ホタルライトヒルズバンドが6曲入りのEP『forevergreen』をリリースした。彼らの温かく優しいポップセンスはそのままに、今作はとにかく風通しが良くてバンドが伸び伸びと進化を遂げた印象。「猫と嫁」みたいにちょっとユーモアの効いた曲も、「レインドロップス」のように美しい音像の中に心情を浮かび上がらせるようなアプローチの曲も、ラストの「LIFE GOES ON」のように素直なメッセージ・ソングも、どれも自然な佇まいでありながらこれまで以上の確信と熱量を帯びて並んでいる。これからのホタバンのキャリアの中でも間違いなく長く愛されるべき名盤だ。
今回はクラウドファンディングを通じて、お客さんも立ち会いながらの制作になったことが功を奏した。自分たちを追い詰めるのではなく、オープンにすることで更に音楽が豊かに鳴るのは、今のホタバンならでは。ちなみに先日ツイッターで「お坊さんになりました」という発表をした藤田竜史(Vo. /Pf. / G.)。驚いた方も多いかと思いますが、今回のインタビューを読んでいただけたら、すごく自然な流れだったんだと納得できるはず。しかしバンドマンとお坊さんって両立できるの? そのあたりも藤田くんにじっくり語ってもらいました!(取材・文=上野三樹/撮影=田口沙織)
◆全ての過程をファンと共有する、クラウドファンディングによるアルバム制作
――今回のEP『forevergreen』はクラウドファンディングを通じて制作されたということですが、どういうアイデアから始まったんですか。
「去年の暮れぐらいに〈そろそろ作品を作りたいね〉っていう話になって。去年のリリースはシングル『エンディングノート』1枚だけだったんですよ。これは僕らにとって磯貝サイモンさんと作ったシングルだったし、もっとホタバンを世に知ってもらいたいという気持ちもあったし、MVに俳優の小関裕太くんに出演してもらったりも含め、今までになくメジャーな手法で露出もたくさんしたと思うんです。その反面、4人編成になってからの自分たちらしい曲や、もっと色んな部分を出し切った作品を作りたいという話になって。クラウドファンディングをやりたいと言ったのは僕なんですけど、作るんだったらファンの方と一緒に意見ももらいながら作りたいなと思ったんです」
――ファンの方とバンドと一緒に作品を作る感覚?
「そうですね。音楽作品を作っている過程を誰かに見せるなんてことは普通はないじゃないですか、そこで何が起きていて、みんなでどんな話をしてこういう作品になったかというのは。でもそれを見せることでどういう作品ができるだろうっていうアイデアから始まったんです」
――お金で支援してくれる人を満足させながら作品制作を実現させていくのは難しそうですが、どのように行っていったんですか。
「クラウドファンディングって見返り(リターン)が必ずあるじゃないですか、これをプレゼントします、というのをいかに面白くするかに醍醐味があると思うんですけど。結構、今まで僕らがやってきたこともそれに近いんですよ。カフェの中にレーベルを作ったり、『柏MUSIC SUN』という音楽フェスを地元でやったり。自分たちの中で知らず知らずに〈こういう楽しいことを共有しようよ〉という間口を広げてきてはいたので、今回もその延長でできたというか。〈作品を作る時にこういう楽しいことがあるんだけど一緒にやらない?〉って感じで。だから無理せず、一番肩肘張らずにできた気がしましたね。こういう作り方がバンドに合っていて、プラスに働いたと思います」
――バンドが作品に向き合ってたら互いにピリピリする瞬間もあったりするもんじゃない?
