はい、そんな訳で始まりました~GAL Radio第6回。
いつもお読み頂き誠にありがとうございます。
初めましての方もゆっくりしていってくださいね。
ラジオを聴くような感覚で、カフェでまったり友人と音楽の話をするような時間をお届けして参ります。

 
 
 
◆小噺


 
先日わたくし、親知らずを抜く手術をしてもらったのですがこれがまた厄介者でして、、
こいつがなんと横に生えていたもんですから骨とお肉を削り抜歯をする羽目に。
更にその歯の根っこが釣り針のような形状だったみたいで、30分ほどで終わると伝えられた手術が蓋を、いや、歯茎を開けてみたら1時間に及ぶ施術に。
先生は術後「年間500本くらい親知らず抜いてるけど5本の指に入る難しさだったよ。」と言いました。先生、そこは5本の歯と言って欲しかった。
「てか年間500本多くないすか!!?」と僕の心の中のひな壇芸人達が一斉に立ち上がり突っ込んでおりましたが、血まみれ麻酔投与の無防備な口はガーゼを当てていた為「ふぇぇ…」しかリアクション出来ず。ごめんなさい先生、、。そんな芸人魂を発揮できないほろ苦さを鉄の味がする唾と一緒に飲み込みました。

 
さて(編集点)、今回は先月に引き続き3ヶ月ぶち抜き企画「Mr.Children」の特集第2弾、
10月3日にリリースされた「重力と呼吸」のアルバムレビューです!
前回、ミスチルは人の心の揺れを歌い続けてきたとお話しました。が、
今作、彼らはリスナーの心に揺さぶりをかけにきています。
バンド史上最も前作から発売までの期間が開いた3年4ヶ月ぶりの待ち望まれた作品ですので鼻息荒く興奮気味ではありますが、冷静にお伝えします!

 
 
 
Mr.Children 『重力と呼吸』 アルバムレビュー
 
◆アルバム全体の感想


 
まずはアルバムの詳細から。
 
 
IMG_0547

『重力と呼吸』ジャケット

 
 
Mr.Chirdren | 重力と呼吸 | TOY’S FACTORY
http://www.toysfactory.co.jp/artist/mrchildren/20181003/
 
重力のように重く、呼吸のように軽い。そんな印象を受けました。
ミスチルアルバム史上、10曲というボリュームは決して多いとは言えないのですが、
一曲に込められた情報量、熱量の高さを感じさせるにはベストな長さに思えます。
死や別れといったテーマがアルバム全体に一貫して流れる中、一枚通して聴いても48分はあっという間で、何度もリピートしてしまいます。
YouTubeの動画広告の5秒でさえもスキップしたくなったり、短い中に魅力を感じ、いかに飽きさせないかに作品作りは重きを置かれ、生活習慣が目まぐるしく変わった今、洗練され削ぎ落とされたフィジカルな音は時代と対峙し続けてきたバンドだからこそ、この状況の中でより鮮明さを増して聴こえます。

 
くるりやエレファントカシマシ、HEAT WAVE、RADWIMPSなどとの対バンで魅せたサプライズ、
生音のみで奏でられ、Bank Bandのような高い演奏力を目指したというレア曲満載22年振りのホールツアーで培った演奏のダイナミクス、
ヒット曲出し惜しみなしの25周年スタジアムツアーでパワフルな自分達を再び獲得していったこと、
これらの活動で再びムキムキにビルドアップされたタフネスな音がこのアルバムでは鳴らされています。躍動感と音で反応し合うセンシティブなアレンジのバランスが瑞々しく、例えるなら旬のブドウの皮を剥いた時の果汁が滴り果肉丸ごとプルップルな状態みたいな感じです。

 
アルバムツアーにもサポートメンバーとして帯同するSébu Hiroko氏がキーボードとして多くの楽曲で演奏、アレンジで参加していてメンバー4人の音を最大限に引き立たせてる点、桜井氏の歌い方の変化も過去作と比べて楽しめる点です。少し抑え気味で張り上げきらない新しいメロディをファルセットでなぞる箇所は心地よいシルクの肌触りのよう。国宝、いや世界遺産に登録しましょう。
 
