイカラ、文明開化、旧字、古着、純喫茶。
 
こんなワードが出て来ようものなら飛びついてしまうのが私です。
ロックンロールとレトロ。この2つが自分の中の文化的価値観を構成していると言っても過言ではありません。先日、そんな私にうってつけのイベントが開催されました。
 
その名も「CASSETTE STORE DAY」。http://cassettestoreday.jp/
 
CASSETTE STORE DAYは“音楽フォーマットとしてのカセットの有用性を呼びかける国際的年次イベント”とのことで、2013年に英国でスタートし、2016年からは日本でも開催されるようになりました。簡単に言えば、カセットテープ盛り上げようぜ!ってイベントです。ストアデイ当日には、イベントに賛同した数多くのアーティストが作ったカセットがレコードショップの店頭に並ぶ、というもの。数年前から話題になっているㇾコートストアデイのカセット版ですね。
 
そこで、10月14日に開催されたCASSETTE STORE DAYを、ストアデイ参加バンドであり、過去にもカセットテープ音源をリリースし即日完売させたThe Doggy Paddle(ザ・ドギーパドル)と共に探検してきました!
 
 
■ロックンローラーは昭和レトロがお好き~The Doggy Paddleと行くCASSETTE STORE DAY~
 
 
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作品と記念撮影するThe Doggy Paddle 。HMV record shop 新宿ALTA店様ツイッターより

 
 
CASSETTE STORE DAYと言っても、どこかで大規模な即売会が開催されるワケではなく、各レコードショップがストアデイのコーナーを作り、カセットの販売を行う。その中心となるのが、ストアデイのために制作された作品なのだ。今回ガイド役を務めてくれたThe Doggy Paddleは、共にインディーロックシーンで戦う5組のバンドを招き『Cassette Hound』というコンピカセットを自主レーベルより発売。レコードショップを訪れると、ストアデイのコーナーには色とりどりのカセットがズラリと並んでいる。アンバサダーを務める初音ミクから、SCOOBIE DOに佐藤タイジといったファンクロック勢、若きピアノトリオOmoinotake、そしてThe Doggy Paddleのようなインディーズロックバンドなど。ジャンルもキャリアも様々なアーティストの作品が一堂に会しているのも、魅力のひとつである。
 
 
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HMV record shop 渋谷店様にて。カセットの品揃え、豊富でした!

 
 
公式ショップにはストアデイ期間以外にも常時カセットテープの販売を行っている店舗も多く、ご挨拶と記念撮影を終えるとThe Doggy Paddleのメンバーはすぐに掘り出し物探しに熱中。先日自宅のカセットデッキが壊れた私を横目に、昭和歌謡や往年のロックバンドの代物を次々と発見しお買い上げ。ちょっと待て、カセットデッキが壊れたくせに、ストアデイを楽しめるのか?とお思いでしょうか。そう、今や音楽はiPodやスマホで聴く時代。CDの再生環境ならまだしも、カセットデッキが自宅にある、という人は少ないでしょう。しかし、カセットの再生環境がなくとも、ストアデイは楽しめるのです。
 
The Doggy Paddleの『Cassette Hound』を始め、ストアデイの公式リリース作品の中には、音源をダウンロードできるカードが封入されているものもあり、カセットデッキ等がなくとも作品を楽しめる仕組みになっています。自宅にカセットデッキがある人も、外出先で作品を楽しむ際などは、ダウンロードカードを活用すればiPodやスマホでも再生可能に。なので来年のストアデイはぜひカセットの再生環境がない人も、お店に足を運んでみてください!
 
 
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diskunion新宿日本のロック・インディーズ館様にて。ガーランドが可愛い!