「そうなったらどうしようって正直怖かったんですけど(笑)。でも僕らはそうなると悪循環に陥ることが多くて、自分たちの中だけで解決させようとするとこんがらがっちゃうんです。今回は最初からそういうことがなくて、僕の調子が良かったっていうのもありますけど、全部の場所でお客さんが一緒にいるっていうのは大きかったですね」
――制作中の全ての場所にお客さんがいるんですか。
「レコーディングはさすがに分けたところもあったんですけど、ほとんどそうです。最初の〈こういう曲を作りたいよね〉っていうところから、全然出来てない曲をあーだこーだ言ってる場面にもお客さんにいてもらって。曲が出来ない時は出来ないと素直に言えたし、出来ないこともみんなで面白がれた。練習中に上手く弾けなくてちょっと空気がどんよりしてきたところも見せちゃうと、何となく出来てきた時の感じもみんなが徐々にわかってきて。全然歌詞が決まってないデモを聞いてもらって、『どんな景色が浮かびますか?』って聞いてみたり。それで1回も滞ったことはなかったし、4人だけで作るよりも上手くいくことの方が多かったですね。それはみんなの性格上、誰かを招き入れることが好きなメンバーばかりだし、4人だけじゃない多くの人で作り上げていく過程を楽しむことが出来ました」
――そうなんですね。多い時は何人くらいのオーディエンスがいたんですか。
「20人とか。だからリハスタも大きめのところを押さえて、座ってもらったり歩き回ってもらったりしながら(笑)。本当にホタバンのことを好きな人と一緒に作りました。アーティストって色んなタイプの人がいると思うんです、密閉された一人の空間でクリエイティブを完結させなきゃいけない人もいると思うけど、ホタバンに限ってはこの方法がすごく合っていました。レコーディングをみんなで楽しめたら、音楽もおのずと豊かに生き生きとしたものになりました」
◆アルバム『forevergreen』は「愛があればオッケー」!?
――そうした今までの制作とは異なるやり方が曲作りにも良い影響をもたらしているのかなと思います。例えば「猫と嫁」はユーモアがあるし藤田くんもこれまでにない引き出しから歌詞を書かれているような印象でした。
「この曲に関しては……去年ホタバンのことをずっと考えてると疲れてきちゃった時があって。というのも『エンディングノート』の制作をしていたりすると〈必殺技を作らなきゃ〉っていう気持ちにどうしてもなってしまって。そうするとすんごいくだらない曲とかも書きたくなって。だから『エンディングノート』で生きるか死ぬかみたいな曲を書いている時に、同時に書いた曲が『猫と嫁』。〈生きるとか死ぬとかどうでもいいよね〉みたいな自分もいるし、そういうとこにもちゃんと愛があればユーモアとして成立するんだなって。でもやっぱりそれを曲にして出さないと疲れちゃうから自分のために書いた曲で、ソロのライブで歌ったりしてきて。今までだったら絶対にバンドではできなかったんですけど、今はバンドでできるんです。成長なのか退化なのかわからないですけど、単純にただおじさんになってきてるのかな(笑)」
――あはははは!
