《枝折(しおり)とは、道しるべ、手引きという意味です。私の人生は、常に「本」が伴走してくれています。けっして、道に迷わぬよう。今回の連載より、自分の人生に影響を与えてくれた本の紹介と人生のエピソードをエッセイとして書いていきます。》
 
 
■三浦しをん『ののはな通信』(角川書店)


 
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友達に会いたい。
 
話には聞いていたけど、信じてなかった。でも、本当に結婚したらなかなか自由な時間がない。仕事して、家事をして、残りの時間は僅か。その時間を夫と過ごしてしまうと、もう友達と過ごす時間は私には無くなってしまった。これは、一番淋しくて、つらい。
 
今回紹介する、三浦しをん著『ののはな通信』は、友情、そして運命の恋について描かれている。
 
ミッション系のお嬢様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なののと、外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。かけがえのない親友同士となり、友情以上の気持ちが芽生える。情熱的な恋は、やがて終焉を迎えるが、時が経ち、運命だった二人は思わぬ形で交流を再開し、互いの人生の支えとなっていく。やがて、また二人を引き裂く悲しい出来事が起きる。二人の女性の生き方が、往復書簡形式で描かれている長編小説である。
 
とにかく! 自分の少女時代を思い出してワクワクした。意味もなく、毎日会えるのに、手紙交換していたなぁ。あの膨大な手紙はどこへ行ってしまったんだろう。(この物語では、素敵な箱に保存されていて宝物になっている! ちょっと読み返すのは恥ずかしいけど、うらやましい。)私は、初恋の相手がものすごく手紙が好きで、決して返信はくれなかったけど、書いて! 書いて! と催促された。文学少女だった私は、喜んでせっせと書いた。
 
他人は手紙を貰うと嬉しいんだ! と思い込んでしまい、夫にも出会ってから何かあるごとに手紙を書く。毎年結婚記念日には、夫が返事を書いてくれて、いまでも手紙というツールを大事にしている。なんとも言えぬ感動があるのだ。手紙は、LINEと違って、やはり長い文章から本音が随所にダダ漏れてしまう。だから、怖い。こんなこと、気にしてたの! と思ったりすることも多い。
 
この物語の二人のやりとりは、ものすごく刺激的だ。こうやって、心も身体も繋がってる者同士で気持ちを文章にして交換出来るなんて、素敵すぎる!人生束の間でも、誰かに夢中になれたらそれだけで生まれた意味がある。仕事で成功するとか、子供を立派に育てるとか色々な目標があるだろうけど、私もやっぱり愛に生きたいなぁと自分の中で眠っていたものに気づかされた。
 
そうだ、友達に会えなくとも、手紙を書こう。無意味なことや愚痴も書いて、「だけどね、私はやっぱり愛が大事だと思う」と書く。そして、笑われたり、呆れられたりしたい。さぁ、素敵な便箋を買いに行かなきゃ!
 
 
 
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今年は台風が直撃しましたが、稲はしっかり育ちました。生命力を感じます。

 
 
 
 


 
uemura上村祐子●1979年東京都品川区生まれ。元書店員。2016年、結婚を機に兵庫県淡路島に移住。