紳士、淑女の皆様、あけましておめでとうございます。
旧年中はひとかたならぬお引き立てを賜り、誠にありがとうございました。
本年も変わらぬご厚情を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 
 
■吠えて行こうぜ~2018年戌年・新年のご挨拶~


 
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写真・画像作成:小此木愛里

 
さて新年一発目、ここはやはり初心に返ってロックンロールを語ってみようと思います。
2017年は数多くのロックンロールの名盤に巡り逢えた年でもありました。
 
ギター・滝の体調不良に苦しみながらも心血を注いで作り上げた9mm Parabellim Bullet のアルバム『BABEL』は、呼吸さえも忘れる程の緊張感と気迫に満ちていた。そして10周年を終えて、いっそう腹の据わったa flood of circleのアルバム『NEW TRIBE』と、ヴォーカル佐々木亮介がブルースの聖地メンフィスに渡って作ったソロアルバム『LEO』も圧倒的だった。『大人になってしまうなよ』で荒削りだが“ロック好き感”がひしひしと伝わってきた若きバンド・SIX LOUNGEは、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで熱いライヴを繰り広げている。そして気付けばフラッドともすっかり良い感じになっているので、こちらとしては嬉しい限り。
 
 
▽佐々木亮介(a flood of circle) 1st Mini Album “LEO” 予告編

 
 
しかし2017年は、若手はもとよりベテラン勢が凄かった。まずTHE BACK HORN。2月の宇多田ヒカルとのコラボ作『あなたが待ってる』に始まり、7月にシングル『孤独を繋いで』、そして10月にベストアルバムと手を変え品を変え。様々なアプローチでバックホーンの音楽を表現することが、逆に彼らの芯にある“人間愛”や“命”というテーマを炙り出す結果となった。
 
アラウンド20年のGRAPEVINE、SCOOBIE DOも、守りに徹することなく自分たちの武器をギラギラに研ぎ澄ましてくる感じが頼もしい。各地のライヴハウスに貼れたポスターが話題となった「ハイエース」のフラワーカンパニーズは25周年。バックホーンに並んで3タイトルをリリースしたエレファントカシマシは30周年を迎え、大晦日の紅白歌合戦まで2017年を走りきった。
 
この原稿を書きつつ、それぞれの作品を聴いているのだけれど、やはり名盤揃いである。しかし、中でも強烈なインパクトを残したのはThe Birthday。5月に発売されたアルバム『NOMAD』がもう、とんでもない。煙草の煙で満たされた酒場の如く煙ったく、苦みと渋みを薄めることなくロックにぶち込むバードボイルド精神たるや。タイトルがあまりにも美しい「夢とバッハとカフェインと」に、〈お前を根こそぎ抱きしめてやる〉なんて殺し文句が炸裂する「抱きしめたい」を始め、イントロのギターから悩殺される「24時」……挙げたらキリがないくらいキラーチューンがそろい踏みしているのだ。曲が良くて演奏がこなれていてチバの歌が渋いのは、言うまでもない。けれど私が名立たる名盤の中でもThe Birthday『NOMAD』を推したい理由は別にある。ちゃんと格好を付けた格好良さがそこにあり、“ロックンロールとは俺たちのことだ”と言わんばかりの風格が漂っていることだ。その佇まいに、心底惚れた。
 
 
▽The Birthday 9th Album『NOMAD』アルバムダイジェスト

 
 
やっぱり何かを語るなら、より雄弁でありたいと思う。音楽でも文字でも、それだけで伝えるより、他のカルチャーと合わさることで強度が増す。例えばロックを鳴らす際に革ジャンを着る、というように。それだけで特定のイメージは強くなる筈だ。他のカルチャーを取り入れることを、邪道だとか否定するのは簡単だと思う。だけど装いで、仕草で、佇まいで、香りで、表現を深めてゆく人を、私は尊敬する。好きなことを好きなように、吠えていこうぜ。この言葉を私の2018年の所信表明とさせていただきます。
 
今年も何卒よろしくお願い致します。
 
 
 
■monthly Rock ‘n’ Roll vol.10 ― The Doggy Paddle「クドリャフカ」
 


 

 
このコーナーは、なるべくなら過去の記事に登場していないバンドの曲を……と選曲しているのですが、2018年・戌年の幕開けには、やはり彼らしかいませんでした。この連載にも度々登場してくれるThe Doggy Paddle。“犬掻き”というバンド名にして、戌年に10周年を迎えるとのことで、紹介せずにはいられません(メンバー全員酉年・48周年のフラカンには負けるけれど)。そんな訳で犬モチーフを多用する彼らですが、その中でもタイトルにある有名な犬の名前が付いた曲があります。それがこの“クドリャフカ”。“ライカ犬”という呼び名で有名な初めて宇宙に行った犬の名前です。4年前の曲で、メンバーも今とは違うけれど、ライヴでの人気は未だ根強い不朽の名曲。今回の記事で紹介したロックンロールバンドが好きな方はピンとくるはず。是非!
 
 
 
 


 
ishihara_2017イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。2016年11月号より『音楽と人』レビュー陣に加わる。改めまして、明けましておめでとうございます。今回もカメラマン小此木愛里がものすごい画像を作ってくれました。感謝。今年も愛すべきロックンロールを言葉にして伝えて行けたらと思っております。連載はあと2回! 何卒よろしくお願い致します。