「最近はだんだん〈愛があればオッケー〉みたいなことになってきてますね(笑)。昔はカッコよくないといけない、ソリッドじゃないとバンドでやる意味ないだろって思ってたんですけど。研ぎ澄まされたものを求め続けているとだんだん疲れてきて。でも『猫と嫁』を歌うと自分たちが救われるんです。今までだったらアルバムに入ってない曲ですよね」
――なるほど。それもバンドとしての純粋な欲求ですよね。
「そうですね。僕のこだわりもだんだん、肩の力が抜けてきて〈愛があればいい〉というところに統一感があるので。いつもメッセージは何なのかというのをみんなで話し合うんですけど今回は異論なく〈愛を歌うしかないね〉って始まった制作でした」
――もう最終テーマじゃないですか(笑)。
「そうなんですよね(笑)。でも今までも〈愛みたいなもの〉を歌ってきたんです。自分が考える愛。今はみんなそれが実感としてあるのかな。愛っていうと想像するものがみんなそれぞれにあると思うんですけど、それよりももっとみんなの実感の中にある愛というか」
――「愛みたいなもの」とは違う。
「10代、20代でも愛を歌ってきたつもりなんですけど、今までは何となく文字に書いてるだけだったのかな。前のバンド(RAVE)の時も『HOME』という曲で〈愛の歌をうたおう〉って歌ってるんですけど。それは、たぶん自分の中にあるんだけど不思議なもの、説明できないことを僕はたぶん〈愛〉って書いてたんだと思うんです。でも今はそれがちゃんと実感でわかるんだから、もうぼやかす必要はないというか」
――「愛を歌いたい」っていう気持ちを歌っていたのかもしれないですね。
「まさにそうです。たぶん、昔は〈これって愛なのかな〉って思ってても自信がなかったんでしょうね。それを色んな手法で言葉にして歌うことでがんばって愛に近づけるような気がしてた。でも愛って最初から自分の中にあったんだけど、昔は自分で自分を見てなかっただけだと。全部自分が邪魔しちゃってたことに気付いたんです」
――なるほどね。
「そういう自分が一切取り払われて、今は自分の中に愛があるってわかってるから、そこから出てくる自分の声を聞いてあげるというか」
――自分って一番めんどくさいじゃないですか。自分はこっちに行きたいと思ってるのに邪魔してるのも自分だったりするでしょう。そういう仕組みに気付いたってこと?
「そうですね。例えば自分は人と違うことがしたいとか、人より良い曲を書きたいと思う気持ちって、全部自分が作り出しているものだし、あるはずのないもので全部を敷き詰めていくんです。それが音楽をやっていることで自分にないものを満たしているはずだったんですけど、実は逆だったのかもしれない、それが自分を滅ぼしているのかもしれないって思ったことがあったんです。すぐそこにあるのに、ないと思って遠くから探したりとか。手前にあるものを大事にしないでジャンプして何かを掴もうとしてる感じというか。当時はがむしゃらでわからなかったけど、今振り返ると、自分を大きく見せようとしてたんだと思います」
――それって例えば「愛はここにある」と歌うことで、自分の中にはないってことに気付いたり?
「そういうこともありました。辛いですよね。〈何を根拠に歌ってるの?〉って問いかけが自分に返ってきちゃった場合、答えられるわけがないんですよ、自分が全部作り出してるから。自分で自分を回収できなくなってくる。ブーメランですよね、10代、20代で全部を出し切って、全部が返ってきたみたいな感覚で」
――そういう苦しい時もあったんですね。
「ありましたね。でも何とかやるしかないし、でも自信がないし、〈これじゃ届くはずない〉って思ってる自分も辛かったです」
――バンドのことだけじゃなく、ご結婚されたことも含め、色んなきっかけがあったと思うんですけど。辛い時期を抜け出せた今の変化としては何が大きかったですか。
「でも、この1年じゃないですかね。結婚したし、お坊さんにもなっちゃったし。これできれいさっぱり、ゼロになったっていう感覚です。仏教の学校に行き始めたのが去年なんですけど、その前までは辛いし、辛いとも言えないという状況でした。自分の責任だから全部自分で抱え込まなきゃと思ってたし。でも、やっぱり結婚するとすごく自分の嫌なところにいっぱい気づくじゃないですか」
――うん……でも藤田くん結婚したばかりでそれは早くない(笑)?
