すっかり寒くなり、先日晴れて革ジャンを解禁しました。この秋の流行色は葡萄色だそうで、さっそくそんな色のマニキュアを買ってみましたが、手持ちのレトロワンピースとの相性が抜群です。ちなみに革ジャンとレトロワンピースの相性も抜群なので、淑女の皆さまにはこの秋のお洒落にぜひとも革ジャンを取り入れていただきたいものです。おすすめはショート丈のライダース(黒)ですが、葡萄色や煉瓦色と合わせるならば、茶色も良いかと思います。
■「ブルーを以て、青く在れ!」
色といえば、何かを選ぶときは、きまって赤を選ぶことが多い。スマホ、パソコン、口紅。あと有隣堂の文庫カバーも。そうやって、意識的に選ぶものは赤いのに、気付けば周りには青ばかり。
先日10代の頃からのホームタウン、横浜の駅に久々に降りたら「YOKOHAMA BLUE」と書かれたパネルが掲げられていて、街が青を大プッシュしていた。秋の気配漂う肌寒い日だったけれど、イヤホンからは流れていたのは「サマータイム・ブルース」。そう、ロックンロールといえばブルース。つまり、青だ。これが周りに青が多くなる大きな原因だった。戦友(と勝手に思っている)a flood of circleのいちばん新しいロックンロールの名前も「BLUE」ときたから、もう決まりだ。
それにafocの“青”はこの新曲だけじゃない。10周年記念ベスト盤『THE BLUE』(詳細はこちらのインタビューをぜひ)を皮切りに、彼らはバンドの10周年という節目を青という色に託した。独立し、新たに立ち上げた事務所の名前も「青」。ブルースはハッピーな生まれの音楽じゃないし、憂鬱な気持ちをブルーと言ったりもする。でもそんな英語の「ブルー」と、日本語の「青」はちょっとテンション感が違うように思う。日本語の「青」は「青春」に代表されるように、若さの象徴として使われることが多い。未熟者を表す「青二才」も、「青臭い」という言葉もしかり。そんなことを考えると、a flood of circleというバンドは本当に、青という色その物の様に思えてくる。さんざん憂き目を見てきた彼らにはブルーが染みついているし、それでも音楽そのものや自分たちのロックンロールの可能性を信じて疑わない無邪気な青さがある。だから彼らを観ていると、ブルーを知った上で青く在れることが、最強なんじゃないだろうか、と思えてくる。
ツイッターなどでもお知らせさせていただきましたが、先月号のRISING SUN ROCK FESTIVAL2016in EZOに引き続き、雑誌『音楽と人』で今月からレビューページの執筆をさせていただくことになりました。知人に会ってライジングの感想をもらう度、調子に乗って「次の野望はレビューページですよ。ふふふ。」なんて言っていたら、まさかの現実になりました。決まった途端、有頂天≦プレッシャーというライジングの依頼を受けた時と同じ状態に陥りましたが、やっぱり嬉しい。そして念願の初レビューで取り上げた作品のラインナップも、意図せずだけれどやっぱり、ブルーだったり青かったりする作品ばかりになった気がします。どんなラインナップで書いたのかは、ぜひ本屋さんやCDショップで『音楽と人』を手に取ってチェックしてもらえたらと思います。
でもその中でひとつだけ。そのものずばり『BLUE』というタイトルを冠したアルバムを発売したバンドがいたので、ちょっとご紹介を。
ORANGE POST REASONはこの春上京したばかりの長崎出身の4人組ロックバンド。いざ全国区!と、みなぎる「青さ」の中にも、翳りみたいに哀愁の「ブルー」が漂っている。洗いざらしのTシャツみたいにまっさらで、ちょっとゴワついてる感じに若さが出ていて良いなあ、と。新参者の青二才(ほんとは女性には使わなけど)同士頑張ろうぜ、という気持ちでレビューを書かせて貰いました。
考えてみれば9月の誕生石はサファイアだし、育った町は海のすぐ近く。生まれながらに私の側には「青」があった。そう思うと、今愛している音楽たちに出逢えたのも、もう運命のような気がしてくる。赤いものが好きなのも、青の生まれだからこそ、反対の色に対しての憧れがあるのかもしれない。
大人になって同じ仕事をずっと続けていると、青くなれる機会なんてなくなってしまうもの。だけど、ライター活動はまだまだ青さの連続で。二の足を踏んでしまいそうになりながらも、頭の隅にあるロックンロールの精神につき動かされながら大海原に何度も飛び込んでいく感じ。まだまだ、だ。でもそう言えることが、なんだか嬉しい。持ち前のネガティブ思想ゆえ、先のことを考えるとついつい「お先真っ暗だ!」なんて悲観してしまう。でもライター活動をしているといつも、フラッドの言葉を借りるなら「お先真っ青」。そういえば、上にリンクを貼ったインタビューで佐々木さんは、「音楽をやめる才能がない」「やりたいことが減らないから、どんどん情熱が増えて青臭くなってゆく」と話していた。まだ、この台詞を言うのは早すぎるけど。もうしばらく転がり続けていったその後でも、こんな風に青を漲らせていたいと思う。
■end “ROCK’N” roll vol.9 ― ASIAN KUNG-FU GENERATION 「或る街の群青」
やっぱり今回は「青」の曲を紹介したいのでASIAN KUNG-FU GENERATION の「或る街の群青」を。ORANGE POST REASONもアジカンの影響を受けているのだそうだ。私とアジカンの出会いは「君という花」。当時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。あのイントロと「アジアンカンフー」という言葉の整合性たるや絶妙かつ前代未聞だった。イントロフェチとしては「君という花」も勿論なのだが、この曲のイントロがたまらない。じんわりと音が滲んでいく展開が、夜から朝へと変わる空みたいに心許なくてあたたかくて、泣き出したくなる。なんだか久しぶりに『鉄コン筋クリート』が読みたくなった。
イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。の秋の革ジャン初めは、a flood of circleのツアー初日、新代田FEVERでした。新曲「FLYER’S WALTZ」は超破天荒で自由なロックチューン。固定概念なんて壊すためにあるんだ、って言われている気がした。そしてぜひ『音楽と人』のレビューお手に取ってご覧ください!よろしくどうぞお願いします!
イシハラマイ「続・やめられないなら愛してしまえ」
第8回「石狩賛歌」
第7回「たからものをあつめて」
第6回「現実主義者はロックンロールの夢を見るか」
第5回「愛と勇気の“貴ちゃんナイト”」
第4回「その眼差しに捧ぐ」―The cold tommy新体制を観た
第3回ジャンプ ザ ライツインタヴュー「ヒーロー・コンプレックス」
第2回「透明な熱が熟れるとき」
第1回「ロックンロールのそばにいて」