3月になって、冬の間じっと土のなかでこの瞬間を待っていたかのように花や木々たちの芽吹きが見られるようになりました。卒業や転勤など寂しい季節でもあるけれど、3月は出会いや始まりの季節。
 
こちらの記事が更新される頃には、斉藤和義さんのアルバム『Toys Blood Music』がリリースされ、いよいよ約4か月にわたって行われるツアーがスタートします。そして、今年は和義さんのデビュー25周年! 私もささやかながら、このアニバーサリーイヤーを盛り上げていきたいと思っています。
 
先日コピス吉祥寺にあるHMVで行われていた「むさしの-FM Presents HMV キチレコvol.1」というイベントの最終日(3月4日)で、近藤研二さんのインストアライブを観てきましたのでこの様子をレポートさせていただきたいと思います。
 
ギタリストであり、NHK  Eテレの『0655』のおはようソング、『2355』のおやすみソングの作・編曲家(たまに歌も)として活躍中の近藤さん。また、大の猫好きでも有名。もしかしたら、愛猫家としてご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。
 
まずは山田稔明さん(GOMES THE HITMANのボーカリストで、この方も愛猫家でもあります)と近藤さんお二人のステージ。山田さんの心地いい周波数の柔らかい歌と近藤さんのコーラスで素敵なアコギの競演。「toi toi toi」では近藤さんが公では初めてだというマンドリンを聴かせてくれました。お二人の波長の合った楽しいMCと波動が伝わってくるメロディーに、HMVの店内は自然と手拍子に包まれ、まるでライブハウスのような一体感。
 
続いて近藤さんのステージは、ゆったりとしたペースのMCにお人柄を感じて思わず頬がゆるんでしまう。『2355』ではサンドウィッチマンが歌っている「上野動物園準備中」などに加え、歌詞に猫が登場する遠藤賢司さんの「カレーライス」が聴けたのはレアでした。想いは目には見えないけれど、ゆらゆらとたゆたう想いたちを一つひとつ丁寧に紡いでメロディーを奏でていく。あたたかくて心がふわっと軽くなるような、魔法にかけられたような時間。
 
そしてこの日は、『子猫のロンド』に続く2枚目のソロアルバム『MOINGO』のレコ発でもありました。カバー曲が中心の、近藤さんの大切な家族への想いに溢れた4曲。そこには想像を超える新たな世界観が広がっていました。どこか神々しさを感じるような、ウニちゃんとモイちゃん、近藤家の可愛い天使たちの声が散りばめられている、陽だまりの場所へと誘ってくれるようなアルバムでした。
 
この日はあっという間にsold outになってしまったようなのですが、これから行われるライブや通販などでも発売されるようなので、一人でも多くの方に届くといいなと願っています。
 
近藤さん、とかしこまって言っているけれど、私にとってはいつになっても“研ちゃん”のまま。
 
というのも、私は研ちゃんのやっていたバンド“ハイポジ”をよく観に行っていました。もう20年以上前になるのかな?そしてこの方が私を斉藤和義さんの音楽に出会わせてくれました。研ちゃんがバンジョーで参加した「君の顔が好きだ」を聴いたことがきっかけで、和義さんに惹き込まれたのです(笑)。その出会いに感謝です。
 
研ちゃんはアイデアマンで、文章を書いても上手いしデザインも手掛けるし、コツコツと建設的に積み上げていくタイプ。そして、有言実行の人。そういえば、ご本人は覚えていないと思うけど、昔「いつかソロアルバムを作る」って言っていたことを思い出しました。
 
京都に戻ってからはライブに行く回数もめっきり減ってしまったけど、私が気まぐれに顔を出してもあたたかく迎えてくれる優しい人。最近の著しい活躍ぶりはまるで親戚のお兄さんのことのようにとても嬉しく思っています。
 
いつからか研ちゃんのギターに惹かれて、もうずいぶん経ちました。最初聴いていたのはエレキギターだったけど、私がアコースティックギターに心惹かれるのは、もしかしたら研ちゃんのギターに出会ったからかもしれません。ポロンと弦をつまびいただけでその人の姿が見えるような、そんな気持ちのこもった温もりのあるメロディーは聴く人の心に寄り添い、時には育み、人生をより豊かなものにしてくれるような気がしています。
 
新しいアルバムから、と鍵盤ハーモニカで演奏してくれた「日曜日のセレナーデ SERENATA  PARA DOMINGO」を聴きながら、“幸せ”というものにカタチがあるならきっとこういう空間のことをいうんだろうな、と深く強く心に刻みました。
 
 
IMG_4377 
 
 
 


 
shinomuramotoshino muramoto●京都市在住。雑誌編集・放送局広報を経て、現在は校正士、時々物書き。先日、京都・紫明会館で行われた真心ブラザーズの桜井秀俊さんのソロライブは、聴いているだけで幸せになる歌声とちょこちょこ毒を吐きながらのトークが絶妙で笑い過ぎて涙。ロマンティストなメロディメーカー、桜井さん。毛細血管切れんばかりの熱唱も最高でした。