 
◆全曲解説


 
1.Your song
イントロのカウントと叫び、もうそれだけでこのアルバムの全てを表しています。
 
2.海にて、心は裸になりたがる
自分自身のことも分からないのに、本当のことは知らないのに分かったような気になってしまう。プラスな感情もその逆も連鎖していくものだからこそ
心は裸になりたがっているよ
世界はあなたに会いたがっているよ
(心は〜、世界は〜から先の母音が全て一緒)
心と世界、自分と相手も海のように繋がっていると気づいたら変わるのでは。
きっとみんなどこかで気持ちは同じで、それを叶える方法が心を裸にするということなのでしょうか。それを海を見て感じる。うーむ、海のように深いですな。
 
3.SINGLES
別れてしまった人を思いながらもそれぞれが進んでいく、大切なものを失った人の唄。
間奏の展開が新しく、サビはロックがロールしています。
 
4.here comes my love
森俊之氏の切ないピアノから始まり拡がっていくロックバラード。
フレディ・マーキュリーを彷彿とさせる裏声とブライアン・メイ顔負けの間奏のギターソロ(桜井氏が弾いています)ミスチル版Queen。
個人的に歌詞の内容が突き刺さりすぎて心臓はち切れそうです。
 
5.箱庭
ロックテイストが続いた前半戦を落ち着かせるテンポと明るいブラスアレンジが新しいミディアムナンバー。しかし歌詞の内容は愛する人と別れた過去と今の自分がいかに小さな世界で生活しているかを実感し、認めたくない現実を痛感させられる残酷な内容。その対比がより悲しみのコントラストを強める。チャールズ・チャップリンの「人生は近くで見れば悲劇である、しかし遠くから見れば喜劇である」という言葉を思い出しました。
 
6.addiction
井上陽水氏「限りない欲望」ミスチル版2018な曲。
もういらないと思っても欲に溺れ依存してしまう人間の弱さがスリリングに展開していきます。もうと歌っているように聞こえるけど歌詞はmore(もっと!)と逆の意味で韻を踏んでいます。桜井先生ーー!(アメトーークミスチル芸人©︎チャンカワイさん)
 
7.day by day(愛犬クルの物語)
ワンちゃんが全力疾走でこちらに向かって戯れてくるような人懐っこさ、愛くるしさに切なさも加えた曲。ペディグリーチャム。(犬用の食品缶詰)
メロディを先に作り歌詞を当てていくことで知られる桜井氏。
サビの頭を母音で叫んで作ったのかななんて想像したり。
人間以外の動物が出てくることでアルバムの世界観が広がっています。
 
8.秋がくれた切符
待ってました。秋をテーマにした極上の切ない曲。
物語の舞台は公園を散歩するカップルの元に木の葉が一枚舞い降りてくるシーン。
主人公は「神様が僕らにくれた何かの切符みたいだ」と感じます。
枯葉を切符に例えたなんともオシャンティーな比喩なのですが、
自分達はどこへ行くのか、木の葉を眺めて考えます。何故神様がくれたのか。
枯葉は死のメタファーで、枯葉が人生の終着駅、つまり死まで一緒に向かう二人分の切符と仮定します。
死や別れは辛く悲しいもの、しかしそこまで一緒にいれるということは人生の幸せの一つの形。その相手が君なのです。
「いつか辿り着いてしまう最期まで大切な人と寄り添いなさい」と神様から木の葉という名の切符のプレゼントを受け取ったよと歌っているのでは。
きえーー!!(切なすぎて発狂)
 
9.himawari
アルバム用に各楽器のバランスを調整するMIXがし直され、ボーカルも録り直されています。攻撃的な曲の優しさ成分を少し多くしたような歌い方はシングルバージョンと比べどこか救われます。弦一徹ストリングス(YUKIさんファンにはお馴染み)のザクザクしたアレンジが特徴の一曲。
 
10.皮膚呼吸
ここまでの重厚感をこの曲でまさに全身の毛穴から空気中へと発散、解放するよう。
 
 
◆まとめ


 
重力も呼吸も普段生活している中ではほとんど気にしません。
確かに存在するのに実体を伴わない、目には見えないものです。
しかし意識を向けると呼吸していること、そこに重力があることを感じます。
そんな無意識に意識を向けること。良いことも悪いことにも意識を向け、それでも無意識が選ぶイメージを膨らませて生活していくように。
呼吸が重く感じてしまう時もあるけど、重力すら軽く感じることも出来る。
君じゃなきゃと歌う一曲目のカウントと叫び、言葉になる前の、言語化できない心の奥から外の世界へと向けて放たれた音が私たちの鼓膜を振動させます。それだけで奇跡なのだと言わんばかりに。そんな事を感じたアルバムです。