「僕はもう1年目で全部自分の嫌なところと向き合いました(笑)。奥さんに勝てないんですよ、自分の気持ちに素直にぶつかっていかないと。そこに妥協は許されないし、ごまかしなんて効かないし。こういうことを言うと奥さんがすごく厳しい人みたいなイメージになるかもしれないですけど、向こうも本気だし、僕がまだふわふわしてた部分も大きかったのかなと思います。だから僕の中ではっきりしていない部分がどんどん浮き彫りになっていって。更に仏教の学校にも通い始めて、自分を試される時間が多かったんですけど。でもそれが苦ではなかったんです」
◆仏教を学び、そしてお坊さんになった藤田くん
――仏教の学校に通い始めた時は、お坊さんになる / ならないは関係なく、とにかく勉強したいと思っていたんですか。
「お坊さんにはなりたいと思っていました、だから1年間勉強をして。浄土真宗のお坊さんって奥さんがいてもいいし、髪の毛を伸ばしてもいいし、お酒を呑んだりお肉を食べたりするのもOKなんですよ。お坊さんだから偉いとかじゃなくて、俗っぽく普通に生きて、その中で教えを広めていく感じで。そういう戒律がないかわり、すごく教学はしっかりしていますのでかなり勉強が必要です」
――先日、椎名林檎さんが『三毒史』というアルバムをリリースされて、私はそれまで「三毒」という言葉も知らなかったんですけど。仏教というと自分の欲望にまずは向き合うみたいなイメージがあります。
「浄土真宗における仏教用語で有名なのが〈他力本願〉という言葉なんですけど。これは世の中の9割以上の人が誤解してると思うんですけど、他力本願って自分の力じゃ何ともできないから人に頼るという意味だと思っている人がほとんどで。でも〈他力〉の〈他〉の本当の意味は人じゃないんですよ。それはいわゆる仏様のことで、自分の力じゃどうにもならないことがあるよ、っていうことの説明なんです」
――へえー!
「生きることとか死ぬことって言葉では説明できないじゃないですか。あと例えば何年かぶりに誰かに道でばったり会ったとか、そういう縁って本来言葉じゃ説明できないんですよ。でも人間って自分の言葉で説明したがる。アンラッキーなことがたくさん起こって苦しい時に〈神様お願いします!助けてください!〉って頼っちゃう弱さがある。〈他力〉と〈自力〉という言葉を使って、自分の力で何とかするということをすごい否定するんですよ。それがまさに僕なんです。自分の力で自分の道を切り拓こうとすることに僕は全てを注いで生きてきたけど、それをまずは全部否定されたんです」
――それは衝撃ですね(笑)。
「衝撃でしたよ(笑)。でも逆に〈他力〉という言葉を聞いた時に、自分じゃどうにもならないことしか確かに今残ってないなと思って。奥さんに出会って結婚するとか、メンバーに出会ってバンドをやってるとか、それは僕がやったことなのか? っていうと、そうじゃないんです。自分もメンバーにとっての他力だし、奥さんにとっての他力だし。だったら自分の力でどうにかしようとすることをまずはやめてみようと。それで、もっとちゃんと聞こうと思ったんです。人の言っている言葉とか、自分の気持ちとか。まずは聞くということを学校に行って勉強しました。今、僕がお坊さんになったからこう変わったっていうことも特にないんですが、気付かされたことはたくさんあります。さっきのアルバム制作の話にも通じることですけど、自分が自分でいられる場所にもっと興味を持つようになりました」
――今までは「自分が作るこの1曲でバンドの未来を切り拓こう!」とか思ってたでしょ?
