皆様ごきげんよう、イシハラです。
夏ですね。
 
夏が来ると毎年持ち上がるのが「今年は何のフェス行くの?」という話題。
参加前提かい!と言いたい気持ちをぐっと堪えて言葉を濁していたのが去年までのこと。周りからはすっかり「フェスに行かない女」というキャラ設定をされていた私ですが、RISING SUN ROCK FESTIVALへ赴き、昨年晴れて汚名返上。
 
あれから1年、なんと今年は日本野外フェスのラスボス・フジロックに行ってきました。
 
 
■フジロックは豪雨


 
 
①

売れない芸人みたいな名前の新幹線に乗って越後湯沢へ photo by小此木愛里

 
 
7月29日、人生初のフジロックに行ってきました。今年はほんの少しだけ公式ファンサイトであるfujirockers.orgのお手伝いしたこともあり、例年よりフジロックを身近に感じていたことは確かでした。そんな時に当連載でもお馴染みのカメラマンであり友人の小此木愛里とやりとりをしていたところ、フジロックの話題に。
 
そして、いわば出来心で決まったフジロック行き。苗場の天気予報に雨マークがついていることに気づくのは、その数日後でした。隣に並ぶ曇りマークを信じて、東京駅から上越新幹線に乗り込む。乗客の大半はフジロックへ向かうであろう人。アウトドアファッションに身を包み、大きなリュックを背負っている。越後湯沢までは約90分。案外あっという間の到着だった。そこからバスに乗り換えて苗場へ。到着するも案の定、雨模様。
 
 
②

会場到着。朝9時なのに空はどんより

 
 
結局私の初フジロックは、雨に始まり雨に終わる結果となりました。滞在していた約20時間のうち雨が止んでいたのはせいぜい2時間ほど。テントも持っていないし、1日だけだから……とキャンプサイト券も取らなかったおかげで、ひたすら雨に濡れ続けるという事態に見舞われました。これはもう、はっきり言って辛かった。でも「じゃあ楽しくなかったの?」と言われれば答えはノー。めちゃくちゃ楽しかったです。
 
 
③

一瞬雨が止んだだけで、やたらテンションが上がる photo by小此木愛里

 
 
まずは会場について。雨ニモ負ケズ、ドラゴンドラを使うエリア以外はCafé de ParisからPyramid Gardenまで全制覇してきました。全体観としては案外地味、というのが正直な感想(フジロックに対する幻想が勝手にハードルを上げてしまっていたフシも大いにあると思いますが)。エリアごとにテイストを設けて会場を飾っていたライジングとは異なり、“森を楽しむ”というコンセプト通り自然をそのまま提供しているというイメージでした。晴れていたら、緑の匂い包まれて歩くボードウォークはさぞ気持ち良いことでしょう……。
 
 
④

GREENからWHITEへの道。夕方からが特にキレイ photo by小此木愛里

 
 
そして肝心の音楽について。出演者ごとのライヴレポートは既に至るところに上がっているし、会場で起きた出来事についてもSNSやWEBメディアを通して把握している方も多いと思うので、敢えてここでは書きません。ぜひfujirockers.orgの運営しているレポートサイトFUJIROCK EXPRESSをご覧ください。と、言うワケでここでは私がフジで出会ったイチオシの若手を3組紹介したいと思います。
 
①THE LEMON TWIGS(RED MARQUEE 17:50~)
 

 
アメリカ出身の兄弟ユニット、ザ・レモン・ツイッグス。強くなる雨脚に心が折れ、逃げこんだレッドマーキーでの運命的な出逢い。ビートルズのようでもあり、時にクイーンのようでもある、レトロでかしこまったロックサウンドが絶妙で、ちょっとの雨宿りのつもりが、すっかり最後まで観てしまった。といっても、テント後方に居たためステージは観えない。透明感のある声を聴けば比較的若い年齢だと見当がついたが、まさか10代だったとは!後に調べて驚きました。そして彼らのビジュアルやファッションを知れば知るほど、2017年に10代をやっていることが、どんどん信じられなくなってくる。70年代のロックが好きな方はぜったいにハマるはず。
 
 
②Tempalay(苗場食堂20:10~)
 

 
フジロック直前“フジロックにワクワクしすぎたあまり盛大に転倒し”メンバーが骨折するというニュースが話題になったテンパレイ。彼らとの出会いも偶然でした。当初はオザケンを観るつもりでいたのですが、あまりの人の流れとSNSのオザケン一色具合にあてられ“だったら私は他のステージ観るわ”と、まずはTEMPLESを観に行った。途中コーヒーを買いに一時離脱した際に聴こえてきたのが彼らの音楽。どこか儚いきらめきを持った、揺蕩うサイケロックが夜の森から手招きしてくる。足早に音のする苗場食堂のステージへ向かうと、歌っているのは指を包帯でぐるぐる巻きにした若者。“あいつらか!”と即座にニュースと結びついた。最近流行のシティポップの流れは汲みつつも、一線を画する存在。「革命前夜」を聴きながらフジの余韻に浸る日々です。
 
 
③バスクのスポーツ(ROOKIE A GOGO 02:00~)
 

