■瀧波ユカリ著『ありがとうって、言えたなら』 文藝春秋
もし、両親が病気になったら…。
東京にいる両親が、重い病気になったら、看病どうしよう。淡路島にいたら側にいてあげられない。結婚する時に1番考えた問題だった。
今回紹介するのは「母の死」を真正面から描いた、「臨死!!江古田ちゃん」の著者でもある瀧波ユカリさん最新コミックエッセイ。 江古田ちゃんにも登場していた、インパクト大で毒舌のお母さん&お姉ちゃんを思い出す方も多いはず。釧路で一人暮らしていた母のすい臓癌が発覚してからの闘病、余命宣告、実家の処分、お墓や遺影のこと、最後の旅行、そして緩和ケア病棟での看取りが描かれている。
具体的なことが時系列に書いてあり、 本当に勉強になった。心の揺れも、赤裸々に書いてあって、ぼろぼろ泣けた。
あまり仲良くなかった母と娘。母は、嫌われてると思ってたと話し、娘は、生きてる間には素直にありがとうと言えなかった。
『これ以上嫌いになりたくない、亡くなった後にいい人だったと思いたい』
病魔に襲われ精神が崩壊していく母に対して思ってしまう感情など包み隠さず書いてあり、死を直前にした人間と対峙する介護者の辛さを知った。緩和ケアの病室で、漫画の締め切りに追われながらの看病する最後の数日は、胸が締め付けられて切ない。
言葉で伝えられなくても、この本を出版することで天国のお母さんに大好きやありがとうの気持ちは伝わっている。最高の親孝行だなぁ。
こんなに、タフで優しく、全ての時間を使って寄り添えるか今の私には、自信がない。けれど、その日はやってくるんだ。親を看取るということを、真剣に考えることができる一冊です。
上村祐子●1979年東京都品川区生まれ。元書店員。2016年、結婚を機に兵庫県淡路島玉ねぎ畑の真ん中に移住。「やすらぎの郷」と「バチェラー・ジャパン」に夢中。はじめまして、風光る4月より連載を担当させて頂くことになりました。文章を書くのは久々でドキドキしています。淡路島の暮らしにも慣れてきて、何か始めたいと思っていた矢先に上野三樹さんよりお話を頂いて嬉しい限りです。私が、東京で書店員としてキラキラしていた時代、三樹さんに出会いました。お会いしていたのはほぼ夜中だったwと思いますが、今では、朝ドラの感想をツイッターで語り合う仲です。結婚し、中年になりましたがキラキラした書評を青臭い感じで書いていこうと思っています。