はい、そんな訳で始まりましたGAL Radio。雨、雨、雨ですね。自宅がある鎌倉は海と山に囲まれている為それはもう湿度が高く、窓から見える景色はほぼ霧に覆われていてまるで水中にいるかのような湿気を感じながらこれを書いています。
さて、皆さんはギターマガジンてご存知でしょうか?
https://www.rittor-music.co.jp/magazine/guitar/
2020年7月号の『ニッポンの偉大なギター名盤100』と題した「ギタリスト555人が私的名盤を10枚セレクト、その集計結果をランキング形式で紹介!」という素敵な内容が話題を呼んでいます。音楽に造詣の深いYouTuberみのミュージックさんも今回の企画を取り上げております。
▼YouTube みのミュージック「一番ギターがカッコいい邦楽って何!?」
1位を決め優劣を付けるということではなく、多くのギタリストや音楽家がどんな作品に影響を受け人生の指針となってきたのか、555人分のルーツを辿る旅としての意味とリスペクトを込めた非常に魅力的な企画趣旨だと思います。ギターがイカした曲は数多ありますが名盤となるとアルバム全体としての世界観だったりも重要になってきます。今回は僕の独断と偏見で選んだギター名盤をこちらで10枚ご紹介致します!
*作品名 / バンド、アーティスト名 / ギタリスト名(敬称略) / リリース年の順で表記
1.『THE POWER SOURCE』 / JUDY AND MARY / TAKUYA / 1997年
世界一ぶっ飛んでいるギタリストTAKUYAさんのギターを聴くのが楽しいアルバム。僕自身も多大なる影響を受けており、氏のギターをコピーした方ならその凄さをより痛感されているかと思います。ボーカルYUKIさんのイメージが強いですが「主役は俺だ!」と主張するギターは唯一無二。このバンドをモンスタークラスへとのし上げた最大の要因はギターです。
6弦全フレットを縦横無尽に動き回るトリッキーなプレーが印象的ですが、「クラシック」のような普遍的なメロディーを産み出す作・編曲もセンスの塊で転調や理論を超越したその絶妙なバランス感覚はもう凄すぎます。(←語彙力)
イントロからアウトロまでもう一つメロディがあるような全てがソロとも言える「そばかす」グリスやカッティングを効果音的に使った「くじら12号」といったヒットソングからアルバム曲まで、聴くとタイトル通り凄まじい電圧で脳内がスパークするようなサウンドは石原軍団もビックリの大爆発に巻き込まれるような衝撃。のちにリリースされる歌うようなソロが印象的なロックバラード「LOVER SOUL」はアルバム製作時に存在していましたが収録すると完成度が高くなりすぎると敢えて外され次回作『POP LIFE』に収められたという逸話も。デビューからラストまで順を追っていくとモンスターバンドの進化がより楽しめます。
最近はYouTuberとしてもご活躍中のTAKUYAさん。ギタマガ編集部へ逆突撃取材というこれまた最高な企画を展開されております。
▼YouTube TAKUYAチャンネル
【ニッポンの偉大なギター名盤100】プロギタリストがギターマガジンに【突撃】逆取材してみた【#01】前編
2.『MONTAGE』 / YEN TOWN BAND / 名越 由貴夫 他 / 1996年
Mr.Children『深海』も録音された、ヴィンテージ機材が充実していることで有名なニューヨーク・ウォーターフロントスタジオにてエンジニア、ヘンリー・ハーシュと共に制作された作品。テンポを合わせるクリック無しで演奏のヨレやライブ感を出し、ヴィンテージ機材と16トラックアナログテープでざらっとした質感の音像が特徴的で、映画『スワロウテイル』の世界観を更に広げ現実との境目を曖昧にさせるような混ざり方。いまだに聴くと人間の心の揺れや内包されたおぞましさすら感じるその危うさにドキドキします。
演奏と喋る名越さんが観られる貴重な映像です。
▼名越 由貴夫 × FENDER AMERICAN ORIGINAL SERIES【デジマート・マガジン特集】
当時の貴重なお話や何故小林 武史さんが農業を手がけることに繋がっていくのかまで今作のアナログならではの音の魅力についても掘り下げられている興味深い内容です。
▼Mr.Children『深海』もYEN TOWN BANDも“ビンテージ”にこだわった小林 武史が偏愛する「アナログ感」朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/and_M/20190322/886783/
3.『Point』 / Cornelius / 小山田圭吾 / 2001年
全曲シームレスに繋がっていき「音に潜っていく」ような名盤。海馬に訴えかけるよう緻密な設計図が音の定位と構成とアイディアが脳内にペンキで色を塗られていくような感覚。リズムマシン、ドラム、ベース、環境音などをLとRに音を振り分ける定位を活かしたアイディア満載でコーラスが特徴的な作品ですがその核となる部分はギターの音が担っています。Wammy ペダルや心地よく歪んだノイズギターとアコギやエレキのクリーン、クランチといった軽やかな音をサンプリングしループさせていくサウンドスケープは圧巻。以前CHARA+YUKIさんアルバムの記事でもご紹介した日本を代表するエンジニア・高山徹さんが今作もMIXを担当しています。
▼コーネリアス『Mellow Maves』発売時エンジニア・高山徹インタビュー
https://ototoy.jp/feature/2017100901
4.『GLAD ALL OVER』 / 忌野清志郎&仲井戸“CHABO”麗一 / 1994年