 
 
Mr.Children「Your Song(Original Story)」

 
 
■オススメしたい! のコーナー


 
毎回テーマに沿ったオススメ曲を選曲、ご紹介するコーナー。
2ヶ月ぶりの今回は「重力と呼吸」。
 
スピッツ「水色の街」 / 27th Single(2002年8月7日発売)

 
 
草野マサムネさんの浮遊感漂う歌声。ひんやりとしたドライな演奏がどこか暗さも内包しつつ、美しくも奇妙な情景が描かれる歌詞の世界観。サビがラララだけなのも凄いですね。サウンドの重厚感と死生観を感じさせる歌詞のテーマが「重力と呼吸」の音像と近いものがあるので選びました。
 
 
ゆず「呼吸」 / 16th Single(2003年2月12日発売)
 
岩沢文学の真骨頂!
サビの歌詞「いつだって どこだって 君といたい ただそれだけ たったそれだけのことなのに」この最後の「なのに」でそれまでのことが叶わない事を表し一気に切なさを感じさせます。岩沢さん特有の抽象的でどこかシニカルな歌詞、サビのどこまでも突き抜ける岩沢ボイスは乾いた冬の空気におでんダシのごとく優しく染み渡ります。
「ゆずの2月は4部作」と銘打たれ4週に渡り毎週シングルを発表するとてつもなくワクワクさせる企画でリリースされ「週刊誌のように新作を届けたい」という思いで10万枚限定1曲入り(隠しトラックが収録されたものもあり)手書きの紙ジャケを500円で買えるというお手軽さは当時話題を集めました。
 
 
高橋 圭「重力に逆らって」(未発表曲)
 
このタイミングで、この場をお借りして、新曲を発表します!
作詞、作編曲、演奏、プログラミング全て自宅スタジオにてひとりで録音しました。
いわゆるデモ音源というものですが、いつも読んで頂いている皆さんに最初に聴いてもらえたらと思い載せてもらいました。
 
地球のあるところでは重力に逆らって水が空に向かって昇って行く場所があり、
そこからイメージを膨らませた曲です。時間は地上から離れ重力の影響を受けにくい場所になるほど速く感じるといういわゆる相対性理論から、好きな人といる時間はあっと言う間に過ぎること、何かぼんやりとしていて輪郭のないもの時間、空間をテーマに作ったように思います。
 
仮タイトルは「コケティッシュティッシュ」直訳すると「艶かしいティッシュ」(笑)。
ティッシュには「生体の組織」という意味もあるようで、生命を維持するのに必要不可欠なものという意味もヒントになっています。
曲のご感想、Twitterでどしどしお待ちしております。
是非聴いてください!
 
 

 
 
重力に逆らって
 

全てを覆す 発明と出会った
短く切った髪 光に包まれる


いつの間にかそれは産まれていたよ
はじめからそこにいたみたいに
気づかないフリしても付いてくるよ
寄せ ては 返す 波のよう


水彩絵の具の 滲んだところ
混ぜあうように 染み込んでく
優しい心で おんなじ気持ちで
滑り落ちる あなたの一部に惹かれていく


青春の瞬きは 儚くてやんなる


目を凝らしてもそれは見えないなら 
暗闇も照らしてみせよう
柔らかくてまあるい形なんだよ
今 愛の 色を 見せてよ


ウーリッツアーの 優しい音色
スウィングしている 鳴り止む時まで
悲しい言葉も 美しく見えるのは
疑うことなく 私の一部になってるから


あなたの声が 風に揺れてる
短い季節を使い果たすほど
誰も触れない ふたりだけの世界
どこか懐かしい だけど知らない
何よりも速く 心まで届くよ
どこにいたって 聴こえてくるよ


あなたの引力に 吸い寄せられるように
今 重力に逆らって
今 運命に逆らって

 
 
 
 
 


 
FullSizeR-2高橋 圭●1988年5月3日生まれ。2011年から作曲、ギターを務めるgood sleepsのALBUM『SIGNAL』はiTunes store、Apple MUSICにて配信中。Twitter:@zazamino
 
good sleeps
http://good-sleep.jimdo.com/