9月生まれの私は、夏にはちょっと乗り切れない。
9月生まれの私は、時々の台風の目に立ってる。
9月生まれの私は、月の歌が好きで。
9月生まれの私は、結構乙女。
今年も夏が、終わりました。季節の移ろいの中でも、秋はとりわけ強く夏の残像を引きずって始まる気がします。子供の頃もそう、新学期はいつも夏休み気分であくびをしながらなんとか間に合わせた宿題を出していた記憶があります。そして今は9月のはじめ。エアコンの効いた部屋で飲む冷たい珈琲がおいしくて、秋はまだ影もかたちもない。
だけど私は、9月3日生まれの自分を、絶対的に秋生まれだと思っています。どんなに暑くてもやっぱり9月は秋で、やっぱり夏とは違うのです。
海の側で暮らしているけれど、夏に海を訪れたのはいつが最後だろう。全く思い出せない。そんな調子で今年も結局一度も地元の海は見なかった。海も夏も、いつだって自分よりもいち早く楽しげに満喫している観光客で溢れかえる街を見てきたから。夏は自分の出る幕じゃないなあ、と思ってしまう。
それにそう、夏と言えばフェス。近頃は夏が近づくと音楽とは全く関係のないファッション誌などでも、夏の風物詩として取り上げられている。そしてこの「夏フェス」がまた、私と夏との距離を作っていた一因でもあるのです。
音楽ライターと名乗って文章を書くようになってから、孤独は減ったと思う。ブログとは違って、この連載含め今は文章の向うに待っていてくれる人がいる。それが嬉しかった。それに今となっては音楽と様々な関わり方をしている人たちが、周りにはたくさんいて。音楽は私の中で孤独の道連れから、大事な人たちを連れてきてくれるものになった。
それでも、なかなか足を運べなかった場所がある。最後の孤独が足を引っ張って、重い腰を挙げられなかった場所。それが夏フェス。それも大自然の中でキャンプするような類いの本格的な野外フェス。
まず辿り着くまでが遠いし。アウトドアな装備も一切持ってないし。そもそも体力が持つか心配だし。その他諸々。それで結局毎年参加を見送っては 人々のSNS を見て、なんとも羨ましく世知辛い気持ちになっていた。本当は私だってお花とかつけて浮かれたいし。だからどうせ今年も外野だろう。夏の訪れと共に高をくくっていた。が、しかし。
今年は行ってきました。それも野外も野外! 北海道の大自然! そう、ライジングに。
しかもなんと、私の愛読書『音楽と人』の取材です!
私の夏、2016年でようやく浮かばれました。
■「石狩賛歌」 ― RISING SUN ROCK FESTIVALレポ―ト後記
取り敢えず過去5年分くらいの音人を引っ張り出して読むことから始めたのだけれど、読み進めるたびに、事の重大さが身にしみてきた。それでも、この前上野さんも書いていたとおり、取り敢えずまずは「死なない」ようにと装備を揃えにかかる。
私含め、野外フェスが敷居が高いと思ってるい人は、少なからずこの装備問題があるはず。お金もかかるし、そもそも何を買っていいか分からない。そこで頼りにしたのが、以前GLIM SPANKYのレコメンドを寄稿したフェスサイト『Festival Life』。知人が運営しているサイトなのですが、基本的な持物リストから、オススメの化粧品までフェスに特化した記事が充実していて、助かりました。ライジングに限らず、フェス初参加の方は見てみると参考になるかもです。
そして今度は北海道在住でライジングの達人の友人に連絡。気候から見どころ、オススメのフェス飯までレクチャーしていただきました。イチオシの「生メロンソフト」が最高で。人生最後の晩は絶対コレにしようと密かに決意したくらい。あとはライヴ以外の見どころとして教えてもらった場所、TAIRA-CREWが素敵だった。
TAIRA-CREWはCandle JUNEさんがプロデュースするエリアで、森の中ぽっかりと空いた洞穴みたいなところを抜けると、ろうそくの灯がゆらめく幻想的な空間が広がっていたのは驚きでした。とにかくライジングはライヴが行われるステージ以外にも楽しい要素がたくさんあって。それを見てまわるだけでもワクワクしてた。
肝心のライヴについては現在発売中の『音楽と人』をお手に取っていただければと思いますので、ぜひ本屋さんにいってみてください! エレファントカシマシ、大黒摩季、My Hair is Bad、大トリのBRAHMANに焦点をあてて、ライジングの2日間を私なりに書ききりました。会場の様子や、出店しているお店のお話などライヴ以外の様子もレポートしているので、「ライジングってどんな雰囲気?」と思っている方にぜひ読んでいただきたいです。
ちなみに『音楽と人』に書いた、お花がいっぱいのお店はこんな感じでした。可愛い。
そして最後は完璧な日の出。2日間ともお天気に恵まれて、初ライジングは無事に終了したのでした。
だがしかし。ライジングの終わりすなわち、原稿の始まり。約8,000字という未知数をどう書ききるのか。約50時間という長時間をどう切り取るのか。文字通り悪戦苦闘でしたが、これもまた色々な人の支えがあって、なんとか無事に本屋さんに並ぶに至りました。
初の野外フェス、初のライジング。
最高でした。
2日間、会場内をほぼ一人で歩き回っていたけれど、不思議と孤独ではなくて。応援して送り出してくれた人たちが居たり、激励のメッセージが届いたり、現地の友人と久々の再開をしたり。なんだか逆に、いつも以上に周りの人のあたたかさに触れたような気がしました。装備も揃ったことだし、来年はもっと色んなフェスに行ってみたいな。
北海道・石狩の地まで連れて行ってくれた『音楽と人』編集部に感謝。
■end “ROCK’N” roll vol.8 ― Veni Vidi Vicious「Good Days」
ぱらぱらと、繋がりそうで繫がらない言葉たちが、パズルのピースみたいに散らばる歌詞。それがサビの〈グッド デイ イズ オーバー〉で全部浮かび上がって1枚の景色を作る。この歌との出会いはちょっと運命的だった。2013年の12月に東京下北沢のライヴハウスDaisyBarで行われたa flood of circle佐々木亮介氏の弾き語りライヴ。人生初の整理番号「1」を手にしていた私はマイクスタンドの真ん前の席に座っていた。そしてその日は佐々木氏とafocの元ギタリストDuranが知り合って初めて同じステージに上がった日だった。その凄腕を目の当たりにして、もっと前に彼らが出会っていたら、きっと一緒にバンドを組んだだろうな、なんて思いながら観ていたものだから、加入報せは驚いた。もちろん、その後の発表も。この歌は二人で演奏した曲ではないけれど、私にとって偶然が重なって奇跡が起きた時のテーマソング。どんなに愛おしくても、終わってしまう大切な日の歌。
イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。という訳で、今年初めのafoc×9mmのライヴレポートに続いて2度目の『音楽と人』です!現在絶賛発売中ですので、よろしくお願い致します!そして「Good Days」のところに書いた佐々木さんの弾き語りについて、気になった方はコチラをどうぞ。
イシハラマイ「続・やめられないなら愛してしまえ」
第7回「たからものをあつめて」
第6回「現実主義者はロックンロールの夢を見るか」
第5回「愛と勇気の“貴ちゃんナイト”」
第4回「その眼差しに捧ぐ」―The cold tommy新体制を観た
第3回ジャンプ ザ ライツインタヴュー「ヒーロー・コンプレックス」
第2回「透明な熱が熟れるとき」
第1回「ロックンロールのそばにいて」