同年8月日比谷野外音楽堂で行われたライブを収録したアルバム。前半はコーラスとリバーブがかった独特の浮遊感を醸し出すアコースティックギターでの弾き語り、後半から凄まじいメンバーのバンド編成と歯切れの良いエレキギターが登場します。同じ会場で2017年、TRICERATOPSデビュー20周年記念ライブに登場したCHABOさんのギターを目の当たりにしましたが、ピックが弦に当たる音、チョーキング、カッティングからミュートまでもう一音一音が粒立っていてワンストロークでモヤモヤした気持ちを全て吹き飛ばす姿は超カッコ良かったです。このアルバムでもそちらが堪能出来ますが「よォーこそ」「トランジスタ・ラジオ」「夜の散歩をしないかね」は特に震えます。
5.『DON’T STOP THE NOISE!』 / TRICERATOPS / 和田唱 / 2007年
なるべくオリジナルアルバムからと思っていましたが実に数多くのギターリフで踊れる名曲を産み出してきたその功績が分かる為、唯一ベスト盤で選出しました。分数コードとm7-5が心地良いコード進行の「if」鮮烈なデビュー曲「Raspberry」「FEVER」のマシンガン(のような)フレーズなど歴史に残るリフばかり。またシングルカップリング集との2枚組なので彼らのリラックスした曲からディープなアレンジまで幅広い音楽性をより楽しめる作品となっています。
6.『ソルファ』 / ASIAN KUNG-FU GENERATION / 後藤正文・喜多建介 / 2004年
ツインギターが絡み合うバンドアンサンブルとキャッチーなメロディでギター好きからライトリスナーまで楽しめる1枚。「リライト」「ループ&ループ」「君の街まで」とヒット曲も満載ですがアルバム曲ながら人気な「Re:Re:」の疾走感は今聴いても色褪せません。
7.『BAND WAGON』 / 鈴木茂 / 1975年
荒井由実「やさしさに包まれたなら」に代表される鈴木氏特有のストラトのシングルコイルのカッティングとスライド。ギターという楽器の持つ音のふくよかさ、旨味成分を引き出す演奏力の高さ余すことなく堪能出来ます。かといってひけらかすような部分は微塵もない硬派な1枚です。
8.『ユグドラシル』 / BUMP OF CHICKEN / 藤原基央・増川弘明 / 2004年
歪んでいるのに優しく響く、歯切れの良い音作りとフレーズに魂が込められています。宇宙や星が発している音なのか、心の中にある言葉にならない思いを表現している音なのか、そこで鳴らされる音は必然性を帯び真っ直ぐ届きます。ボーカルギター・藤くんこと藤原基央さんのギターのボイシングが好きです。
プチギター解説! 藤くんのGコードの抑え方!
コードは抑え方は様々。弾き方によって印象が変わるのもギターの魅力の一つです。
写真のように弾いてみましょう。ポイントは5弦をミュートすることです。一般的なGよりもBUMPらしい響きになります。※文字の汚さに関するご指摘は一切受け付けておりません。
9.『シンクロニシティーン』相対性理論 / 永井聖一 / 2010年
フェミニンかつアンニュイなボーカルと戯れ合うような軽やかさと独特な世界観を色濃くする空間系の音色、可愛らしい歌えるギターフレーズは最強。特に「チャイナアドバイス」「ペペロンチーノ・キャンディ」「小学館」3曲のわちゃわちゃ感が堪りません。
10.『空洞です』 / ゆらゆら帝国 / 坂本慎太郎 / 2007年
宇宙のどこかにある別の星で鳴らされているような音は時間や既成概念、理屈みたいなも
のを溶かしてくれます。ギターって面白いなぁと素直に思えるし全てに意味を求めず謎な
ままでも良いなぁと聴くたびに思わせてくれる心が透き通る作品です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?音楽の歴史は機材の進化の歴史とも言われています。PCやソフト音源での制作が主流ですが、ギターのニュアンスは打ち込みの中で一番生演奏を再現しにくいと言われており、人間らしさが出る楽器の一つかなと思います。ギターソロどころかギター自体が編成に入らない楽曲が多い中、今回の企画で改めて曲の魅力を引き立てる良い楽器だなと再認識しました。
多感な時期を過ごした1990年代〜2000年代の作品が多くなりましたが本物の音はいつの時代も鳴らされていて、心に響く音はいつ聴いても心という名の弦を掻き鳴らしてくれますね!。。滑りましたね…というか切れましたね、弦だけに。。。もう一本切れましたね。。
あなたにとってのギター名盤を思い出して引っ張り出してくるのも楽しいかと思いますし、本誌の中から自分のお気に入りの一枚を探してみるのも良いかと! 是非完全保存版のギタマガと合わせてお楽しみ下さい!
高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始。2枚のシングル、1枚アルバムをリリース。2016年活動休止。演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けた意欲作。アルバム『RADIO WAVES』、シングル『ひまわり』共にApple Music、Spotifyなどで配信中。
お仕事依頼はTwitterからお待ちしております。Twitter:@zazamino
イラスト:matsun
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
第23回マイフェイバリットエモー ショナルソング 10選」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第25回「『ねぇ、できちゃった』のコーナー夏の特別編! 新曲「ひまわり」セルフライナーノーツ」