突然ですが、蛍をみたことありますか?わたしはないんです。
くわしいことはよく分からないけれど、蛍って短い期間にしか光らないですよね?背中をぴかぴかと。
夏の風物詩である蛍を一度は見てみたいなあと思ってはいるけれど気づけば夏なんてとっくに過ぎて、もう季節は冬。
はあ、今年ももう終わりか、あっという間だなあ…なんて毎年思っているけれど
やっぱり今年もこの時期にはそんなことを思ってしまいます。
永遠ではない光。だからこそ感動するのでしょう。
もし蛍が毎日毎日朝も夜もおかまいなしにどこでもいたるところで光っているようじゃ、きっと人の心は動かせないですよね。
それに加えて「光」がポイントなのだとも思います。
「夏の短い期間だけ」という特徴で共通している昆虫にセミが挙げられますが、
彼らは割と煙たがられる対象になってしまったり。
やっぱり夜にしっとりと光る蛍にはとても魅力を感じてしまいますよね。本物の蛍はとっても美しいんだろうな。
蛍といえば、星のように人々を見つめ、語りかけるように音楽を奏でる、あるバンドがいます。
その名もhotal light hill’s band。通称ホタバン。
千葉県柏市で結成した男女ツインボーカルの5人組バンドです。
わたしはこのバンドのスタッフとしてとても近い位置で5人と関わっています。
ホタバンの特徴としてメンバー皆揃いに揃って演奏の技術レベルがとても高いことが挙げられます。
この年末には「LOVER SOUL fes」と題した毎年恒例のイベントを開催しました。
なんとこのイベントはソロアーティストを招き、ホタバンとの全曲コラボレーションで音楽をお届けするという演出なのです。
今回のゲストは、オトナモード高橋啓太さん、川上次郎さん、LOVEさんの三組。
どのアーティストもホタバンと過去にゆかりがある方ばかりで、人と人とのつながりを感じられる共演でした。
ステージで披露されたのは全23曲。
ボリューミーな内容でしたが、ホタバンの安定感のある演奏力と各アーティストの歌声と個性は見事な化学反応を起こし、
イベントは大成功で幕を閉じました。
そしてもうひとつの特徴はなんといってもツインボーカル。
藤田竜史の優しく語りかけるような歌声と、村上友香の変声期の少年のような歌声。
ふたりだけれど、まるでひとつの魂の中に紛れ込んでいるふたつの心をあらわしているようで、
その声は自然に自分の身体の中に染みこんでゆくのです。
メンバーは皆本当に穏やかで優しいので現場はいつも和気藹々としています。
B型が多いことが関係しているのかマイペースな人間ばかりでホタバンの周りにはゆったりした時間が流れているので、
メンバーと一緒にいると日々のめまぐるしく過ぎてゆく時間の流れを少しだけ忘れてしまう自分がいます。
まるでどこかにタイムスリップしたかのように。
音楽性と人間性はイコールではないとよくいわているし私自身もそれは肯定するけれど、
ホタバンの音楽に関しては人間性が滲み出ているなあと感じることが多いです。
ドラムの小野ちゃん、ベースの大ちゃん、ギターの徳ちゃんの奏でる音はとても柔らかくしなやかで最高に癒されます。
またホタバンの歌の詞のほとんどはボーカルの二人が担当していますが、
竜史さんの詞にはよく「宇宙」や「夢」が、
友香ちゃんの詞にはよく「生き物」が登場することからも性格が表れていることが感じられるかと思います。
わたしはこんなhotal light hill’s bandが大好きです。
ずっと5人のそばにいられたら最高だし、彼らの生の音楽にいつまでも触れていたい。
彼らは「光」をわたしにくれました。
けれど同時に、「永遠じゃないんだよ」と教えてくれたのも彼らでした。
〈いつまでもきみとふたりで 笑ったりふざけあったり
できる約束なんて どこにもないから 今が溢れるんだ〉
〈いつかは消えるの 輝いた日々もいつかは思い出に変わるの
どうか今だけは 神さまお願い きみはぼくだけのもの〉
「アンドロメダ」という歌の詞です。
まだスタッフをやる前、この歌の冒頭の詞を初めて聴いたときわたしはとても衝撃をうけたのを今でも覚えています。
この人はなんて残酷なことを言うのだろうと思ってしまったのが正直なところです。
――きっとずっと続くと思っていた、大好きな人たちとの時間は永遠ではないんだ。
流れるように過ぎていく毎日。
当たり前だと思っていた日常も永遠ではないと気付いた瞬間、孤独を感じました。
しかしそれ以上に「今」への愛しさが溢れ、大事なものをもっと大事に思えるようになりました。
ホタバンにはRAVEという藤田竜史と徳田直之が所属していた前身のバンドの存在があります。
他のメンバーも皆、各自所属していたバンドがあり、それぞれ深い歴史を刻んでいったのだと思います。
そしてこの「hotal light hill’s band」はその集合体。
このバンドの音楽は今までの経験を物語る重みを感じます。
そこに今のホタバンの5人のあたたかさがプラスされて、まさに蛍のような柔らかい光を万遍なく放出するのです。
そんな人間達が作り出す音楽だからこそ深く重く、身体中に『言葉』が響くのではないでしょうか。
来年の夏こそ本物の蛍を見に行こうと思います。
どうか、蛍さん達。
優しい光でわたしを出迎えてくださいね。
撮影:中村雅也
おおくまあゆみ●1991年11月23日生まれ。21歳の大学生。千葉県在住。
ゆずのアコースティックギターの優しい音色と歌詞に魅了されたことをきっかけに音楽が好きになる。柏で結成まもないホタバンのライブを見てファンになり、2010年ボーカルの藤田氏に「度胸」を買われ物販スタッフを任される。2012年10月には下北沢basementbarにて初の自主企画イベント「憧れのまほうつかい vol.1」を開催。好きな音楽はhotal light hill’s band・ゆず・蜜・レキシ・長澤知之・夜明ケマエ・ザ・ラヂオカセッツ・andymoriなど。好きな作家はさくらももこ。好きなことは夜更かしと楽しいことを考えて実行すること。将来の夢はお金はありすぎずなさすぎず、両親のように素敵な家庭を築くこと。