「完全に思ってました。全部自分で背負わなきゃって。誰もそんなこと言ってないのに、〈この曲がダメだったらもう終わりだ〉とか思ったりしてたし。僕ががんばってるってことが誰かのためになるって、そんな風にも思ってたかな。たぶん、行くとこまで行ってたんだと思います。」
――でも自分が生きているだけで誰かの他力になっていると考えるとコミュニケーションも変わってきますよね。
「そうなんですよ。そうすると、より立体的に世の中が見えるようになった。余裕が生まれて楽になりました。でも、ここまでの道を通ってこなかったら今もないと思います。最初に音楽を始めた時に、説明できないことがとにかくあって、それが不思議だなと思っていたんです。例えば星を見て綺麗だなと思うこととか、その感動をどうにか説明したいと思って始めたんですけど。でも一周まわって、今その素晴らしさが自信を持ってわかるけど、でもここまでの道がなかったらここには来れなかった。不思議なことは不思議なまま置いておけば良かったんだけど、それを僕は説明することに全てを賭けちゃったんです。この気持ちに発端があるなら、この謎解きは自分で絶対にできる!って思ってたから。でも、それはしなくて良かったんです」
――藤田くんは自分の内側を堀りすぎて自分で傷ついてるみたいな時期もありましたよね。
「そうですね。今やっと気付けたのかな。だからゼロって言葉がぴったりなんですよね。これまで僕はAとBという選択があったら間を取ることで周りの人を惑わせていたんです、両方の意見の人が満足できるように、あるはずのないCを作り出そうとしたりして。それでは自分も迷うし、相手も迷う。でもどっちにも行かなくていい時ってあるんです。そうやって考えを曲げてきた日々を経て〈そのままでいいじゃん〉っていうゼロのところにいます」
◆ライブで2時間歌っても大丈夫なんですけど、お経は15分で声がガラガラになります
――学校での授業はみっちりあったんですか。
「平日の夜に毎日3時間、1年通いました。6時に行って、9時に終わる」
――バンドマンの生活じゃないね(笑)。
「だから結構、みんなには迷惑かけたな。ライブはやっぱり減っちゃうし。でも単位も取らなきゃいけないし、テストもあるから」
――ミュージシャンとお坊さんって両立できるものなんですか。
「今のところ自分では、まだやっぱり別世界です。でも藤田竜史というひとりの人間においては同じ感じでできるし、似てるところもあるのかな。お坊さんってお経をあげるじゃないですか、今も実際にご法事とか出させていただいているんですけど」
――藤田くんの美声でお経をあげてもらったら気持ち良さそう。
「お経って、歌の最終形態だと思います。声明(しょうみょう)って言うんですけど、ちゃんと節も付いていて、特に浄土真宗って仏教の中でも特にメロディアスなんですね。だから、仏教を勉強し始めた人って最初はお経に苦労すると思うんですけど、僕は何の弊害もなく」
――歌いこなせた(笑)?
「そうなんですよ(笑)。でも歌っちゃうと、違うんです。歌っちゃいけないんです、声明は。本物の立派なお坊さんの声明とは違う。言葉では上手く説明できないけど、やっぱり生き方が出るというか。メロディ通りに歌えたって、全然ありがたいものにならないんです。だから僕、ライブで2時間歌っても大丈夫なんですけど、お経は15分やると声がガラガラになります」
――それって何でしょうね。だって喉は鍛えられてるはずなのに。
「背負ってるものがまるで違うんですよ」
――確かに(笑)。でも奥深いですね。
「そうですね。その御方の肉体があった最後の日に歌を発する人になるわけですから。遂にここまで来てしまったか、という感じがしましたね。でも同じじゃないからこそ音楽の良さにも気づけました。だからライブも今すごく楽しいですね、背負ってるものがないから(笑)」
――お経というのは、自分のための歌とは対極にあるものですよね。
「そうなんですよ。普通のライブではいつもお客さんがいる、お経をあげている時も紛れもなく誰かは聴いているんです、でもその方々が僕の声を通して想い描くことというのは、完全に僕じゃない。そこが音楽とはかなり違うし、でも実は音楽もそうなのかなと思ったり。歌ってる本人が好きな人もいるだろうけど、歌ってる人を通して自分の中の世界を見たりする人もいるわけだから。知らないことばっかりです」
――藤田くんすごいところまで来ましたね。今回のアルバムの1曲目の「フンダリーカ」は仏教に触れたこともきっかけになって出来た曲だそうですが。
「そうですね、最初に仏教の学校に行って感動した話がきっかけで書いた曲です。蓮の花は水がドロドロで汚いほど綺麗な花が咲くという話から。なんか、汚いものと綺麗なものというのが今まではどっちかに光を当てることしか自分の感覚になかったんですけど、それも光を当てる必要がないというか。ちゃんと同居するんです」
――ドロドロな部分もあって、綺麗な花の部分もあって、ひとつというような?
