今年で結成10周年を迎えたホタルライトヒルズバンド。今回はそのアニバーサリーとアルバム『SING A LONG』のリリースを機に、YUMECO RECORDSでメンバー全員のソロ・インタビューを敢行。彼らの活動拠点である千葉県・柏市で、それぞれに思い入れのある場所を巡りながら、朝から夕方まで1人ずつインタビューを行った。ちなみにインタビュー項目の中には、こちらから投げかけた6つの質問の中からひとつ選んでもらう“ランダム質問”のコーナーもあるのでそれぞれが何を選んで語ってくれたかにも注目。
5月某日、朝から柏西口第一公園で小倉大輔さんのインタビュー、柏駅東口ダブルデッキ広場にて小野田尚史さんのインタビューを終え、ライブハウス柏DOMeへ。このハコの店長さんでもある徳ちゃんこと徳田直之さんに取材しました!
(取材・文=上野三樹/撮影=藤田駿〈ARIGATO MUSIC〉)
ーーライブハウス柏DOMeはどんな思い入れのあるところですか。
「ホタバンでもよくライブをする場所なんですけど、もう2年ぐらい働いています。最近、『PAやらない?』って言われて『はい』って言って、『店長やらない?』って言われて『はい』って言いました(笑)。ここの社長は昔からお世話になってる方なんですけど『PA教えるからやってみる?』って感じで。ライブ中は音響と照明を1人でやっています。ステージに立つ側と、裏方と、やっぱり両方やってるからわかることってありますね。例えばステージの上手にいる人は下手の人の音って聴こえづらかったりするんです、だから上手の人の音を下手の人に返すように工夫したりとか。ただ今はコロナ禍で20時閉店、お酒も出せないので厳しいですけどね……」
――ホタルライトヒルズバンドのメンバーとして10年を振り返って思うことは?
「結構この10年はノンストップに駆け抜けてきたなって感じがしています。そんな中で自分自身の浮き沈みとかっていうのも特にないんですよ、割とずっとフラットな感じ。何かあっても次の日にはフラットに戻りますね」
――あのー、藤田くんと一緒にツイキャス配信をやっていて、彼には人の言葉の奥を更に知ろうとするようなインタビュー力があってびっくりしたんです。そしたら彼は、ホタバンのメンバーがみんなそんなに「自分はこうしたい」っていうのをはっきり言うタイプじゃないから、探るようになったと言ってて「なるほど」と思ったんですけど。徳田さんもあんまり強く主張したりとかしなそうですよね。
「探ってるのは、わかってますよ」
――あはははは!じゃあ言ってあげてよ(笑)。
「色々と言葉を投げかけてくれるのもリュウジらしいですよね。曲を作っていくときもメンバー各々、リュウジはこうしたいんだろうなというのも伝わってるし」
――小野ちゃんもだんだん会話が減って熟年夫婦みたいになってるって言ってましたけど(笑)。
「バンドってだんだんそうなってくるんじゃないですか。20歳くらいのバンドだったら、ツアーに出て、車の移動中でも楽しくワイワイしてるんだろうけど、そういうのもだんだんなくなってきますよ、周りのバンドとか見てても。でもそれが悪いというわけではなく、ホタバンはみんながみんなを尊重しあってる感じがするし、最終的にはリュウジがまとめにかかりますから」
――アルバム『SING A LONG』の制作中に感じたこと、作り終えての手応えは?
「ここ最近の曲作りに関して言うと、割とデモに毛が生えたくらいの状態でリュウジがみんなに提案してくれたりするんですけど。その段階で何となく景色と方向性が見えていて。そこで俺もこういうギターが合うかなとか浮かんでくることが多いですね。昔はもう『どういう感じにしていこうかな』ってところから始まってたんですけど。それこそメンバー5人の時は特に、音が多い、情報が多い感じだったので。リュウジとゆうかの2人が歌ってる時点で8割〜9割は完成しているので、それを120点、150点にしようとか思わないようにしていました。そこを目指すともっと自分が混乱しそうな気がして。そこまでやらないほうが、匙加減として良い気がしてましたね。だから完全に隙間産業ですよ(笑)。ちょっとした隙間に自分をどう突っ込んでいくかっていう感じでしたね、当時は」
――今はまた違う?
「そうですね。音数自体が前よりも全然少なくなったと思うんですよ。その分、自分の領域は広がった気がします。でもギタリストとしてのモチベーション的には、そんな変わってないですよ(笑)。もともとそんな、グイグイ前に出たいとも思ってないんで」
――ギタリストって前に出たいんじゃないですか(笑)。
「うん、大抵のギタリストは前に出たいと思いますよ(笑)。でも俺はそんなに出なくていい。まあ最初はやっぱりギターヒーローと呼ばれる人に憧れて始めましたけど。ハードロックから入ってガンズ(Guns N’ Roses)が好きになってギター始めたんで。でも性格的なところですかね、自分がステージに立つ時は目立ちたいとかそういう欲はそんなにないです。だから全曲にギターソロがなくてもいいし」
――「ダンデライオンの夜に」なんてカッコいいじゃないですか。
「あれはもう完全にLUNA SEAです(笑)。あれぐらいやっても、そこまでロックにならない。やっぱりホタバンのロックになるのがいいんですよね。ホタバンの枠に入ってれば何をやってもOKだと思うし、その枠って意外と大きいんですよ。そこがホタバンの強みですよね。みんな上手いし、何でもできる。でも無理はしない、のがホタバン(笑)。どんどん自然体になってきてるし、お互いのペースやスタンスが上手い具合に保たれ続けている気がします」
――ランダム質問はどれにしますか?
「『ホタバン4人の強みは?』を選んでいたんですけど、さっき話しちゃいましたね。逆に弱みは、その反対で何でもできちゃうからこそ色が薄まる部分もあると思うので、何でもできる部分をもっと極めていくべきだなと思います」
――こうしてライブハウスの店長さんをしていると、ライブを始めたばかりのバンドマンたちを見て懐かしく思うこともありますか。
「そうですね。自分もしょっちゅう、ライブハウスの音響さんに話しかけたりしてましたから。それこそ、DOMeの社長の南部さんに出会ったのが高校生の時で。音のこととかライブ終わりに聞きに行ったりしてました。『今日どうでしたか?』って。ステージの外がどうなってるのか、フロアの人たちにどう聴こえてるのかがその頃は全然想像つかなかったですから」
――今後のホタバンに期待していることは?
「一番思っているのは、長く続けていきたいですね。今まで10年間やってきたのと同様に、常にCDを作ったりライブをしたりっていう何か目標に向かって真面目に活動していきたい。若い頃は、お金を稼ごうとか売れたいとか思ってバンドをやってたと思んですよ。東京ドームでやりたいとか、スタジアムでやりたいとか。でもそれがどれだけ大変なことなのかが歳を重ねるごとにわかってきたし。でも、そうじゃなくてもバンドはやっていける。1000人ぐらいのホールで年に2回くらいやりたいなとか、そのくらいの地に足がついた目標設定でもいいかなと思っています。最近は色んな機材があるスタジオでレコーディングするだけでも楽しいですし、背伸びしすぎてもね」
次回はいよいよラスト! 藤田リュウジ氏(ボーカル・ピアノ・ギター)のインタビューを6月24日(木)に公開します。お楽しみに!
https://nex-tone.link/A00087134
上野三樹●YUMECO RECORDS主宰 / 音楽ライター / 福岡県出身。『音楽と人』『anan』『月刊ピアノ』などで執筆中。最近の趣味は、ピラティスと洋服づくりと韓国ドラマ。