 
最後はルーキーから。こんなに汗くさいインストバンドは未だかつて観たことがない。小洒落感もさっぱり感も皆無で、変態的コッテリ電子音と珍妙なアピールをしまくる上裸モヒカンギタリストがひたすらに強烈。しかもステージには昭和の純喫茶なんかでメニューを流したりする電光掲示板(?)と、電飾のついたお立ち台(いや、風呂イスか?)がある。ちなみに前説にはデスメタル調の出で立ちの“悪魔”が出て来た。もう、とにかくつっこみどころしかない。そんな彼らの正体はなんと、美大生だというから驚き&納得。しかし、さらにすごいのはその音楽。1曲を聴き終えると、RPGゲームを全クリしたみたいな達成感に包まれる。歌詞がなくても歌がなくても音楽はこんなにも表情豊かになれる。インストバンドのイメージを180度覆すモンスター級のルーキーに拍手。
 
 
⑤

バスクのスポーツ photo by小此木愛里

 
 
イチオシの3バンド、如何でしたか?
 
ルーキーではステージが終わると下手側の小さなテントで物販が始まる。下北沢のライヴハウスで良く見る光景と同じだった。そんな何気ない一幕に、フジロックの懐の深さを感じる。ライヴハウスでも、アリーナでも、ヘッドホンでも、日々音楽を楽しむ環境は人それぞれ。でもフジロックという場所は、どんな音楽を愛していても、どんな聴き方をしている人にも、必ずフィットするシーンがあると身を以て知った1日でした。正直今年は初参加&悪天候も手伝って“体験”することで精いっぱいだったので、来年こそはもっと満喫したいと思います。もし「フジロック、行ってみたいけど楽しめるか不安…」と迷うなら、ぜひ一度“行ってみて”ください。1日だけでもいいし、興味本位で大丈夫。百聞は一見にしかず。最後に参考までに私がフジロックに持って行った持ち物を、書いておきます。来年フジロックデビューを考えている方は参考にしてみてください!
 
 
⑥

CORNELIUSへ向かう人々 photo by小此木愛里

 
 
■イシハラ的フジロック装備
(※キャンプサイトなし、オールナイト、終日雨天に対応可)
 
*服装*(○晴天時、×雨天時、△夜)
・アウトドア用の帽子
・タンクトップ
・半袖Tシャツ
・長袖の羽織モノ(○)
・デニムのショートパンツ
・ストッキング
・厚手のくつした
・防水ウィンドブレーカー(×)
・ポンチョ(×)
・ユニクロのライトダウン(△)
・野鳥の会長靴
 
屋根と椅子のある貴重なORANGE CAFÉスペースより奥は足元がほぼ沼状態だったので、終日雨なら長靴がオススメ。中敷きを入れるなど足が疲れない工夫を。(ライジングの時はそのままで歩き回って踵が痛くなりました)タイツやレギンスも良いですが、ストッキングは強い雨で塗れても水が染み込まないので体温を奪われずに済みました。
 
*コスメ&ボディーケア*
・アウトドアスプレー(虫よけ)
・日焼け止め
・アネッサのBB
・ミスト状化粧水
・メイクしたままさっぱりシート
・さらさらパウダーシート
・替えのコンタクト
・目薬
・ムヒ
・バンテリン(小さいチューブ)
・足爽快シート
 
晴れていたら汗をかくし、雨が降ったら湿気地獄……。さらさら系のアイテムは必須。あと肩と足のケアに下の2つも重要です。
 
*着替え*
・半袖ワンピース
・くつした
・長袖Tシャツ
 
今回はどれも使いませんでした。
 
*その他*
・モバイルバッテリー
・折りたたみイス(雑貨屋さんとかで売っている1000円くらいの)
・凍らせたスポーツドリンク
・大きめのタオル
・財布
・小さい財布(会場内で使う用)
・スマホ
・名刺
・メモとペン
・ソイジョイ
・大きめのビニール袋
・ジップロック
・ウェットティッシュ
 
イスはキャンプなど置いておける場所がない場合、リュックに入るなるべく軽いもの。濡れて困るものはあらかじめジップロックへ。あと低血糖の人は手軽に食べられるものを!リュックの中に入れていても粉々になったり溶けたりしないソイジョイがオススメです。
 
 
 
 
■monthly Rock ‘n’ Roll vol.5 ― My Hair is Bad 「戦争を知らない大人たち」
 


 

 
苗場へ向かう朝、東京駅で迷子になった。探しても探しても上越新幹線乗り場が見つからない。これはまさかあの辿り着けない悪夢が正夢に……!(詳しくは発売中の『音楽と人』のレビューページのコラムをご覧ください)と早朝の東京駅を行ったり来たり。駅員さんを見つけて場所を聴くも、改札は見えてこない。上越……上越……と繰り返しているうちに頭に流れ始めたのが、新潟上越出身のMy Hair is Bad。ライジングのステージで言葉を溢れさせながら歌っていた椎木さんの姿は、今でも忘れられません。あんな風にまたガツンと胸ぐらを掴んでくれるようなマイヘアのライヴが観たい。
 
 
 


 
ishihara_2017イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。無事フジロックから“生還”して参りました。行く前に色々とアドバイスをくれたフジロック達人たち、各種心配&到着早々出迎えてくれたK川さん、会場でお会いできた皆様、そして重たいカメラを持って雨の中撮影してくれた小此木愛里に感謝。