「そうです。そして、それさえも説明しなくていい。咲いたんだったら、咲いたってことをただ共有すればいいし、咲かなかったら、咲かなかったことをただ共有すればいい」
――こういう曲がホタバンのアルバムの1曲目に入ってることも、すごく自然なんですよね。お坊さんになったからこういう曲ができたんだなとも思わないし、やっぱり藤田くんの世界なんです。
「そう、ちょっと怖かったんですけどね。学校に行ったりするとこれまでの自分じゃない言葉が出てきたりするのかなとか思ってたんですけど、そんなこともないなと。人間はずっとその人そのもので、生き続けるんだなって」
――今まで考えてきたことが、より明瞭になったような感じ?
「もっと考えなきゃとか、もっと説明しなきゃとか、思ってたことをやめなさいっていうことを教えてもらったと思います。それは作る音楽にも影響していて、今まで詰め込みすぎていた音符の数が減ったことで余裕が生まれて楽器が豊かに鳴るようになったりもして。だから迷いがないですね」
――今作の最後には「LIFE GOES ON」という名曲も。これ、歌詞は大変だったそうですが。
「そうですね。歌詞はがんばったというか、邪魔がなくなるまでに相当な時間がかかりました」
――邪念を取り払うってこと?
「邪念です。書いちゃうんですどうしても、自分のイメージにないものを」
――最近は書いてて「これ邪念だな」ってわかる?
「あ、わかります、わかります。自分の中にないものは〈はい、嘘!〉って取り払って、でも自分の中にあるものを偽りなく書けてもそれが音楽的かどうかというのはどうしても考えちゃうので、その戦いは結構、果てしないですね。ひたすら書くしかないです。だから『LIFE GOES ON』はひたすら自分の力が抜けるまで時間をかけて書きました」
――〈これでいいんだ これ以外ないんだ〉と。
「そうです(笑)、それが言いたかったんです。自問自答をそのまま書きました。歌ってて気持ちいいです」
――思いもよらぬ進化を遂げていく藤田くんとホタバンがこれからも楽しみです。
「ここからまだまだ音楽を続けられるなという気がしています。音楽だけで生きてきた僕が、これからはまた新しい生き方になっていく。バンドを続けていくことは色んな意味で大変だったし、なかなか金銭的にも難しい年齢になってきてるなと思っていたんです、ずっと。結婚もしたことで瀬戸際なところまできてました。でもお坊さんになって生きていくための仕事が別にできたことで、音楽を作り続けるしかない人生になったなと思います。本当にありがたいことですね」
『forevergreen』
2019年5月26日発売
¥2,000(税別)
01.フンダリーカ
02.マイソングラブソング
03.猫と嫁
04.レインドロップス
05.スペースシャトル
06.LIFE GOES ON
ホタルライトヒルズバンド HP http://hotaban.com
各種配信先 https://song.link/album/s/4LurW64nKDTPT4R8iBUeTT
通販購入先 https://shop.arigatomusic.co.jp/product/14598/forevergreen/a>
2019年5月26日発売
¥2,000(税別)
01.フンダリーカ
02.マイソングラブソング
03.猫と嫁
04.レインドロップス
05.スペースシャトル
06.LIFE GOES ON
ホタルライトヒルズバンド HP http://hotaban.com
各種配信先 https://song.link/album/s/4LurW64nKDTPT4R8iBUeTT
通販購入先 https://shop.arigatomusic.co.jp/product/14598/forevergreen/a>
上野三樹●YUMECO RECORDS主宰 / 音楽ライター / 福岡県出身。『ROCKIN’ON JAPAN』『音楽と人』『anan』『月刊ピアノ』などで執筆中。最近の趣味は、サウナとひとりカラオケとドライブ。