脈々と続いていくものは、その流れに沢山の想いが絡まって、少しずつ特別なものになっていく。母親の影響で以前から歴史あるものを見る機会は多かったのですが、先日、特にそんなことを考えるきっかけになった展覧会があったので、今月のコラムはそのことについて。
 
 
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このパネルも大人気のフォトスポットに。

 
 
今年、美術界が凄いことになっているの、ご存知でしたか? こんなに出し尽くして大丈夫…? と言いたくなるような様々な大型展覧会に加え、「国宝」という言葉が誕生してから120年が経過したことを祝して、全国の国宝が一堂に会した「国宝展」まで開催されるという太っ腹っぷり。よく分からないもの、興味を惹くもの、自分から提案するもの…と基本的に家族で行動することが多いこともあり、1年を通して何かしらの展覧会を追いかけている、という状況に身を置きがちなのですが、ここ数年の美術展を考えても、今年の豪華さは異様とも言えるものでした。
 
 
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水面に映った姿が非現実感を加速させていました。

 
 
そんな、次にここまでの国宝が集まるのは何年後だ? と驚きを込めて噂されている「国宝展」。旅行会社のプランを利用して、ついに私も遊びに行ってきました。閉館後の博物館にお邪魔する…という、それだけで心躍る特別感に溢れたシチュエーションの中、ぽつぽつと館内に吸い込まれていくお客さん。ぼうっと光を放つロビーを抜けて展示室に入ると、目に飛び込んでくるのは、広大なスペースの中、贅沢に配置された、古代から大切にされてきた、まさに“宝物”と呼ぶにふさわしい逸品の数々。
 
子供の頃、歴史の教科書に載っていたような品々がずらりと並んでいるという状況です。どんなものが陳列されているかも知っていたはずなのに、小さな土偶が放つ圧倒的な存在感に、はるか昔に記された文字が伝える書き手が持つ真剣さに、活き活きと瞬間が封じ込められた色とりどりの絵画に。息が止まりそうになりました。
 
“歴史あるもの”は基本的に全てがそうだと思うのですが、自身が形を保って残されている、その事実に、既に沢山の人の息遣いが感じられるような気がするんです。大切に大切に保存されて、手を加えて、目をかけて…例えば、割れやすい陶器を1000年以上も保管しようと思えば、それだけの心意気をもって品々と向き合わないといけないわけで。最初はただの物品だったものが、気持ちを注がれていくうちに、向き合った人の感情を写し取っていく。付喪神が宿る、という言葉もありますが、あれは、あながち嘘でもないんじゃないかと思ってしまいます。
 
おそらく、飾られているものが無感情に機械で作られ、保管されていたものだとしたら、それがどんなに緻密でも、どんなに精巧に出来ていても、人の目を奪うことはあっても、胸を打つことはなかったんじゃないかと思います。物を通して、関わってきた人々の想いを感じられるから。そして、重ねてきた時間に想いを馳せられるからこそ、その“物”が特別になって、“宝物”になっていくのです。国が誇る宝物に沢山触れて、そんなことを肌で感じさせてくれる。美術品を愛でる以上に、様々な感情を呼び起こしてくれる、素晴らしいとしか言いようのない展覧会。最終タームでは、華の凛とした香りすらも感じられそうな、「燕子花図屏風」が登場しました!
 
今月は紀元前からの歴史を持つ品々をみると同時に、まだ誕生から2年しか経過していない、急成長真っ盛りのフェス「八王子天狗祭」にお邪魔した月でもありました。グッドモーニングアメリカが地元・八王子を舞台に開催するこのイベントは、街をあげてお祭り騒ぎを繰り広げる、超地元密着型のフェス。高校からの音楽仲間であるTOTALFAT、BIGMAMAを筆頭に、グドモに関わりの深いバンドが多数出演して作り上げた1日は、通わせてきた心の分だけステージが過熱していく、愛情に満ちたものでした。TOTALFATのボーカル・Shunさんが学生時代に描いた青写真を振り返りながら、グドモの4人に向けて熱く語りかけた「未来へのスパイラルは繋がってるよ!」という言葉が象徴していたように思うのですが、数千年の歴史を持つ国宝も、10年来の仲間も同じように、そこに宿る感情の温度感が大切なのかもしれないな、と実感させられました。そこに辿り着くまでの時間を考えれば、不思議な話だなあ、なんて思ったり。
 
 

 
 
そんな、今月のラストにお届けするのは、グッドモーニングアメリカ「未来へのスパイラル」。私自身、挫けそうになった時、この曲に自分自身を重ねて、少し先の未来へと繋いでもらった、という経験があります。「八王子天狗祭」も、彼ら自身もまだまだ先へと進んでいく。スパイラルが続く先に射す光を、共に見届けたい。そう思わせてくれる一曲です。
 
 
 
 
 
 


 
watanabe渡辺真綾●大阪出身、名古屋在住の大学生。先日、台風の野音を取材するという機会があり、どんな悪天候にも負けずにメモを取れるライターを目指して四苦八苦しております。防水のメモや水中で書けるペンなど、マル秘グッズを見つけた方はワタナベまで。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。