 
 
古い物が好きだし、なくなって欲しくはない、と日々思う。だからCDがなくなる論みたいなのも大反対だし、大嫌い。だけど、嫌だ嫌だと駄々をこねるだけじゃ、何も変わらないのもまた現実。動物の進化がそうであるように、何かが新しくなってゆくことには、理由があるから。たとえば明日から急にSuicaがなくなって切符だけで生活してください、って言われたら、それはもう不便で不便で仕方ない。たぶん、音楽もカルチャーもそれと同じなのだろう。手軽にすぐに楽しめるに越したことはないのだ。だからこそ、古き物にはより優れた処世術が必要となる。そう考えると今回取り入れられているダウンロードカードは、カセットが生き残ってゆくための命綱なのだと思う。
 
だけど、同時にこうも思う。古い物たちは、第一線を退いたからこそ、人を惹き付けるのではないか、と。人は生活にあまりにも密着したものは、道具としか考えられなくなる。愛着のある日用品もないではないが、やはり愛でるべきは“敢えて”存在するものなのだ。それは音楽であり、お気に入りの洋服であり、雑貨であり。生きていく上で必要不可欠ではないが、日々を豊かにしてくれる、かけがえのないもの。だからこそ、たとえば年に一度カセットを手にしてみたり、たまに紙の本を買ったり。毎日じゃなくて良い、ふとした時に、古き良きカルチャーを愛して欲しいと思う。そういう瞬間を大事にしてゆけば、古き良きものは、いつまでも愛され続けてゆけるのではないだろうか。ちなみに、今回一緒にストアデイをめぐってくれたThe Doggy Paddleのメンバーも、無類の古い物好きであり、音楽をモノとして売ることにこだわっている。それゆえ、配信限定でリリースを行った際には、レコ発ライヴの来場者特典として、紙ジャケットを配布したこともあった。ただ古くあることに固執するのではなく、新しいものを取り入れた上で、古きものを大切にする。そんな彼らのスタンスを、私はとても敬愛している。デジタル化も大いに結構。だけど、古き良きものも廃れることはあっても、それを愛する人がいる限り、決してなくなりはしない。そんな事を思った1日でした。
 
 
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【The Doggy Paddle】
左から村田 慎太郎(Ba)中村 虎太朗(Dr)恵守 佑太(Vo/Gt)横道 孟(Gt)

 
自主レーベルを立ち上げ、楽曲制作のみならず、各種アートワークも自ら手掛けるロックンロールDIY集団。2018年(戌年)は結成10周年を記念し、フルアルバムのリリース&TSUTAYA O-WESTにてワンマンライヴ開催!メモリアルイヤーに向けて、面白企画実施中。詳細はリニューアルしたてのレトロ可愛い公式サイトにて。
 
 

最新ミュージックビデオ「あなたに届け」※ストアデイ公式『Cassette Hound』収録曲

 
 
 
■monthly Rock ‘n’ Roll vol.8 ― エレファントカシマシ「RESTART」
 


 

 
俺は日本生まれの 夢見る男〉ミヤジにこんな殺し文句を言われたら、もうそれだけでお腹いっぱいだ。だけど、エレカシだって夢ばっかり見て来たわけじゃないことなんて、誰もが承知のことだろう。順風満帆万事快調ならば、あんなに切実な応援歌は歌えまい。なのにこんな風に歌うのは、彼がロックスターだからに他ならない。いくつもの眠れない夜と、数多の生みの苦しみと、消えない葛藤。たまにはそれを吐き出すのも良いだろう。でも、ミュージシャンのみならず、芸術を背負って立つ人間は、夢追い人の皮を被ってなんぼ。誰かに夢を見せるなら、まずは自分から、だ。来年5月、O-WESTでのワンマンライヴという大舞台に挑むThe Doggy Paddleへ、この歌を。
 
 
 


 
ishihara_2017イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。2016年11月号より『音楽と人』レビュー陣に加わる。実はThe Doggy Paddleのライヴを初めて観た時、ヴォーカルの恵守さんの歌声に、ミヤジを重ねた。場所は確か、下北沢のDaisy Barだった。演奏した曲全てがど真ん中にヒットして、とんでもないバンドと出逢ってしまった……と。エレカシの「RESTART」については発売中の『音楽と人』でもレビューしておりますので、ぜひ紙の雑誌を!